≪ 蛹 ≫
◆ 蛹化
蛹♀
の蛹
前蛹
蛹室内の前蛹

大きく成長した3令幼虫は、春になると周りの土を糞で固めて蛹室を作り始める。 クワガタの様に、必ずしもケース壁面に沿って蛹室を作るとは限らないが、 飼育ケースの周りに黒い紙を巻いて暗くしておけば、壁面に沿って蛹室を作る確率が高くなるので、その様子が観察できる。
やがて幼虫は、皮膚がシワシワになって前蛹となる。蛹室を作り終えてから10日〜2週間経つと、蛹化が始まる。 蛹化直後の蛹はまだ白く柔らかいが、1日程するとオレンジ色に色づき、体が固まる。

詳細は 矢印 『カブトムシ解説/蛹』 参照。
◆ 管理方法
土入れ

幼虫飼育の頁でも述べたが、幼虫は土壌がしっかりした固い部分に蛹室を作るため、春になり蛹化の時期が近づいたら、 ケースの下から10cm程度、黒土を入れて固めに詰めておき、その上に腐葉土、マットを入れておく。
マット飼育の場合は、黒土を入れずにマットを固めに詰めるだけでも良いが、詰め方がゆるいと、うまく蛹室が作れないことがあるので注意する。腐葉土飼育の場合は、土入れは必須。


飼育容器

国産のカブトムシは縦向きに蛹室を作るため、幼虫が十分な大きさの蛹室が作れる様に、深めの容器に10cm以上、黒土、マットを入れておく。 蛹室の大きさが足りないと、蛹化不全で死亡することもあるので注意する。 また、の場合は蛹化後に角が伸びることも忘れずに考慮しておく必要がある。


飼育場所

なるべく温度変化の少ない、静かな場所に置いておく。


温度

基本的に室内、外ともそのまま常温で問題ない。
但し、あまり温度が低いと羽化までの時間が長くかかるため、好ましくない。


振動

蛹は最もデリケートな時期なので、取り扱いには十分注意する。
特に蛹化直前〜直後の時期はあまり振動を与えないようにする。ショックによって蛹化不全を起こし死亡してしまう恐れがある。 また、蛹化直後の白い蛹はまだ柔らかく体が固まっていないため、傷ついたり、体が変形してしまう場合もある。

◆ 人工蛹室

何らかの原因でうまく蛹室が作れなかったり、蛹室が崩れてしまうと蛹化不全、羽化不全の確率が高くなる。 蛹室に問題がある場合や、蛹化、羽化の様子を観察したい場合は、一旦取り出して人工蛹室に移すという方法がある。
蛹化後2〜3日以上経ってから取り出すのが一番安全であり、それ以前の取り出しは危険が伴う。
特に前蛹を取り出す場合は、蛹化直前だと死亡することがある。逆に、まだ前蛹になっていない状態の幼虫は、暴れまわって人工蛹室を壊してしまう可能性が高い。
取り出す場合は、蛹室の周りのマットを全て取り除いてから蛹室を割るようにする。蛹室の壁は固いので、どこからが蛹室なのか感触で分かるはずである。 蛹室を割る際は、蛹を傷付けない様に細心の注意を払い、穴が空いたら少しずつ蛹室の壁を取り去るようにする。
いずれにしても、この時期の取り出しは非常に危険で、死亡することもあるので、確実に羽化させたい場合はそのままにしておくのが良い。
また、観察するだけであれば、人工蛹室に移さなくても、上の写真のように蛹室の上半分を取り去る方法もある。


<人工蛹室の作り方>
  1. 容器の用意
    インスタントコーヒーの空きビン等、蛹よりも大きめで、透明な容器を用意する。
  2. 蛹室の作成
    ≪マット編≫
    黒土、またはマットを加水し、手で握っても水が出ず、若干固まり、多少崩れる程度の湿度に調整し、ビンに固く詰め、前蛹、蛹よりも少し大きめの穴を縦向きに作る。
    壁面が滑らかになる様に指や棒で調整し、崩れないようにしっかりと固める。蛹室の壁面に凹凸があると蛹の体が変形してしまい、成虫の体も変形や欠落が生じてしまうことがある。(上の写真の天然蛹室を参考にすると良い)
    の場合は蛹化後に角が伸びるため、角がフタ等に当たらないように注意する。
    また、ビンの側面に蛹室を作っておけば、横から良く観察することができる。
    ≪ティッシュ編≫
    ティッシュを霧吹き等で適度に湿らせ、これをビンの壁、底面に貼り付けていく。ティッシュの水分は絞っても水が出ない程度にする。これを何度か繰り返し、筒状の蛹室ができるように形を整えていく。
    適度な大きさの蛹室になるまで全部ティッシュを詰めると、相当量のティッシュが必要になってしまうので、容器が大きい場合は、ダンボールや厚紙で隙間をある程度埋めてから、ティッシュを貼り付けていくと良い。
  3. 蛹の投入
    蛹室が完成したら、静かに蛹を投入しマットが乾燥しないようにフタをする。
    フタには穴を2〜3箇所位開けておき、間にガーゼやキッチンペーパーなどを挟んでおけば、乾燥防止やコバエ進入防止になる。 コーヒーのビンの様に、フタの裏に着いている密閉用パッキンを容易に外せるようであれば、パッキンだけ外して穴は開けずにそのままフタをした方が良い。
  4. 管理
    マットやティッシュが乾燥してきたら適度に湿らす。フタをしている場合は、あまり乾燥しないはずなので、ほとんど何もしなくても問題ない。 逆に蒸れるようであれば、フタをはずしたりして湿度を調整する。

これ以外にも、園芸用のオアシスを加工した人工蛹室や、既に羽化した後の天然蛹室を再利用する方法もある。