≪ 蛹 ≫
◆ 蛹化

大きく成長し、体が黄色くなって成熟した3令幼虫は、やがて周りを糞で固めて蛹室を作り始める。 ほとんどの場合、ビンの壁面に沿って蛹室を作るので、その様子が観察できるはずである。 (ビンの周りに黒い紙を巻いて暗くしておけば、ほぼ確実にビンの壁面に蛹室を作る)
蛹室を作り終えた幼虫は、徐々に体が縮み皮膚はシワシワになり前蛹状態になる。 蛹室を作り始めてから2〜4週間経ち、丸まっていた幼虫の体が水平に伸びてくると、いよいよ蛹化が始まる。 蛹化直後の蛹はまだ白く柔らかいが、徐々に固まり色づいてくる。

詳細は 矢印 『オオクワガタ解説/蛹』 参照。

菌糸ビン内の蛹室
菌糸ビン内に作られた蛹室
蛹♂
の蛹

◆ 管理方法
飼育容器

ほとんどのクワガタは蛹室を横向きに作るため、幼虫が十分な大きさの蛹室が作れる容器に移しておくことが重要。
小さめのビンで飼育している場合は、蛹室を作る前に大きめのビンやプラスチックケースに移すか、ビンを横向きに置いておくと良い。
蛹室の大きさが足りないと、蛹化不全で死亡することもあるので注意する。
また、ビンの底に蛹室を作った場合は、蛹化、羽化の際の水分を吸収できずに水が溜まり、蛹化不全、羽化不全の原因になる場合がある。 この場合は、ビンを引っくり返して逆さまに置くと水が溜まるのを防ぐことができる。 但し、マットが柔らかいと崩れてしまい、通気穴を塞いでしまうこともあるので注意する。


飼育場所

幼虫飼育と同様に、なるべく温度変化の少ない、暗くて静かな場所に置いておく。


温度

蛹の時期は、あまり温度が下がり過ぎないように注意する。
温度が低いと羽化するまでの時間が長くかかってしまい、羽化不全の原因にもなる。 蛹は非常にデリケートで、この時期を長く続けることはあまり好ましくないため、20℃以上保つようにして早めに羽化させた方が良い。


振動

蛹は最もデリケートな時期なので、取り扱いには十分注意する。
特に蛹化直前〜直後の時期は絶対に振動を与えないようにする。ショックによって蛹化不全を起こし死亡してしまう恐れがある。 また、蛹化直後の白い蛹はまだ柔らかく体が固まっていないため、傷ついたり、体が変形してしまう場合もある。

◆ 人工蛹室

何らかの原因でうまく蛹室が作れなかったり、蛹室が崩れてしまうと蛹化不全、羽化不全の確率が高くなる。 この場合は、一旦取り出して人工蛹室に移すという方法がある。
基本的には蛹化後1週間以上経ってから取り出すのが安全であり、それ以前の取り出しは危険が伴う。
蛹を取り出す場合は、少しずつマットを削っていき、蛹室の周りのマットを全て取り除いてから蛹室を割るようにする。 蛹室の壁は固いので、どこからが蛹室なのか感触で分かるはずである。 蛹室を割る際は、蛹を傷付けない様に細心の注意を払い、穴が空いたら少しずつ蛹室の壁を取り除くようにする。
いずれにしても、この時期の取り出しは非常に危険で、死亡率も高いので、特に問題なければ取り出しは避けた方が良い。
以下に、ティッシュで作成する人工蛹室、オアシスを利用した人工蛹室の作成方法を紹介する。 これ以外に、既に羽化した後の天然蛹室を再利用する方法もある。


<ティッシュ人工蛹室の作り方>
ティッシュ人工蛹室
ティッシュ人工蛹室
  1. ケースの用意
    プリンカップやルアーケース等、蛹よりも大きめの容器を用意する。
  2. 蛹室の作成
    ティッシュを霧吹き等で適度に湿らせ、これをケースの壁、底面に貼り付けていく。 ティッシュの水分は絞っても水が出ない程度にする。これを何度か繰り返し、楕円形の蛹室ができるように形を整えていく。 蛹化、羽化の際には余分な水分を排出するので、これらの水分を吸収できるよう、ティッシュの層はある程度厚さを必要とする。
    蛹室は蛹の頭部が若干高くなるよう斜めに作ると良く、大きさや形は、実際の蛹室を参考に調整する。 羽化後、頭部が持ち上がり大アゴが伸び、また後翅を伸ばして乾かすことも考慮して、蛹室の長さは若干余裕を持たせておく。
    また、蛹室の壁面に凹凸があると蛹の体が変形してしまい、成虫の体も変形や欠落が生じてしまうことがあるので、極力滑らかな壁面を作るようにする。
  3. 蛹の投入
    蛹室が完成したら、静かに蛹を投入しティッシュが乾燥しないようにフタをする。 プリンカップやルアーケースであれば適度に通気性があるので、そのままフタをするだけで良い。
  4. 管理
    ティッシュは元のマットと同程度の湿度を保つようにする。
    乾燥してきたらティッシュだけを湿らす。但し、蒸れるような状態も避けるようにする。
    蛹が寝返りをうつと壁面が若干崩れてくる場合があるが、激しく破損しているようであれば、必要に応じて補修する。

<オアシス人工蛹室の作り方>
オアシス人工蛹室
オアシス人工蛹室

園芸用のオアシスという素材を利用して人工蛹室を作成する方法。
吸水、保湿性が抜群で、生け花等に利用されている。 また加工しやすいので人工蛹室の素材としても広く知られている。

  1. カット
    オアシスを蛹室より若干大きめにカットする。カッター等を使用すれば、楽にカットすることができる。
  2. 蛹室の作成
    蛹の大きさに合わせて、スプーンでオアシス中央部を蛹室の形にくり抜く。おおまかな形ができたら、壁面をスプーンで軽く撫でるように削って調整する。 最後は指で押したり、撫でながら壁を滑らかに整えていく。
    蛹室の形状は、ティッシュの場合と同様に作成する。
  3. 加水
    蛹室を作成したオアシスに水をかけて加水する。一瞬にして水を吸収し重くなるので、長時間つける必要はない。
  4. 蛹の投入
    加水したオアシスに静かに蛹を投入し、タッパーやミニコンテナケース等に入れて保管する。完全に密閉しないようにし、乾燥、蒸れにも注意する。
  5. 管理
    基本的には何もする必要はない。
    オアシスの場合はまず乾燥しないが、乾燥してきて軽くなっているようであれば少し水を加える。