Practice Makes Perfect/両神山(日向大谷口表参道〜七滝沢コース)
道の終点まで走ると日向大谷口バス停と両神山荘の有料駐車場。この下に無料駐車場もある
両神山荘
緑の箱に駐車料500円を納める
登山届を出して出発
表参道にはやたらと石仏が多い
白藤の滝への分岐。所要時間は5分とある。もう二度と来ることもあるまいしせっかくなので登山道を外れて寄り道してみる
急勾配の踏み跡に導かれてたどり着いたのがここ。これが白藤の滝なのか?標識出してる割にはしょぼくないかと懐疑したが、後でネットで調べるとどうやら違ったようだ
かつては有人管理だった清滝小屋。現在は避難小屋として開放されている
清滝小屋からは薄川と別れを告げ、産泰尾根への急登となる
両神神社奥宮
両神御嶽神社本社 木彫りの龍が立派だ
山頂に到着 山頂から赤岩尾根の展望
帰りは七滝沢コースを下る ひとつ目の滝
落葉に埋もれた道は滑りやすいので注意 スラブの鎖場は滑りやすいので要注意

七滝沢コースの標識は新しいものが整備されているので道には迷わないが急勾配の下りが続く
紅葉が綺麗だ
赤滝に立ち寄る
赤い岩肌を流れ落ちる赤滝。滝口から覗き込む真っ赤な滝壺が妖しく不気味だ
赤滝の次の滝

両神山(日向大谷口表参道〜七滝沢コース)

2018年10月25日(木曜日)

 毎年今年は異常気象だと書いているが、この年はこれまでの経験が通用しない未曾有の事態が連続した。
 関東甲信地方で観測史上最速の6月29日に梅雨明けしたのを皮切りに、西日本では6月28日から10日間の総降雨量が1800ミリという観測史上最大の豪雨が襲い、死者200人以上、家屋全壊5000棟以上の甚大な被害をもたらした。
 7月23日には熊谷で観測史上最高の41.1℃を記録するなど全国を災害級の猛暑が襲い、2万2千人が熱中症で救急搬送され、65人の死者を出すなど統計を取り始めた2008年以降最悪となった。
 7月28日、前代未聞の日本列島を東から西へ逆走する台風12号が再び西日本を直撃し、熱海のホテルの展望レストランの窓ガラスが高波に粉砕されるニュース映像が流れた。
 9月4日に西日本を襲った台風21号は、和歌山市で最大瞬間風速57.4メートルを記録するなど19道府県77地点で観測史上最大風速を更新し、駐車場のクルマが吹き飛ばされたり、大型タンカーが海上空港の桟橋に激突する凄まじい映像が報じられた。
 9月6日には北海道で観測史上初となる震度7の地震が襲い、北海道電力最大の発電所が緊急停止したのを発端に、過剰な負荷を支えきれなくなった他の発電所がドミノ倒しのように連鎖停止する史上初の北海道全域停電が起こった。
 9月30日の夜には大型の台風24号が沖縄から北海道まで勢力を保ったまま列島縦断するという観測史上異例の事態が起こり、JR東日本では直撃に備えて首都圏全線を20時を以って運転取りやめにするという開業初の措置を採った。
 天候不順は10月に入っても収まらず、ようやく安定した頃には既に陽も押し詰まり、長時間登山シーズンは終わっていた。

 天候と休みの折り合いのつかないまま、既に4ヶ月近いブランクを作ってしまったため、県外遠征は諦め地元秩父の両神山に登ることにした。10年前に八丁尾根ルートを登って以来二度目となるが、今回はもっともメジャーな日向大谷口から表参道を登り、帰りはマイナーな七滝沢コースを降りてみようと計画した。
 前夜充分な睡眠を取り、家を6時過ぎに出発した。小鹿野町の国道299号線から両神山の案内標識に従ってクルマを走らせると、それまで2車線あった道幅が、ダリア園を過ぎたところから山道らしい狭さに変わる。
 程なく終点の日向大谷口バス停に到着した。
 バス停横に10台ほど置ける駐車場があり、ここは民宿両神山荘の宿泊者用だが、駐車料金を払えば日帰り客も利用できる。少し下に登山者用の無料駐車場もあるが、僅かでも経済活動するため有料に停めた。7時前で無料に2台、有料に5台ほどの先客があった。
 駐車場から少し登って両神山荘の玄関脇の料金箱に500円を入れ、クルマのナンバーと氏名を記帳する。しかしこれではクルマの台数と金額が合わない場合、誰がズルしたのか分からないのではないかと疑問に思い、玄関を開けて民宿のご主人らしき人に訊いてみたが、それでいいとの返答だった。
 民宿脇が登山道の入り口で、登山ポストも置かれているので、届を出して出発した。

 しばらくは平坦というか、下り交じりの道が七滝沢との分岐の会所まで続き、会所を過ぎて道はようやく登りになる。10年前の八丁尾根では終始誰にも会わなかったが、この日は紅葉の時期とあってかそこそこ人通りがあった。
 先行していた高齢者を10人ほど抜いてしばらく登ると『白藤の滝』の分岐標識に目が止まった。所要時間は5分と添え書きされている。一度踏んだ山頂に急ぐ必要もなく、どうせもう二度と来ることもないだろうからと、滝に寄り道して行くことにした。
 滝への道は登山道からかなり下っており、ここから滝の音は聞こえない。せっかくここまで登ってきてわざわざ急傾斜を降りてまで見る価値があるだろうかと鼻白んだが、まあ大した往復でもあるまいと多寡をくくって道を下った。
 落葉で埋もれた微かな踏み跡はかなり急勾配で下っており、果たしてこの道で合ってるのか一抹の不安を覚えたが、やがて滝の音が聞こえてきたので、音を恃(たの)んで斜面を下った。分岐から6分ほど下ったところに滝はあったが、落差は2メートルにも満たない貧相なものだった。
 帰ってからネットで調べてみると、案の定この滝を紹介している人とは別に、他の立派な滝を載せている人がいた。正解に辿り着けなかった己の腑甲斐なさを悔やみつつも、果たして山頂を目指すハイカーのうち、何人がわざわざここを降りるだろうか、そしてそのうち何人が誤認して落胆するだろうかと思った。
 滝から登山道に這い上がると程なく清滝小屋に着く。今でこそ無人の避難小屋だが、元々は管理人のいる由緒ある山小屋だっただけに造りは立派だ。
 小屋を過ぎるとそれまで沢沿いの緩い道だったのが、尾根を目掛けての登りになった。登山道の勾配が俄かにきつくなり、鎖場も何箇所か出てくる。道草している間に抜き返された何人かのハイカーをすべて抜き返したが、ブランクの所為か齢(とし)の所為か、無理をし過ぎたのか、膝が痛み出してきた。
 スキーで痛めた左膝は、長時間行程ではスポーツサポーターなしに歩けないが、5時間程度のミドルレンジならなくても平気だった。ところが今回痛み出したのは予想に反して右膝だった。右膝を怪我した覚えはないのだが、これは今までになかったことでどうもおかしい。一抹の不安要素を抱えることになった。
 両神神社を過ぎるとようやく山頂らしき稜線を視界に捉えるが、ここからが意外に辛かった。八丁尾根ならともかく、ただの初級ハイキングコースと侮っていたのが、予想外のきつさに俄かに狼狽した。

 狭い山頂の岩場をふたりの高齢者が占拠していた。
 一段下がった隅の石碑のところに腰を下ろし、30分ほど昼食休憩を採った。膝の痛みは大事無いようだった。そのうち後続のハイカーが続々登ってきたので、荷物をまとめて場所を明け渡し、予定どおり七滝沢コースに分け入った。
 表参道と違い、すっかり人気の途絶えた静寂の中、急勾配の下りがどこまでも続いていた。七滝コースは地図上では破線表記のマイナーコースだが、意外にも標識は新しいものが整備されており、道迷いする心配はなさそうだった。
 七滝のうち確認できたのは三つで、標識が出ているのは赤滝のみだった。沢に降りてみたが、どこに滝があるのかわからない。おかしいなと思って周囲を見渡すと、実は滝の上にいることに気が付いた。沢の流れの途切れた断崖から顔を覗かせると、赤い岩肌を滑り落ちる落差7メートルほどの滝があった。
 血の池のような赤い滝壺が妖しく不気味だ。滝口から身を乗り出して覗き込む恰好になるので、魅せられるあまり思わず吸い込まれそうになる。
 その後も休みなく続く急勾配の連続にそろそろ倦み始めてきた頃、ようやく登ってきた会所に合流した。

●登山データ
2018年10月25日(木曜日)
両神山荘駐車場(標高670M)→両神山(標高1,723M)、標高差1,053M

両神山荘駐車場(7時00分出発)→会所(7時34分)→白藤の滝入り口(8時26分)→白藤の滝?(8時32分/休憩3分)→白藤の滝入り口(8時44分)清滝小屋(9時08分)→両神神社(9時57分)→両神山山頂(10時28分到着)、登り所要時間:3時間28分
山頂滞在時間:33分
両神山山頂(11時01分)→両神神社(11時20分)→七滝沢コース分岐(11時45分)→赤滝(12時20分/休憩5分)→会所(13時07分)→両神山荘駐車場(13時36分到着)、下り所要時間:2時間35分
全行程:6時間36分

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