◆ 菌糸ビンの特徴

クヌギ、ナラ等の広葉樹のマット(培地)に、ヒラタケ、オオヒラタケ等のキノコ菌を植菌した物で、他の飼育方法に比べ、短期間で大型の成虫が得られるため、最近の主流となっている。
但し、初令幼虫の死亡、蛹化不全、羽化不全等の危険度が高く、菌に合わない幼虫もいるため、必ずしも大きくなるとは限らない。
また、温度管理が必要で、特に高温では菌が死滅してしまう場合があるので注意が必要。
◆ 菌の種類
菌糸ビンに多く使用されるキノコ菌として、ヒラタケとオオヒラタケがあげられる。
これらは更に細かく分類されるが、ヒラタケ系ではシメジ等、オオヒラタケ系ではエリンギ等が一般的に知られている。
菌糸の延びる最適温度は、ヒラタケで25℃前後、オオヒラタケで23℃前後。
材飼育ではカワラタケ材の効果が大きい様だが、菌糸ビンとしてはあまり一般的ではない。
◆ 菌糸ビンの効果
菌糸ビンが幼虫飼育に有効な理由は、大きく分けて以下の2つの効果によるものである。
栄養吸収の促進
キノコ菌が材を腐朽(分解)することにより、材の成分(セルロース、リグニン等)は様々な物質に分解されていく。
幼虫はキノコ菌により分解された栄養素(アミノ酸、糖分、キチン質等)を摂取、吸収し成長していく。
幼虫の生育環境の安定化
マット(培地)をキノコ菌糸で覆うことにより、キノコ菌以外の雑菌の繁殖を抑制することができる。
菌糸が劣化し雑菌が繁殖すると、急激な発酵を招き、温度の上昇、ガスの発生、酸欠につながる。
◆ 菌糸ビンの危険性
短期間で大型の成虫が得られる菌糸ビンだが、逆に危険な面もある。 菌糸ビン飼育での事故として以下があげられるが、この事故をいかに防止するかが菌糸ビン飼育のポイントとなる。
◆菌の劣化、死滅 |
キノコ菌は高温に弱いため、30℃以上では菌糸が劣化、死滅することがある。
また、その他の雑菌にキノコ菌が負けてしまい、劣化する場合もある。
菌糸が劣化、死滅すると、菌が水分を放出して培地の通気を遮断してしまったり、雑菌による急激な発酵を招き、酸欠になる 【対策】 30℃以上の高温にならないよう温度管理する。また、幼虫投入の際、雑菌が入らないように注意する。 |
◆二酸化炭素の発生 |
マット(培地)の粒子が細かいと幼虫の消化吸収が早い反面、菌による培地の分解も早いため、エサの寿命は短くなる。 また、空気循環が悪く、キノコ菌の活動による二酸化炭素等のガス発生が原因で酸欠になる危険性がある。 【対策】 あまり粒子が細かい物は使用しない。または、空気の循環を良くするため、穴を開けておく。 |
◆菌糸の活発化 |
低温で管理すると、菌糸の活動が活発になりキノコが生えることがある。表面のキノコがフタの空気穴を塞いでしまい、酸欠を招く場合もある。 【対策】 18℃以下の低温にならないよう温度管理する。または、キノコを取り除く。 |
◆幼虫の適応力 |
幼虫に菌に対する抵抗力がない場合、菌糸に侵されて死亡することがある。 また、菌が体質に合わず、全くエサ食べなくなり体が縮む、または死亡する場合がある。 【対策】 2令後期以降であれば比較的強いが、それでも菌に合わない個体もいる。 但し、大きく育てるには早い時期での菌糸ビン投入が効果的。 |