Practice Makes Perfect/蓑山(簑山・美の山/和銅黒谷駅〜皆野駅ルート)
皆野駅有料駐車場。1日530円
月極だが契約者のいない赤札のところは日貸しに当てられている
電車に乗って隣の和銅黒谷駅で降りる
ホームの和同開珎モニュメントで金運アップ
備え付けの箱に切符を入れる
美の山登山口の聖神社の銭神様で金運アップ
和銅遺跡に立ち寄って更に金運アップ
銭神様の蜈蚣(ムカデ)と和銅(自然銅)の原寸大レプリカ
和銅岩 和銅コース山頂下にある入山カウンター

中継アンテナ基地局で占められた美の山山頂(標高586.9M)
山頂展望台からは秩父盆地が一望できる
蓑山神社。狛犬は痩せ狼だ
皆野駅に到着。駐車料金を精算

蓑山(美の山/和銅黒谷駅〜皆野駅ルート)

2020年8月24日(月曜日)

 私の通った小学校の校歌は、『みのやま かさやま 霧晴れて』というフレーズだったので、漢字で書くと簑山・笠山ということだろうが、子供当時の認識は『美の山』だった。
 当時から山頂まで観光道路が通じており、山頂は『美の山公園』として整備され、NHKのテレビ中継アンテナが建ち、軽食を提供する売店があった。桜が多く、花見シーズンには親にクルマで連れられて行った思い出がある。
 成人後もクルマで何度か上ったが、歩いて登るのは小学校の遠足以来である。
 これまで新調した登山靴は、肉刺(マメ)ができるのは初回のみだったが、昨年買った靴はなかなか馴染まず、コロナ自粛明けの今季登山を先週から始めたものの、昨年に引き続きまたも両踵にマメができて潰れてしまった。一週間経った今でも傷は癒えないが、今回は靴擦れ防止テープを貼っての再挑戦である。『足に靴を合わせるのではなく、靴に足を合わせる』というのは、以前テレビで言っていたPerfumeの箴言(しんげん)である。

 さて、美の山の登山コースはいくつかあるが、今回は秩父鉄道の黒谷駅から登り、皆野駅に下りるコースを設定した。クルマで皆野駅まで行き、踏切横の月極駐車場に入れる。入り口には特に目立った看板もなく分かりにくいが、月極契約者のいない空きスペースは日貸しに当てられていて、1日530円と書かれた赤札のところなら、どこに置いても構わない。
 朝一番の三峰口行きは6時13分である。駅舎に寄って駐車代を払おうとしたら、窓口に『この時間は駅員がいません』と札が出ていた。先ほど熊谷行きの有料急行がホームの勤め人や学生を乗せて出たばかりなのに、急行停車駅にも拘らず、最近はそんな事情になっているのかと鼻白んだが、仕方がないので券売機で切符を買って(ICカードは不可)やってきた三峰口行きの電車に乗り込んだ。

 一駅隣の和銅黒谷駅で降りる。私が子供の頃はただの『黒谷駅』だったが、2008年に『和銅奉献1300年』記念事業の一環として『和銅黒谷駅』に改められたという。駅のホームにもモニュメントがあるが、和銅とは自然銅のことで、この地から採掘された和銅を朝廷に献上したところ、大変喜ばれ、年号を『和銅』に改元したという。その和銅によって作られたのが、日本最初の流通貨幣『和同開珎(わどうかいちん)』であり、モニュメントには『日本通貨発祥の地』と紹介されている。
 そんな由緒ある黒谷駅だが、私が子供の頃は駅員がいたものの、もうずいぶんと前から無人である。備え付けの箱に切符を入れて改札を出て、駅の周辺を少し散策すると、ここにも日貸し駐車場がある。『和銅黒谷駅有料駐車場、1日310円、ご利用の際は駅にお申し出ください』と書かれているが、駅は無人である。しかもこの駐車場は間口が狭く、駐車区画のラインも引かれておらず、線路に沿って縦列駐車するしかないが、利用者はいない。

 駅から国道を渡って左に少し歩くと、美の山登山道の入り口に聖(ひじり)神社が建っている。秩父三社と言えば、三峯神社、秩父神社、そして長瀞の宝登山神社を指すが、昨今規模は小さいながらも私(ひそ)かに人気を集めているのが、この聖神社である。境内には例の『和同開珎』のモニュメントが立ち、拝めば金運がアップするらしく、週末には渋滞が起きるほど訪れる人が多い。御利益が本当なら、この近所に永く棲む氏子たちはさぞかし裕福なはずだが、どうだろう。まあ欲をかかず、コツコツ真面目に働けば、最低限のお金に困らないということだろうか。それでも仕事の少ない秩父にあっては大変ありがたいことには違いない。
 ところで、皆が熱心に拝む銭神様たるご神体はムカデである。元明天皇から下賜された和銅製の蜈蚣(ムカデ)雌雄一対のフィギュアである。毒を持ち、見た目も動きも不気味な百足(ムカデ)の嫌悪感たるやゴキブリの比ではないが、実はムカデは軍神・毘沙門天の眷属であり、決して後退せず前進あるのみのスタイルは戦国武将の間で人気があり、兜の前立てや旗指物のモチーフにも好んで使われた。更には鉱山の神の使いともされ、昔の金山・銀山で働く鉱山師からは大切に扱われたという。つまり銭神様である。今後は見かけても無闇に殺さず大事にすれば金運が上がるかもしれない。

 神社から17分ほど登ると和銅露天掘り遺跡に着く。ここにも巨大な和同開珎のモニュメントが飾られている。そのすぐ先には白ペンキで『和銅』と大書きされた和銅岩があるのだが、今では行く人もいないのか踏み跡もない。少々道草が過ぎたが、これで美の山への登山道に戻ることにする。
 和銅遺跡から山頂までは51分かかった。時間は大したことないが、気温が高く蒸し暑くて結構辛かった。まだ朝食を食べていないので、山頂の木陰のベンチに腰掛けて食事休憩を容れた。
 山頂はNHKと民放のテレビ中継アンテナ基地で占められており、フェンスの脇に『美の山山頂586.9M』という標柱が立っている。手持ちの地図では美の山の標高は581メートルとなっているが、現地のそれはGPS測量前の数値だろうか。
 山頂は広く平らで芝が敷き詰められ、インターロッキングブロックで舗装された広場を囲んで、資料館やら売店やら駐車場があり、二つあるコンクリートの展望台からは眼下に秩父盆地が一望できる。公園管理業者だろうか、おじいさんが二人、軽トラ2台で一般車両進入禁止の山頂広場に乗り込んで、何やら作業の支度をしていた。昨年の台風19号でやられた観光道路は数日前の19日に復旧したそうだが、ハイカーというか、一般客は私一人である。トイレを借りて、自販機で缶コーヒーを買って飲んで、下山に移った。

 下山は蓑山神社表参道から皆野駅目指して降りた。蓑山神社の狛犬は、三峯神社や武甲山御嶽神社と同じく、肋骨の浮き出た痩せ狼である。神社前の長い石段を降りて鳥居を出た辻を左に折れると、やがて道はコンクリート舗装された上に苔むした非常に滑りやすい急勾配の九十九折となり、唐突にえらい傾斜地に建てられた高床式家屋の別荘地の集落に出る。九十九折の道を降りても降りてもこうした家が続き、意外に軒数があることに驚くが、ほとんど全てが固く雨戸に閉ざされ、人影も物音もない。
 国道を走るクルマの音や、街の防災無線の放送が割と近くに聞こえていたが、ようやく国道に出た。ドラッグストア・イチワタの裏、やおよしの前である。

 皆野駅に立ち寄り、出勤してきた駅員に、
「今朝駐車場にクルマを置いたので駐車代を払いたいのですが」
 というと、
「はい530円です」
 と駐車券を差し出した。
「あ〜、クルマのナンバーとかはいいんですか?」
 と訊くと、
「大丈夫です」
 という。
 クルマに戻ってフロントガラスのワイパーに請求書が挟まってないか確かめたが、何もなかった。

●登山データ
2020年8月24日(月曜日)
黒谷駅(標高170M)→蓑山(標高581M)、標高差411M

皆野駅(6時13分/電車)→黒谷駅(6時16分着)→聖神社(6時28分)→和銅遺跡(6時45分/散策13分)→和銅コース→簑山(美の山)山頂(7時49分)、登り所要時間:1時間33分
山頂滞在時間:38分
蓑山山頂(8時27分下山開始)→蓑山神社(8時42分)→蓑山神社表参道→皆野駅(9時25分到着)、下り所要時間:58分
全行程:3時間09分

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