≪ 幼虫飼育 ≫

大きな成虫を育てるには、幼虫を大きくする必要がある。 飼育方法によって幼虫の大きさは変わってくるため、クワガタ飼育において一番ノウハウを必要とする時期でもある。 幼虫の飼育方法は主にマット飼育、菌糸飼育、材飼育の3種類の方法があり、下表はその特徴を簡単に比較したものである。
以降はそれぞれの飼育方法について個別に説明することとする。

飼育方法a. マット飼育b. 菌糸飼育c. 材飼育
特徴 発酵させたマットをビンに詰めて飼育する方法。 マットにヒラタケ、オオヒラタケなどの菌を植菌して飼育する方法。 クヌギなどの朽木に幼虫を潜り込ませて飼育する方法。
最も自然に近い飼育法。
成虫サイズ 添加剤によっては大型成虫になる確率が高い。 大型成虫になる確率が高い。 大型成虫になる確率が低い。
形が良くて、丈夫な成虫になる。
成長速度 比較的短期間で羽化する。
(ほとんどの場合1年)
短期間で羽化する。
温室を使えば、半年で羽化する場合もある。
羽化までに時間がかかる。
(2〜3年)
コスト 安い
市販されている発酵マットはメーカーや種類にもよるが、10リットル¥600〜¥1500程度。
発酵マットを自作すればかなり安くなる。
高い
メーカーにもよるが、菌糸ビン800ccで¥300〜¥600程度、1500ccで¥600〜¥900程度。
菌床ブロックを購入し自分でビン詰めすれば安くなる。
安い〜高い
一般の産卵木を使用すれば安い。(1本¥200〜¥400)
大きなカワラタケ材を使用すると菌糸ビンより高くなる。(1本¥500〜¥1200程度)
安全性 幼虫の死亡率が低い。
マットの発酵が不完全だと発酵熱や酸欠で死亡する場合がある。
幼虫の死亡率が高い。
蛹化不全、羽化不全の確率が高い。
幼虫の死亡率が低く、一番安全。
管理性 マット作成時、添加剤、水分が多すぎるとマットが腐敗する場合がある。 高温に弱いため温度管理が必要。 幼虫が確認できないため、材交換のタイミングが難しい。
観察性 幼虫がビン壁面にいる場合、常に観察できる。 幼虫がビン壁面にいる場合、常に観察できる。 観察不可能。


a. マット飼育
マット飼育

発酵させたマットをビンにつめて飼育する方法。
最も一般的で手軽な飼育法であり、ビンの壁面に幼虫がいる場合、常に観察できるという利点もある。
使用するマットは、ベースマットの種類や添加剤(小麦粉、薄力粉、フスマなど)を自分で色々工夫でき、自作することにより飼育コストを抑えられる。 添加剤によっては、確率高く大型の成虫を得ることができる。 もちろん市販の発酵済マットを使用しても問題ない。
また、マットの発酵や水分調整に失敗しなければ、幼虫が死亡することはほとんどないので、比較的安全である。

◆ 発酵マットの作り方

市販の発酵済マットを使用しても良いが、以下の方法で自分なりの発酵マットを作る事ができる。
ベースマット、添加剤、水分量を変えることにより、様々な発酵マットができるので、色々試してみると良い。
以下は一般的な発酵マットの作り方である。

  1. マットの用意
    衣装ケースやコンテナ等の大きめの容器にクヌギ、コナラ等のマットを入れる。
    発酵マット作成は暖かい時期にしかできないため、まとめてたくさん作った方が良い。
  2. 添加剤を加える
    小麦粉、薄力粉、フスマ等の添加剤を、いずれの場合もマットに対し5〜10%加える。
    添加剤が少ないと効果が薄くなるが、危険は少なくなる。
  3. 水を加える
    若干多めに水を加え、よくかき混ぜる。
    水分量が少ないとなかなか発酵しないが、多すぎるとマットが腐敗し失敗することがあるので注意する。
  4. 発酵
    温度25〜30℃で管理しておくと、2、3日で発熱し発酵が始まる。温度が低いとなかなか発酵しない。
    フスマを使用した場合はかなりの高温になる。
  5. 攪拌
    発酵中は菌の活動により酸素が消費され酸欠状態になるため、基本的に毎日かき混ぜて空気を循環させるようにする。
  6. 発酵完了
    3〜4週間程して、マットの温度が下がってくると発酵完了。マットの色はこげ茶色になり、匂いもインキや土の匂いに変わってくる。
    添加剤や水分量によって発酵期間は変わる。
  7. 乾燥
    発酵が完了したマットは天日で干して乾燥させる。乾燥させることで長期保存も可能になる。
≪発酵させる理由≫

マットを発酵させるのは、幼虫の死亡率低減と栄養素補充の2つの目的がある。
マットは材を粉砕した物であるため、粉砕していない朽木に比べ、外部の菌が侵入、繁殖しやすく、急激に発酵する恐れがある。 そのまま幼虫飼育に使用した場合、何らかの菌が急激に繁殖、発酵することにより、温度の上昇、酸欠、ガスの発生を招き、幼虫が死亡してしまう可能性がある。 これを防止するため、菌に分解されやすい成分をあらかじめ菌の活動により消費させ、その後の急激な菌の活動を抑える必要があり、 事前に発酵させることで、安定した生育環境を保つことができる。
添加剤、水分を加えるのは、菌が活動しやすい条件を整え、発酵を促進させるためである。
また、小麦粉にはタンパク質が多く含まれているが、これが実際に幼虫の栄養素として効果があるかは、はっきりしていない。

◆ セット方法
セット例
セット例

作成または購入した発酵マットを、以下の手順でセットする。

  1. 飼育ビンの用意
    インスタントコーヒー等の空きビンでも問題ない。
    なるべく入口が広く、太いビンの方が良く、できれば1000cc以上の容量のある物が好ましい。 初期の小さい幼虫やの場合は600cc程度でも構わないが、大きなの3令幼虫の場合は1500cc程度が好ましい。
    初令〜2令幼虫の時はプリンカップを使用しても良い。
  2. マットの加水
    マットを適度に加水する。手で握って軽く固まり、多少崩れる程度で良い。 クワガタの種類によって水分量は変わってくるが、オオクワガタの場合は比較的乾燥に強いため、必要以上に加水する必要はない。
    水分が多すぎると、マットが腐敗してしまうこともあるので注意する。
  3. マットを詰める
    加水したマットをビンにきつく詰めていく。最初から全部詰めずに、1/4〜1/3程詰めたら棒などで押し付ける様にし、これを繰り返していけば固く詰めることができる。
    ビンの入り口ギリギリまでマットを詰めると、フタを締めた際、穴が塞がれて酸欠になる場合があるので注意する。
  4. 幼虫の投入
    初令後期〜2令の時期に投入するのが良い。添加剤が多めの場合は2令以降で投入した方が安全である。
    マット表面に幼虫よりも少し大きめの穴を開け、幼虫を投入する。後は幼虫が自分でマットの中に潜って行くので、穴の上からマットを少しかけておく。
  5. フタを締める
    フタには穴を2〜3箇所位開けておき、間にガーゼやキッチンペーパーなどを挟んでおけば、乾燥防止やコバエ進入防止になる。
    コーヒーのビンの様に、フタの裏に着いている密閉用パッキンを容易に外せるようであれば、パッキンだけ外して穴は開けずにそのままフタをした方が良い。
  6. ラベル
    ビンにラベル等を貼り、種類や投入時期などの情報を記載しておくと管理しやすい。
◆ 管理方法

なるべく温度変化の少ない、暗くて静かな場所に置いて、振動などのショックを与えないようにする。
ビンの周りに新聞紙などを巻いて暗くしておけば、幼虫はビン側面にいることが多くなるので観察しやすい。
その他は特に世話をする必要はなく、乾燥防止が万全であれば加湿も不要で、エサ交換するまでは放置しておいても問題ない。
但し、投入後しばらくの間は、順調に成長しているか様子を見るようにする。 もし全く食べずに縮んでいたり、ビン上部(マット表面)を徘徊しているようであれば、マットが合わなかったり、酸欠の可能性もある。
マットにきちんと潜って、糞をしているようであれば問題ない。

◆ エサ交換

幼虫がマットを6〜7割食べたら、エサを交換する。
内部の空洞やビン壁面の糞、マットの色などから判断するようにする。
大体2〜3ヶ月程度が目安になるが、幼虫の成長具合やビンの大きさ、季節、温度によっても異なる。
羽化までのエサ交換回数は、幼虫の大きさにもよるが、1000ccのビンの場合、で2〜3回(3〜4本)、で1〜2回(2〜3本)程度。
脱皮直後で幼虫の頭が白かったり、蛹化直前の場合はエサ交換を控えるようにする。

  1. 幼虫の取り出し
    幼虫の位置を確認しながら、スプーン等で慎重にマットを掘っていき、幼虫を取り出す。
  2. 新しいマットのセット
    始めにセットした方法と同様の手順で、新しいマットをビンに詰める。
    この際、交換前の古いマットや糞を少し混ぜておくと、バクテリアの影響で新しい環境にも対応しやすくなる。
    環境が急激に変わると、食べ始めるまで時間がかかり、最悪の場合は全く食べずに縮んでしまうこともある。
  3. 幼虫の投入
    幼虫よりも少し大きめの穴を開け、幼虫を投入する。
エサ交換-1
取り出した幼虫
エサ交換-2
マットを詰め、穴を開けておく
エサ交換-3
幼虫を投入する

≪エサ交換におけるポイント≫

マットの質と同時にエサ交換の時期も成虫の大きさに影響するので、重要なポイントとなる。
エサ交換のタイミングが遅れると、その分、幼虫が十分に栄養を取ることができずに成長が阻害されてしまうため、小型の成虫になってしまう。
しかし、エサを頻繁に交換し過ぎると、環境の変化が激しすぎて幼虫の成長に影響が出る。
この相反する条件をクリアするのが幼虫飼育のポイントであり、この条件を両方満たすためには、なるべく大きい容器で飼育し、エサ交換の回数を減らすことが重要である。
但し、初令後期〜2令初期の小さい時期は、あまり大きいビンでは環境をコントロールできないため、幼虫が小さい時は小さめの容器で飼育し、成長と共に大きめの容器に移行していくのが良い。



b. 菌糸飼育
菌糸ビン飼育

クヌギ等の広葉樹のマット(培地)に、ヒラタケ、オオヒラタケ、カワラタケ等のキノコ菌を植菌して飼育する方法。
他の飼育方法に比べ、短期間で大型の成虫が得られるため、最近の主流となっている。
但し、初令幼虫の死亡率、蛹化不全、羽化不全の確率が高く、最も危険度が高い飼育法でもあるため、飼育個体数が少ない場合は避けた方が無難。 また、菌に合わない幼虫もいるため、必ずしも大きくなるとは限らない。
市販の菌糸ビンを使用するのが一般的であるが、800cc程度で1本¥300〜¥600位、1500cc程度で¥600〜¥900位するので飼育コストは高い。 菌床ブロックを購入して自分でビン詰めすれば、飼育コストを下げられるが、消毒などの処理が必要になり、手間がかかる。
飼育温度については温度管理が必要で、特に高温では菌が死滅してしまう場合があるので注意する。

菌糸ビン詳細は矢印 『菌糸ビン』 参照。
◆ 菌糸ビンの準備
菌糸ビン
菌糸ビン

菌床ブロック
菌床ブロック
<菌糸ビンを購入する場合>

専門店で販売している菌糸ビンを購入する。
メーカーによって菌の種類等が異なるが、大きな成虫が羽化した実績のある物を選ぶと良い。 ビンの大きさは幼虫の大きさによって使い分ける。であれば1000cc〜2000cc、であれば600〜1000ccで十分である。 初令〜2令幼虫の時はプリンカップ程度の大きさでも良く、大きくなって♂♀の性別が判定できるようになってから、大きめのビンに移す方法もある。
また、菌糸ビンは加水する必要はなく、そのまま使用できる。


<菌床ブロックを自分で詰める場合>

キノコ栽培に使用する菌床ブロックを購入して、自分でビン詰めすれば、飼育コストは安く抑えられる。


= 菌床ブロックの詰め方 =
  1. 準備
    菌床ブロック、スプーン、押し付け棒、手袋、新聞紙等の敷物を準備しておく。
  2. 消毒
    使用する用具をエタノール等で消毒する。手もよく洗っておく。
    エタノール等がない場合は、消毒、殺菌用の石鹸で洗っても良い。
  3. ブロックをばらす
    使用する分量だけブロックをばらし、手袋をはめた手で細かくほぐしておく。
  4. ビン詰め
    ばらした菌床をビンにきつく詰めていく。マット飼育と同様、最初から全部詰めずに1/4〜1/3程詰めたら棒などで押し付ける様にする。 ゆるく詰めると菌糸の回りは早くなるが、隙間からキノコが生えてくる場合もあるので、なるべく隙間なく詰めた方が良い。
    但し、あまりきつく詰めると菌糸が全く回らなくなるので、適度に詰める。
  5. 穴を開ける
    菌糸の回りを早くするため、中央部分に穴を下まで開ける。
  6. フタをする
    マット飼育と同様にフタをする。フタの内側も消毒しておいた方が良い。
  7. 保管
    20〜25℃位でそのまま保管し、1〜2週間経って菌糸が全体に回り白くなったら使用可能。
    菌糸の延びる最適温度は、ヒラタケで25℃前後、オオヒラタケで23℃前後。

菌床セット-1
ブロックをばらした状態
菌床セット-2
ビン詰め直後
菌床セット-3
ビン詰め1週間後

◆ セット方法
  1. 消毒
    使用する用具をエタノール等で消毒する。手もよく洗っておく。
    エタノール等がない場合は、消毒、殺菌用の石鹸で洗っても良い。
    雑菌が入ると、キノコ菌が雑菌に負けて劣化したり、カビが生えることもある。
  2. 穴を開ける
    菌糸ビンのフタを外し、表面のキノコや菌糸皮膜などを取り除き、幼虫よりも少し大きめの穴を開けておく。 穴を開けた時のおがくずは後で埋め戻せるように、穴の周りに寄せておく。
  3. 幼虫の投入
    穴に幼虫を入れ、中に潜った後、穴の上からおがくずを少しかけておく。
    投入する幼虫は初令後期〜2令の時期が良い。早い時期では死亡率が高くなるが、大きな成虫になる可能性は高くなる。 逆に遅い時期では栄養価の高い菌糸ビンの効果が少なくなるが安全である。
  4. フタを締める
    市販の菌糸ビンはほとんどが通気穴があるので、そのままフタを締めれば良い。
  5. ラベル
    ビンにラベル等を貼り、種類や投入時期などの情報を記載しておくと管理しやすい。
菌糸ビンセット-1
フタを開けた状態
菌糸ビンセット-2
穴を開けて幼虫を投入する

◆ 管理方法
温度管理

22〜28℃の範囲で飼育することが望ましい。
温室を使用し、常時28℃程度の高めの温度で飼育すれば、幼虫の成長が早くなり半年で羽化する場合もあるが、 あまり早いと小型のまま羽化したり、羽化不全になる可能性が高くなる。
また、30℃以上の高温では菌が劣化し、水分を放出して空気を遮断してしまったり、雑菌による急激な発酵を招き、酸欠になる可能性がある。
逆に18℃以下の低温ではキノコが生える場合があり、フタの空気穴を塞いでしまうこともあるので、注意する。

◆ エサ交換
菌糸ビン
左は交換後1ヶ月半程度、右は未使用状態

6〜7割食べて、ビン表面の白い菌糸部分が1/3以下になったら新しい菌糸ビンに交換する。 また、菌糸が劣化してきた場合も早めに交換した方が良い。
大体2〜3ヶ月程度が目安になるが、幼虫の成長具合やビンの大きさ、季節、温度によっても異なる。
交換する菌糸ビンは同一銘柄の物を使用し、菌種等を変更しないようにする。 変更すると環境の変化に対応できず、エサを食べなくなり、縮んでしまう場合があるので注意する。
羽化までのエサ交換回数は、幼虫の大きさにもよるが、1000ccのビンの場合、で2〜3回(3〜4本)、で1〜2回(2〜3本)程度。
脱皮直後で幼虫の頭が白かったり、蛹化直前の場合はエサ交換を控えるようにする。




c. 材飼育

最も自然に近い飼育方法で、クヌギなどの広葉樹の朽木で飼育する。
死亡率も低く、形の良い丈夫な成虫が得られるが、成長の様子が観察できないという難点があり、材の交換時期を判断するのが難しい。 また、マット飼育や菌糸飼育に比べ、羽化までの期間が長い傾向にあり、2年以上かかるのが一般的である。

◆ 飼育材の準備
シイタケほだ木
シイタケほだ木
<シイタケほだ木の場合>

基本的に産卵木と同様の朽木を使用する。なるべく太くて大きい材が好ましく、できれば直径10cm以上の物が良い。


<カワラタケ材の場合>

クヌギ、コナラ、エノキなどの広葉樹でカワラタケにより腐朽した朽木を使用する。 自然界でのオオクワガタの生態に最も近い飼育方法であり、シイタケほだ木よりも材が固いため、羽化までの時間もかかるが、丈夫で力の強い成虫になる。

◆ セット方法
<シイタケほだ木の場合>

シイタケほだ木等の産卵木を利用して飼育する場合は、マットに埋め込んで飼育するのが一般的である。
マットに埋め込む理由は、飼育材の乾燥防止と、幼虫が材から出てきた場合でもマットがエサになるためである。

  1. 飼育ケースの用意
    小プラスチックケースやコンテナ等、飼育材よりも少し大きめの容器を用意する。
  2. 飼育材の殺虫
    飼育材には害虫がいる場合もあるので、電子レンジなどで加熱し殺虫処理をした方が良い。
    特にコメツキ、カミキリムシの幼虫などは、クワガタの幼虫を捕食してしまうため注意する。
  3. 飼育材の加水
    市販されてる材は乾燥しているため、適度に加水する必要がある。
    手ごろな容器に水を張り、産卵木を完全に水没させて半日〜1日程度放置する。その後、水から出して半日くらい日陰で乾燥させ、水を切ってから使用する。 水没させることにより殺虫効果もあるが、ダニなどは死滅しない。
  4. マットの用意
    マット飼育と同様に適度に加水する。
  5. 幼虫の投入
    加水した飼育材に幼虫よりも大きめの穴を開け、そこに幼虫を入れる。 投入前に飼育していた古いマットを軽くかけてフタをする。
  6. 埋め込み
    飼育ケースにマットを少し入れた後、飼育材を入れ、更にマットを飼育材が隠れるまできつく詰める。
  7. フタをする
    乾燥防止のため、市販の乾燥防止シートや新聞紙、サランラップを間に挟みフタをする。
    コンテナを使用する場合は、そのままフタをすれば良い。
    ※サランラップは2〜3箇所穴を開けておく。
<カワラタケ材の場合>

基本的にはマットに埋め込まず、そのまま使用する。
オオクワガタの場合、自然界では立ち枯れ部分に幼虫は棲息しており、比較的水分の少ない固い部分を好むため、 同様の環境を再現するためにも、マットに埋め込んで材を柔らかくしてしまう事は避けた方が良い。

  1. 飼育ケースの用意
    プラスチックケースやコンテナ等、飼育材よりも少し大きめの容器を用意する。
  2. 飼育材の準備
    シイタケほだ木と同様に殺虫、加水をする。
  3. 幼虫の投入
    飼育材に幼虫よりも大きめの穴を開け、そこに幼虫を入れる。穴は湿らせた脱脂綿やティッシュ等でフタをする。
  4. セット
    飼育ケースに砂を3cm程度敷き、適度に加水した後、飼育材をそのまま入れる。
  5. フタをする
    乾燥防止のため、市販の乾燥防止シートや新聞紙、サランラップを間に挟みフタをする。
    コンテナを使用する場合は、そのままフタをすれば良い。
    ※サランラップは2〜3箇所穴を開けておく。
◆ 管理方法
<シイタケほだ木の場合>

なるべく温度変化の少ない、暗くて静かな場所に置いて、振動などのショックを与えないようにする。
乾燥防止が万全であれば、特に加湿する必要はない。


<カワラタケ材の場合>

シイタケほだ木同様、乾燥防止が万全であれば、特に加湿する必要はないが、 砂の表面が乾燥しているようであれば、砂だけに加水する。

◆ 材交換

材飼育で一番問題になるのは材の交換時期である。
材の大きさや飼育温度にもよるが、セットして約1年後に割り出して確認した方が良い。 材が穴だらけになっていたり、崩れていたりした場合は材を交換する。 場合によっては、蛹になっていたり、羽化している場合もあるので注意する必要があるが、 幼虫の様子が全く分からないので、経験と勘に頼らざるを得ない。 10月以降の寒くなってきた時期であれば、蛹室を作ったり、蛹になる可能性が低いので、この時期の方が安全である。
また、羽化後の取り出しについては、時期を見計らって材を割っても構わないが、自然に出てくるのを待つ方が良い。 出てくるまで、性別や大きさ等は一切分からないが、成虫が自然に出てくる脱出口を観察できる唯一の方法であり、これが材飼育の醍醐味でもある。



共通

以下、各飼育方法に共通の注意事項を記載する。

飼育方法の変更

基本的に上記のいずれかの方法で飼育した幼虫は、途中から別の飼育方法に変更することは好ましくない。 全く異なった環境に適応できず、エサを食べなくなり縮んでしまう危険があり、最悪の場合は死亡してしまう。


エサ交換

各飼育方法でも述べたが、エサ交換によるショックや環境の変化をできるだけ少なくする事が重要である。
特に3令の成長期は十分にエサを取らせるために、大きめのビンや材を使用して、交換回数を減らすようにする。


飼育場所

自然界の幼虫は朽木内で生活するため、なるべく暗くて静かな場所に置くようにする。振動などのショックも与えないようにする。


飼育温度

基本的には、なるべく温度変化の少ない場所が良いが、自然界でも四季があるため、季節により多少温度差があっても問題ない。 また、温度が高い方が幼虫の活動や成長が早いため、早めに羽化する傾向があるが、小型のまま羽化してしまう場合もあるので、一概に良いとは言えない。
冬季は若干温度を低めにした方が良いこともあるが、各自の経験により調整して頂きたい。


体重測定
体重測定
幼虫体重と成虫サイズ

幼虫時の体重と成虫の大きさには密接な関係があり、幼虫の体重によって、ある程度成虫のサイズを予測することができる。
エサ交換時などに幼虫を割り出す機会があれば、体重を測定してみるのも良いだろう。 右の写真の様に、キッチン用の電子秤等に幼虫を乗せれば、簡単に測定することができ、今後のエサ交換時期を決める参考にもなる。

下の表は幼虫体重と成虫サイズの関係表である。(幼虫体重は3令幼虫の最終体重)
※エサの水分が多い場合は、幼虫の水分比重が多く、体重に比べて小さな成虫になる場合もあり、飼育環境によっても変化するので、 必ずしも表の数値のとおりになるとは限らない。


[ 幼虫最終体重と成虫予想サイズ ]
幼虫体重(g)789101112131415
成虫サイズ(mm) 〜4846〜5049〜5352〜5653〜5754〜5856〜6058〜6260〜64
成虫サイズ(mm)36〜4038〜4241〜4442〜4543〜4644〜4745〜4846〜4947〜50

幼虫体重(g)161718192021222324
成虫サイズ(mm)61〜6562〜6663〜6764〜6866〜7067〜7168〜7269〜7370〜74
成虫サイズ(mm)48〜5149〜5250〜------

幼虫体重(g)252627282930313233
成虫サイズ(mm)71〜7572〜7673〜7774〜7875〜7976〜8077〜8178〜8279〜83
成虫サイズ(mm)---------