≪ 割り出し ≫

産卵後、孵化した幼虫は周りの朽木やマットを食べて成長するが、より良い環境で育てるために、一旦、割り出して幼虫を回収する必要がある。 そのままにしておくと、共食いによって数が減ると同時にエサ不足により成長が阻害されてしまう。
回収した幼虫は、好みの飼育方法で1匹ずつ個別に飼育する。

◆ 割り出し時期

なるべく卵、初令初期の時期は避け、初令後期〜2令幼虫を回収するのが最も安全である。 卵や初令幼虫での回収は小さくて発見できすに潰してしまう危険があり、また、体力がないのでその後の飼育でも死亡率が高くなってしまう。
大きな成虫に育てたい場合は、産卵後1ヶ月程度の初令幼虫で回収し、菌糸飼育に移行するのが良い。


<材産みの場合>

幼虫の様子が確認できないため、産卵していた時期からの時間を目安に割り出しを行う。
が産卵木を齧り始めてから、ある程度の数の卵を産むまでの産卵期間を半月〜1ヶ月とすると、その後1ヶ月〜1ヶ月半程度でほとんどが2令幼虫になっている。 よって、産卵開始から2ヶ月後の割り出しが目安になる。
早めに回収したい場合でも1ヶ月半は待った方が良い。


<マット産みの場合>

飼育ケースの底や側面から、幼虫の様子が確認できるため、2令幼虫が見られるようになったら回収する。


[ 産卵後の時間経過 ]
時期状態備考
産卵後1週間 卵を割り出した場合は、プリンカップなどの小さな容器にマットを入れ、卵の2倍くらいの大きさの穴を作り、そこに卵を入れて孵化させる。乾燥しないように注意すること。それでも孵化しない卵もある。
産卵後2週間初令幼虫なるべく早い時期に菌糸飼育に移行したい場合は、初令後期で割り出しを行う。但し、小さいので回収時に傷つけないように十分注意する。また、その後の死亡率は高くなる。
産卵後1ヶ月〜2ヶ月2令幼虫 ある程度、自然淘汰されて生き残った幼虫であり、比較的丈夫なので、この時期に回収することが好ましい。できれば、2令初期の状態で回収できると良い。まだこの時期であれば、共食いはあまり発生しないようである。
産卵後2ヶ月〜3ヶ月2令〜3令幼虫 成長の早いものは3令幼虫になっている。既に割り出し時期としては遅く、幼虫同士の共食いのため、あまり多くの幼虫が回収できない。最終的には1本の産卵木に1匹の幼虫しかいなくなってしまう。

※クワガタの種類や飼育環境、気温等により、これらの期間は変わる場合があるので、あくまで参考とすること。

◆ 割り出し方法
<材産みの場合>

産卵木をケースから取り出し、表面から丁寧に材を剥いていく。材の繊維に沿って、少しずつ剥がしていくと良い。
材が固く、指や爪で崩せない場合は、ドライバーやカッターを使用しても良い。 ナタで割る場合もあるが、幼虫を傷つけてしまう可能性があるため、十分注意する。(ある程度の事故は覚悟すること)
食痕が見つかれば、その先に幼虫がいるはずなので、更に注意深く材を剥いていく。
回収した幼虫は、とりあえずプリンカップなどの小さな容器にマットを入れて、1匹ずつ別々にしておく。


<マット産みの場合>

マットを丁寧に取り出しながら、幼虫を回収する。
新聞紙を敷いて、その上にマットを全てひっくり返してから探しても良い。


初令幼虫、2令初期幼虫の割り出し
初令幼虫、2令初期幼虫の割り出し
2令幼虫の割り出し
2令幼虫の割り出し

≪ポイント≫
  • 割り出しの際に、残った木屑や木片は捨てずに、乾燥しないように注意しながら、しばらくの間、保管しておいた方が良い。 注意して幼虫を回収したとしても、卵や小さい幼虫など発見できなかったものが、後で大きくなってから発見されることが良くある。
  • 割り出し時に傷つけてしまった幼虫は、体液が出てしまうようであれば、ほとんどが死亡してしまう。
    菌糸ビンなど高価な飼育法を行う場合は、傷ついた幼虫は避けたほうが良い。
  • 孵化直後や脱皮直後の幼虫は、頭部も白く、固まっておらず、非常に弱いので取り扱いには十分注意する。