クワガタは種類によって、材産みとマット産みの2つのタイプに分かれる。
ただし、飼育環境によっては両方産む種類もあるため、完全に区分けするのは難しい。
産卵形態 | 種類 | 説明 |
---|---|---|
材産み | オオクワガタ コクワガタ |
アゴで朽木に傷(産卵巣)を作り、そこに卵を産み付ける。材が柔らかい場合は坑道を掘り、潜り込んで産卵することもある。 孵化した幼虫は、周りの朽木を食べ進み、朽木内で生活する。環境によってはマットに出てくる幼虫もいる。 |
マット産み | ノコギリクワガタ ミヤマクワガタ ヒラタクワガタ |
マットに産卵巣を作って卵を産み付ける。 幼虫はそのままマットを食べて育つが、朽木の中に入って行く場合もある。 |

産卵木
産卵の際には、産卵用の朽木が必要になる。
クヌギ、コナラ等の広葉樹の朽木で、直径7〜10cm以上の物を用意する。
あまり細い材だと♀が齧った際に崩れてしまうことがあるため、できるだけ太い材を選ぶようにする。
シイタケほだ木の廃材などが産卵木として売られているため、これを利用するのが最も手軽である。
また、あまり固すぎる材は産卵に時間がかかり、体力を消耗してしまうため、産卵数が減ることもある。
カワラタケ材、霊芝材を使用しても良い。
殺虫処理
用意した産卵木は、害虫がいる場合もあるので、電子レンジなどで加熱し殺虫した方が良い。
特に、コメツキ、カミキリムシの幼虫などは、クワガタの卵や幼虫を捕食してしまうため注意する。
加水
市販されてる産卵木は乾燥しているため、適度に加水する必要がある。
手ごろな容器に水を張り、産卵木を完全に水没させて半日〜1日程度放置する。その後、水から出して半日くらい日陰で乾燥させ、水を切ってから使用する。
水没させることにより殺虫効果もあるが、ダニなどは死滅しない。
ペアリングをセットして1週間以上経ち、交尾が確認できたようであれば、その後2週間〜1ヶ月程度で♀は産卵を開始する。
この時期は♂♀は別々にして、♀が産卵に集中できるようにする。
交尾が確認できなかった場合は、そのまま♂♀を一緒にしていても良いが、♀が産卵木を齧るようになったら、既に産卵が始まっている。
♂が産卵の邪魔になるようだと、♀が♂を攻撃する場合もあるので、別々にする。
(産卵中の♀は産卵木を齧り続けるため、かなり大きな音がするので分かるはず。)
<材産みの場合>
基本的は成虫飼育方法と同様にセットし、これに産卵木を入れる。
- 飼育ケースに良質のマットを入れる。
- 産卵木の樹皮を剥がす。
加水した産卵木は樹皮を半分くらい剥がしておき、あらかじめ傷や穴を開けておく。♀はそこをきっかけに材を齧り始めるため、♀に負担がかからなくて良い。 但し、樹皮を剥がすと、そこからカビが生えてくるので、どの位剥がすかは好みにより調整する。 - 産卵木を入れる。
♀は産卵木に好みがあるようなので、できれば2〜3本入れておいた方が良い。 この際、水分や固さの違う材を入れておけば、♀は好みの産卵木を選び、その材のみに産卵する。
産卵木の置き方には縦向きと横向きがあるが、どちらにしても構わない。 但し、縦置きの場合は、♀が齧りだしても倒れたりしないように十分な太さが必要になり、マットに深く入れる必要があるため、横置きの方が無難である。 - 産卵木をマットで埋める。
産卵木の1/2〜2/3がマットに埋まるようにしておく。この際、マットは多少固めにつめた方が良い。 材がマットから出ていると、そこからカビが生えてくるので、どの位マットに埋めるかは経験により色々試してみると良い。
基本的には産卵木は不要で、マットに潜ってそのまま産卵する。
但し、種類によっては朽木を齧りながら、その木屑とマットの間に産卵するものもあり、産卵の際の足場にもなるので、材産みと同様に朽木を入れておいた方が良い。
この場合の朽木は材産みに比べて、柔らかく水分が多いものを使用し、マットに深めに埋めるようにする。大きさはそれほど必要ではない。
いずれの場合も、マットは多少水分を多めにし、固めにつめておいた方が良い。
産卵の促進
♀の産卵を促進させる方法として、以下の方法が知られている。(効果のほどは定かでない)
幼虫飼育の残りマット | 幼虫飼育でエサ交換した際の古いマットを混ぜておくと、その匂いなどが産卵促進に効果がある。 |
幼虫の糞 | 幼虫の糞を水に溶かして、その水溶液を産卵木に吹き付けておく。 |
味の素水溶液 | 味の素を水に溶かして、その水溶液を産卵木に吹き付けておく。 味の素に含まれるグルタミン酸に産卵促進効果があると言われているが、無精卵ばかりを多く産むという話もある。 |
♀は産卵時にタンパク質を必要とするので、ペアリング時同様、産卵前から高タンパク質なエサを与えておく。
産卵中は基本的に材に潜ったままだが、たまに出てきてエサを食べるので、エサを絶やさない様にする。
飼育場所
なるべく暗くて静かな場所に置き、産卵に集中させるようにする。
物置に入れたり、布やダンボール箱をかぶせて完全に真っ暗にしても良い。
振動などのショックを与えると、産卵を中止してしまうこともあるので、なるべく触らないようにする。
産卵木の回収
ある程度の産卵を終えると、♀は産卵木を齧るのをやめ、またエサ場に頻繁に出てくるようになる。
この時、産卵木が穴だらけになっているようであれば、産卵木は取り出して、別の容器に保管しておく。
乾燥しないように、マットの中に完全に埋めてしまうのが良い。
オオクワガタ等は2〜3回の産卵を繰り返すので、2回目以降の産卵をさせる場合は、
一旦産卵木を取り除き、高タンパク質なエサを十分に与え、体力が回復してからセットした方が良い。
この時は、新しい産卵木をセットする。産卵木を交換しないと産卵の際に♀が卵や幼虫を潰したり、捕食してしまう場合がある。
また、産卵には相当体力を消耗するため、過度の産卵は♀の寿命を縮めることになる。
1シーズンで2回程度の産卵でやめておいた方が良い。