Practice Makes Perfect/御坂山地(王岳〜十二ヶ岳)
西湖根場浜(ねんばはま)駐車場。5時45分、暁闇をついて登山開始
5時53分、まず王岳を目指す
しばらくはヘッドライトを頼りに暗闇の林道を行く
6時15分、30分歩いてようやく空が白み始めた
6時28分、林道終点の王岳登山口
6時43分、夜明けだ。山が一気にモルゲンロートに染まる

払暁の富士山

王岳山頂直下は道が肩下がりの上熊笹の藪で、転倒滑落に要注意
霜を踏んでの山歩きは、陽が差して気温が上がると溶けて滑る

7時33分、御坂山地まずはひとつ目、王岳山頂(標高1,623M)に到着。山頂はまずまずの広さがある

鬼ヶ岳と節刀ヶ岳に至る縦走路。その間に小さなアップダウンが連続している
終始右手に富士山と西湖を臨む尾根歩きが楽める
8時42分、鍵掛峠に到達。ここからスタート地点の根場に降りられる。この少し手前に尾根の反対側に降りる芦沢鴬宿(おうじゅく)方面への分岐あり
王岳・鬼ヶ岳間に特別きついアップダウンはないが、思ったほどペースは上がらない

10時00分、御坂山地二つ目、鬼ヶ岳山頂(標高1,738M)に到着。本日の最高地点

特徴的な岩が飛び出た鬼ヶ岳山頂
山頂標識
鬼ヶ岳の山名の由来となった尖った岩。岩の先端に立つのは極めて危険だ
高飛び込み台のような鬼ヶ岳山頂岩

10時17分、御坂山地三つ目、雪頭ヶ岳山頂(標高1,710M)。鬼ヶ岳から僅か8分で着く

雪頭ヶ岳の山頂は狭く、この山頂標識がなければそれと気付かない。ここからスタート地点の根場に降りられる
元来た道を引き返し、梯子を昇って再び鬼ヶ岳山頂に戻る

10時34分、鬼ヶ岳山頂より、スタート地点の根場から王岳と、そこから歩いてきた尾根を振り返る
10時37分、鬼ヶ岳を少し下った露岩から雪頭ヶ岳と富士山。ここで27分間の昼食休憩を容れる。
富士山山頂部
次は尾根伝いに金山を経て節刀ヶ岳へ向かい、
節刀ヶ岳から金山に戻り、十二ヶ岳を越えてその奥に続く毛無山まで行ってから下山するのが本日の行程だ
11時25分、御坂山地四つ目の金山山頂(標高1,686M)

五十畳ほどありそうな広場のように開けた金山山頂
金山山頂の標識

途中で脚を痛めたが、11時53分、御坂山地五つ目となる節刀ヶ岳山頂(標高1,736M)にどうにか這い上った
十二ヶ岳の次は毛無山に向かう予定だったが、故障を抱えたため割愛し、十二ヶ岳山頂から下山するコースに変更
越えてきた雪頭ヶ岳と鬼ヶ岳を振り返る
十二ヶ岳山頂を経由し、湖畔の桑留尾に下山する

痩せ尾根のど真ん中を扼する岩。これは横を巻けないので乗り越えるしかないが、痩せ尾根上で高度感があるので要注意
十二ヶ岳山頂直下に垂れ下がるロープ群。本日一番の難所だ

13時01分、本日最後となる御坂山地六つ目の十二ヶ岳山頂(標高1,683M)に到着。狭い山頂に二つの祠が祀られている

13時07分、毛無山を諦め分岐から桑留尾へ下る
スリッピーな急勾配の下山道はダブルストック無くしてはかなり危険で、足元から小さな落石が発生しやすく、しかも一旦落としたらどこまでも止まらない神経衰弱区間だ
14時23分、桑留尾に到着
湖北ビューラインには歩道がなく、そこそこの交通量の上、この時刻ドライバーにとって陽が逆光となり、カーブの見通しも悪いとあって、歩くにはかなり危険だ。できればやめたほうがいい
15時07分、桑留尾から44分歩いて根場浜駐車場に無事到着

御坂(みさか)山地(王岳・鬼ヶ岳・雪頭ヶ岳・金山・節刀ヶ岳・十二ヶ岳)

2021年11月26日(金曜日)

 東京オリンピック・パラリンピックが開幕すると、それに呼応するように新型コロナウィルス・デルタ株が全国規模で感染爆発を引き起こし、東京都の1日の新規感染者数が8月13日に過去最多の5,773人に達したのを皮切りに、8月20日には全国で過去最高の25,876人にまで膨れ上がった。日本人は世界から見ても感染しにくいとされてきたが、これまでの4つの波とは様相の異なる第5波の襲来に、自衛だけでは避けられない切迫感と、重症化や後遺症を自宅療養のみでどう乗り切るかという新たなフェーズに入った観があった。
 ところがどうしたわけか、オリパラが閉幕すると感染は俄かに引き潮に転じ、東京をはじめとする19都道府県の緊急事態宣言と、8県のまん延防止等重点措置の全てが、9月30日を以って解除された。
 ワクチン接種が急ピッチで進んだこともあるだろうが、デルタ株自体が、まるであらかじめ意図してコントロールされてたかのように、急激に毒性と感染力を失ったかのような印象だった。それまで次から次へと変異を繰り返すコロナに政府や専門家は振り回され、決定打がないまま一時は国民総感染かと思ったが、突然のデルタ株自壊のシナリオは、まるで映画のラストシーンでも見るかのような、劇的な、そして何か出来すぎた顛末だった。2020年1月15日に国内で初めて感染が確認されて以来1年8ヶ月余り、9月30日現在での全国の感染死亡者数は17,666人にのぼった。入院できず自宅療養を余儀なくされた人は全国で10万人とも言われ、警察庁の調べでは自宅変死者の817人がコロナ死とされたが、厚労省では把握しておらず実態はよくわからない。
 ワクチン接種によって感染しなくなったわけではないが、抗原情報と抗体を獲得したことで、今後は免疫細胞で対応できるようになり、重症化のリスクが軽減されたということだろう。ようやくコロナは『ただの風邪』になったわけである。
 県を跨いでの移動の自粛も解除されたが、それでもまだ手放しには喜べなかった。ワクチン接種による副反応で、まれに心筋炎や心膜炎といった心臓疾患を引き起こす事例が報告され、2回目接種後2週間経っての運動で突然死するケースも報告された。私も9月上旬に2回目の接種を終えたが、念のため9月いっぱいの登山は自粛した。

 10月の天候安定期に一昨年敗退した白毛門・朝日岳・清水峠の周回ルートの再挑戦を期していたが、生憎休みと天候の折り合いが付かず、結局11月も終盤となり、すっかり陽も詰まって適期を逸してしまった。代わりに思い付いたのが、大幅にスケールを縮小した今回の御坂山地縦走である。ブランクですっかり鈍った現状を鑑み、せめて次年に繋げるシミュレーションとしたい。
 仕事の都合でここ10年、慢性的な寝不足と疲労が続いているため、日帰りでの県外遠征長距離登山を控えていたが、久しぶりに夜中の3時に秩父の自宅を出発し、県境の峠にクルマを走らせた。富士五湖のひとつ西湖西端の根場(ねんば)浜駐車場に着いたのが、まだ暗い5時少し過ぎだった。
 甲府盆地の南壁を為す御坂山地。中でも壁の東端に当たる三ツ峠山が有名だが、今回は西端の王岳から東に向かって尾根伝いに、鬼ヶ岳、節刀ヶ岳(せっとうがたけ)、十二ヶ岳、毛無山と縦走する計画を立てた。全行程は地図上参考タイムで9時間20分、下山地点である西湖東端の毛無山登山口から、15時34分の最終の路線バスに乗って根場に戻る予定で、逆算すると6時にはスタートしたい。車内で軽く朝食を済ませ、駐車場のトイレを借りて、5時45分、暁闇をついてヘッドライトを恃みに出発した。

 実は、暗闇の山道を歩くという経験は初めてで、単独登山のバリエーションとして一度はやってみたかったテーマである。明け方近いこの時間は熊に出くわす機会も多いようだが、11月も下旬とあって、例外はともかく、一般的にはすでに冬眠に入った時期だろう。そういえば、定番の『熊出没注意』の看板が一枚も見当たらない。
 暗闇の単独登山ということで、如何程のダークサイドに見舞われるかと結構期待していたのだが、山道といっても駐車場から王岳の登山口まで1時間の林道歩きなので、周囲が鬱蒼とした森とはいえ、暗闇でも何ら湧いてこず、いささか拍子抜けだった。歩き始めて30分ほどで空が白み、1時間ほどで陽が昇った。山が一気に朱に染まった。

 登山開始から1時間48分で王岳(標高1,623M)山頂に到着した。標高910メートルの西湖駐車場からの標高差は713メートル、地図上参考タイムの2時間25分の74パーセントで歩けたので、出だしとしてはまずまずだ。
 これから歩く東の稜線に目を向けると、鬼ヶ岳と節刀ヶ岳の山影が遠くに薄く、その間に恐竜の背が丸くうずくまったような幾重ものアップダウンが波打ってるのが見て取れる。これが本日の主たる課題な訳だが、こういうパターンは元来苦手である。下りは重力加速度によって体重の数倍の負荷が脚に掛かるため、徐々に筋疲労が蓄積してくる。富士山のように頂上までひたすら登って、ひたすら降りるだけなら、下りで脚がガクガクになろうが、精神的な苦痛はともかくとして、重力を味方にまだどうにかなる。だがその状態のまま、更に何度も繰り返し登り降りを強いられるこの手の山は、故障によって脚が上がらなくなれば、そこで身動きできずに遭難する危険を孕(はら)んでいる。
 まずは次の鬼ヶ岳までの区間タイム如何によって、今回の山行が成功するか否かの試金石となるわけだが、もし予定通りいかない場合、途中いくつかある下山路から離脱する選択も採らねばならない。ちなみにそれらエスケープルートを列挙しておくと、王岳と鬼ヶ岳の鞍部の鍵掛峠から根場に戻るコース、鬼ヶ岳山頂から根場に降りるコース、そして十二ヶ岳山頂から西湖中央部の桑留尾(くわるび)に降りるコースの三つである。
 王岳・鬼ヶ岳間の尾根は、距離は長いが特段難しい箇所はなく、右手の下に根場の集落が意外に近いため、防災放送や犬の鳴き声、クルマの音など、生活音が絶えず聞こえており、人里が近い安心感がある。
 鬼ヶ岳山頂(標高1,738M)に着いたのが10時ちょうど、王岳からの所要時間は2時間20分と、地図上参考タイム通りだった。アップダウンが苦手とはいえ、1分も縮められなかったことは少なからぬショックだった。

 鬼ヶ岳は今回のルート中の最高地点で、その名の由来となった鬼の角を思わせる尖った岩が、山頂から斜面に向かって飛込み台のように突き出している。その先端に立つべくリュックを捨てて挑んだが、意外な高度感と、足下の狭さと丸さに狼狽し、あと一歩が踏み出せず敢え無く敗退した。
 鬼ヶ岳からアルミ梯子を伝って降り、8分ほどで雪頭ヶ岳(せっとうがたけ/標高1,710M)に着く。名前は付いているが、鬼ヶ岳と同体のただの出っ張りに過ぎず、木に括り付けられたプレートがなければそれと気付かない。ここから根場に降りられるが、踵を返して鬼ヶ岳に戻り、次の金山を目指すべく、少し下った路傍の露岩を恰好の適所と見付け、その上の小さなスペースを独占する形で昼食休憩を容れた。

 昼食後、金山から節刀ヶ岳への稜線に差し掛かったところで、突如トラブルに見舞われた。金山から5分ほど歩いた緩い登りに差し掛かったところで、左腿の筋肉にビキッと感電したような痛みが走り、その後一歩を踏み出そうにも腿がビクンビクンと痙攣して上がらなくなり、その場から一歩も動けなくなってしまった。
 こんなことは初めてである。スキーで左膝靭帯を痛めた時、膝が曲がらず歩けなくなったが、その弱った膝を補うためきつく締め込んだスポーツサポーターが血行を妨げているのだろうか。それがアップダウンの無理に抗しきれなくなった結果だろうか。
 腿が硬直して動こうにも動けず、しばらく道の真ん中で木像のように立ち尽くしたまま休憩をとったが、その後どうにか道端の座れそうなところまで数歩足を引きずって倒れこんだ。ズボンをめくってサポーターを外すと血行が戻ったのか幾分楽になった。CW-Xもきつく感じ脱ぎ捨てたかったが、今後の展開を踏まえてそれだけは我慢した。
 当初の計画では、あと5分ほどで登れる節刀ヶ岳をやり、再び金山に戻ってから次の十二ヶ岳を経由し、稜線伝いに毛無山に登ってから、毛無山登山口バス停まで下山し、15時34分の最終の路線バスに乗って戻る手筈だった。つまり、それがタイムリミットである。それに間に合わない場合、エスケープルートに切り替えるしかない。
 エスケープルートの選択肢は二つ。次の十二ヶ岳山頂から西湖中央部の桑留尾へ降りるコースと、元来た鬼ヶ岳山頂まで引き返して雪頭ヶ岳から根場に降りるコースである。いずれにせよ山頂まで登らねばならず、足が動かない限り困難極まる。
 他には、これだけはやりたくないが、最終手段があるにはある。すぐそこの金山山頂まで這ってでも引き返し、携帯電話で警察へ救助要請する方法である。幸い今回のコースはずっと電波状態がよく、幸運にも金山山頂には五十畳ほどの広場があり、運良く安定した今日の天候なら、ヘリコプターによるホイストが可能だろう。それはそれで興がないでもないが、その選択をしたが最後、単独登山者の私にとっては、登山趣味におけるアイデンティティーの放棄と見做し、代償として登山趣味そのものを辞めねばならない。

 軽い肉離れでも起こしたかと思ったが、15分休んで立ち上がってみると、意外にも歩けそうだった。不本意ながら、念のためリュックに携行していた伸縮式ストックを伸ばし、ダブルストックで節刀ヶ岳山頂目指して歩き始めた。折角ここまで来たのだからこれだけはやってしまおうと浅慮した訳だが、少し登ると今度は反対の右腿がブルブルしはじめ、左脚の股関節までガクガクしてきた。金山からの地図上参考タイム15分のところを、途中休憩込みで28分掛かった。山頂で座り込んで脚の回復を図った。
 王岳から鬼ヶ岳まで誰にも会わなかったが、鬼ヶ岳山頂からは幾人かのハイカーとすれ違った。皆もうマスクなぞしていない。私は顎マスクをして、すれ違うときだけ口に上げて挨拶した。節刀ヶ岳で休んでいると若い男が一人登ってきたので、顎マスクを口に上げて「こんにちは」と挨拶したが、彼は一瞥をくれ「ふふん」と笑って山頂の写真を一枚撮り、くるりと回って行ってしまった。コロナも終熄したこんな山中で未だにマスクなんて馬鹿じゃねえの、という嗤いにも感じた。まあ、生還に関わる深刻なダメージを抱えながら、下山方向とは逆の山頂にわざわざ登って、より悪化させている点、我ながら選択を誤ったか、相当のバカヤロウには違いない。

 幸いにも脚の調子が大分戻ったので、今後のコースを十二ヶ岳から桑留尾への下山と決めた。まだ毛無山経由で最終バスに間に合う時刻だが、それも順調に行けばの話で、故障が再発すれば乗り遅れるリスクが高い。十二ヶ岳から下りっぱなしなら、その後の桑留尾から根場まで湖畔の車道を歩かねばならないが、タイムリミットがない分気は楽だ。
 金山から十二ヶ岳、さらにはその先の毛無山への稜線ルートは、地図上では一般向けでない破線表示となっていて、ある程度の険しさは覚悟していたが、痩せ尾根のど真ん中に大岩が置いてあるのには思わず失笑した。
 左を見ても右を見ても巻道はなく、道を間違えたかと思ったが、他に見当たらないので岩の上に登ってみると、道はその先へと続いていた。岩の高さに痩せ尾根の高度感がプラスされるため、この岩越えはちょっとスリリングだった。
 山頂直下まで来ると、高さ約6メートル、斜度およそ45度の岩の壁が、忽然と登山道の正面いっぱいを立ち塞いでいた。ぽろぽろと脆く剥がれやすい岩肌に、5・6本ものロープが阿弥陀くじのような慌ただしさでぶら下がっており、登攀する以外他に迂回路はなさそうだった。
 普段なら何ら問題ないが、急勾配を登るには腿を胸まで上げねばならず、今の状態で果たして登りきれるか不安だったが、ここまで来たらもはや引き返す選択はなかった。
 ダブルストックのままロープを掴んで登り切ると、山頂の縁に若い男が二人、こちらに背を向けて座り、首だけを異様に後ろに捻じ曲げて、弁当を食いながらこちらを見下ろしていた。
 私は顎マスクを口に上げて「こんにちは」と挨拶したが、男二人は首を後ろに捻じ曲げたまま終始無言で、くちゃくちゃと飯を食いながら無表情にこちらを見ていた。ダブルストックで崖をよじ登るのがよほど珍しかったのだろうか。理由はよく分からないが、節刀ケ岳の男といい、低山ハイキングに有り勝ちな『見知らぬハイカーと挨拶する習慣のないクラス』の人達のようだった。

 十二ヶ岳の狭い山頂には祠が二つ祀られていて、先客に陣取られていたこともあり、休憩するスペースもなく、また休憩する気もなかった。写真のみちゃっちゃと撮って、さっさと下山に移った。暗闇の単独登山でも感じなかったダークサイドが、他人に接するストレスから生ずるのは、改めて興味深くもあり、哀しいかな物事の本質と言えるだろう。或いは山に登れば下界の悩みなど瑣末(さまつ)なことなどと言う人がいるが、その論理からすると、やはりここは峰を幾つ繋げようが所詮は富士山展望低山ハイキングコースに過ぎず、『山の神域』からは程遠いのだろう。

 十二ヶ岳山頂から毛無山に向かう途中の広場に、桑留尾への分岐標識があった。この下山路は傾斜がきつく非常に滑りやすい上、足元から絶えず小さな落石が発生する危険な道だった。ダブルストックでなんとか切り抜けたが、落とした小石はどこまでも止まらず、幸い下に誰もいなかったものの、非常に神経のすり減る区間だった。地図上参考タイムの1時間35分に対して、82パーセントの1時間18分でどうにか降りきった時には、ストックの石突きゴムの片方を失っていた。
 ここから根場の駐車場まで湖畔の車道歩きである。湖北ビューラインと言うだけあって、景色こそ好いものの、そこそこの交通量があるにも拘わらず、歩道がまったくない上カーブの見通しが悪く、おまけにこの時刻、陽が低く傾いてクルマのドライバーには逆光勝ちで、歩行者にとってはストレスの大きい大変危険な道だった。中には首を捻じ曲げてこちらを睨んでくるドライバーもあり、歩くのがさも悪いかのようであり、もしかしたら通行可能なのは自転車以上の車両専用道路なのかしらと、悶々たるダークサイドに苛まれた。他に歩いている人は皆無だが、轢かれて痛い目見るのは自分なので、極力ここは歩かないほうが賢明だろう。

 桑留尾から44分歩いて15時07分、その後の故障もなく、どうにか無事に根場まで戻ることができた。毛無山登山口から最終バスに乗っていた場合、直近の根場民宿バス停に着くのが15時47分なので、40分のアドバンテージを得たことになる。結果的には毛無山まで周れたかもしれないが、過ぎたことは仕方がない。その分早く帰宅できるので、それで良しとしたい。
 6時間歩いたところで突然の変調をきたし、一時的にせよ行動不能に陥ったことは重く受け止めねばならない。なんとか運良く持ち直してその後3時間歩いて帰れたものの、これが朝日岳や北アルプスなら命取りになったかもしれない。ただの筋力不足といえばそれまでだが、これまで長時間登山の切り札と信じてきたスポーツサポーターとCW-Xも見直さねばならず、今後はこうしたリスクを抱えてしまったことを弁え、一から検証し直さねばならなくなった。
 
●登山データ
2021年11月26日(金曜日)
西湖根場浜駐車場(標高909M)→鬼ヶ岳(標高1,738M)、標高差829M
王岳(標高1,623M)、雪頭ヶ岳(標高1,710M)、節刀ヶ岳(標高1,736M)、金山(標高1,686M)、十二ヶ岳(標高1,683M)

西湖根場浜駐車場(5時45分出発)→王岳(7時33分/休憩07分)→鍵掛峠(8時46分)→鬼ヶ岳(10時00分/休憩09分)→雪頭ヶ岳(10時17分/休憩07分)→鬼ヶ岳(10時34分)→鬼ヶ岳の少し下の露岩(10時37分/昼食休憩27分)→金山(11時25分)→少し登ったところで脚が痙攣して休憩(15分)→節刀ヶ岳(11時53分到着)、登り所要時間:6時間08分
山頂滞在時間:10分
節刀ヶ岳(12時03分下山開始)→金山(12時18分)→十二ヶ岳(13時01分)→桑留尾分岐(13時07分)→桑留尾(14時23分)→西湖根場浜駐車場(15時07分到着)、下り所要時間:3時間04分
全行程:9時間22分

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