Practice Makes Perfect/赤城山
おのこ駐車場からスタート
前方左に赤城神社を認めつつ湖畔の道を歩く
黒檜山(くろびさん)登山口に到着
気持ちのよい登山道だが
登山道の石がアイゼンによる引っかき傷だらけで痛々しい
猫岩付近から大沼越しに地蔵岳の展望
眼下には赤城神社
トウゴクミツバツツジ
黒檜山山頂(標高1,828M)
山頂展望広場からの眺望
黒檜大神
稜線伝いに駒ヶ岳経由で下山
駒ヶ岳
駒ヶ岳山頂(標高1,685M)
鋼製階段を降りる
駒ヶ岳登山口に到着 大洞駐車場に移動し地蔵岳へ登山
地蔵岳直登コース登山口
ゴツゴツと歩き難い直登コース

地蔵岳山頂(標高1,673M)
地蔵岳山頂から黒檜山と大沼を臨む
地蔵岳山頂のおびただしいアンテナ群
赤城山第一スキー場に下山

赤城山(黒檜山・駒ヶ岳・地蔵岳)

2018年5月21日(月曜日)

 2018年は4月に入ってから急激に気温が上昇し、22日には関東で初の真夏日になるなど、全国27ヶ所で4月の観測史上最高を記録し、早くも強烈な暑さに見舞われている。スキーは2月以降、予定していた平日休みが悉(ことごと)く雨に見舞われ、急激な雪解けとも相まって、春スキーにまったく行けないままシーズンアウトしてしまった。運動不足から健康診断で人生初のメタボ勧告を受けるなど、このところ体調も芳しくない。
 これまでの経験から言って、いくら山登りをしようとダイエットに何の効果もないと分かっているが、他に適当な運動も思い付かず、結局むなしく山登りに出掛けることにした。弛み切った現状を鑑み、軽い足慣らし程度にと赤城山を訪れた。

 前年最後に登った榛名山同様、山頂のカルデラ湖までクルマで上れるため、湖畔を囲繞する外輪山の比高は、最高峰の黒檜山(くろびさん)でも多寡だか468メートルに過ぎない。
 大沼(おの)湖畔のおのこ駐車場にクルマを停め、左手に大沼と赤城神社を眺めつつ暫く車道を歩き、黒檜山へ直登する登山口に入った。
 山はトウゴクミツバツツジとシロヤシオが真っ盛りで、新緑の中に白やピンクがモザイクタイルのように散りばめられている。途中大沼越しに対岸の地蔵岳の展望が開ける。赤城No.2の外輪山で、黒檜山が済んだら続けて登る予定だ。
 冬の登山が盛んなのか、他では見たことないくらい登山道の石がアイゼンの引っかき傷で真っ白になっていた。真冬でもクルマで来られるため、雪山登山の練習場にでもなっているのだろうか、何とも痛々しい限りだ。登山開始から1時間20分で山頂に到着した。
 山頂から少し先にある絶景スポットは北に大きく展望が開けていて、榛名山と武尊山が眼下に裾野を大きく広げ、その後ろに残雪を冠する谷川連峰が横たわり、その更に後方列から至仏山と燧ケ岳の二峰が頭一つ飛び出している。まだ朝食を食べていないため、ここで休憩を容れた。

 山頂から尾根伝いに駒ヶ岳(標高1,685M)を経由して下山する。一旦クルマに戻り、湖の反対側の大洞(だいどう)駐車場まで移動し、地蔵岳への直登コースに入る。
 ここまで順調だったが、登り始めてすぐに異変が起こった。俄かに足が上がらなくなった。黒檜山からの下山を急ぎすぎたためか筋疲労に襲われ、耐え難い辛さに気持ちが折れかけた。ここで引き返そうかと思ったが、これまでの登山経験からすれば、これはこれで想定内だった。ここからもう一段上の力を解放できるか否か、試す機会を得たと思えば、それはそれで有意義なことだった。
 頽(くずお)れそうな気持ちのまま、一歩一歩、静かに登り続けた。やがて鬱蒼たる森を抜けると、やにわに明るく切り払われた尾根に抜け出した。リミッターが外れれば体が軽くなって脚に力が戻るはずだが、ここ数年一向にその境地に入れない苦しい状態が続いている。

 地蔵岳にはかつてはロープウェイやスキー場があり、栄華を極めたを時期があったらしいが、今は広い山頂にテレビ局や国交省のアンテナが立ち並んでいるだけで往時の面影はない。かつて山頂駅があったであろう場所には僅かに石垣跡が残り、十体ほどの地蔵が静かに佇んでいる。振り返れば大沼越しに先ほど登った黒檜山が一望できた。本日の目標達成に満足し、適当な場所を見つけて昼食にした。

 帰りは登ってきた来た道とは反対側の勾配の緩い木道を降りる。山裾を回り込むように下ると不意に切り開かれた明るい場所に出た。距離の短い緩斜面にベルトコンベアを配しただけのごく小さなゲレンデで、道路に出たところに赤城山第一スキー場の看板があった。
 かつては第一、第二、第三まであったようだが、今はこの第一のみが週末や冬休みに限って細々と営業を続けているらしく、そのすぐ目の前がクルマを置いた駐車場だった。
 衣服をすべて改め、クルマでおのこ駐車場に戻った。せっかくなので少し観光して行くことにした。
 湖畔にはボート乗場があり、土産物屋や食堂が軒を連ねているが、平日でもあり、かつてのモータリゼーションの終焉とも相まって、ひどく閑散としていた。別に腹も減っていないが、せっかくなので食堂に立ち寄り手打ち蕎麦を食べた。
 次いで土産屋に入ってみると、未だに『頭文字D(イニシャル・ディー)』のグッズが並んでいるのには瞠目した。赤城山は漫画の人気キャラ高橋兄弟率いる走り屋チームレッドサンズのホームコースであり、今でこそ赤城道路には走り屋殺しの不陸舗装が施されているが、それでもあちこちのカーブには黒々と新しいスリップ痕が残り、ガードレールはあちこち潰れ、未だにモータリゼーションの亡霊が出没していることが窺える。
 地元にとってはえらい迷惑だろう反面、ちゃっかり商売に結び付けているあたり逆に清々しいが、亡霊は店が閉まった夜中にしか来ないため、土産はたいして売れないだろう。
 登山道を抉(えぐ)る雪山練習といい、暴走車問題といい、インフラを整備して観光客を誘致すれば、悪影響も入ってくるのは必然とはいえ、世の中万事良い方向のみには進まないものである。

●登山データ
2018年5月21日(月曜日)
おのこ駐車場(標高1,360M)→黒檜山(標高1,828M)、標高差468M
大洞駐車場(標高1,360M)→地蔵岳(標高1,673M)、標高差313M

おのこ駐車場(7時05分出発)→黒檜山(8時25分)、登り所要時間:1時間20分
山頂滞在時間:30分
黒檜山(8時55分)→駒ヶ岳(9時25分)→おのこ駐車場(9時55分到着)、下り所要時間:1時間00分

大洞駐車場(10時05分)→地蔵岳(10時55分)、登り所要時間:50分
山頂滞在時間:45分
地蔵岳(11時40分)→八丁峠→大洞駐車場(12時10分到着)、下り所要時間:30分
全行程:5時間05分

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