Practice Makes Perfect/榛名山
覗岩から見た榛名富士(標高1,390M)と榛名湖

県立榛名ビジターセンター駐車場から登山開始
榛名富士登山口
まだ営業前のロープウェイ山頂駅
山頂に建つ榛名富士山神社
榛名富士山神社から見た相馬山
榛名富士を降りると榛名湖温泉だ。帰りに寄ろう
次のターゲット烏帽子ヶ岳 烏帽子ヶ岳登山口
熊笹の生い茂る山頂 烏帽子ヶ岳山頂(標高1,363M)

烏帽子ヶ岳の山頂から少し先にある展望所から眺めた榛名富士と榛名湖

榛名湖畔に降り、車道を歩く
高崎市林間学校榛名湖荘と、右に覗岩
覗岩(標高1,251M)
榛名湖荘の駐車場の上が掃部ヶ岳と覗岩の登山口

覗岩から眺める榛名湖
掃部ヶ岳山頂まで続く骸骨階段
榛名山最高所の掃部ヶ岳山頂(標高1,449M)

榛名山(榛名富士〜烏帽子ヶ岳〜掃部ヶ岳)

2017年10月26日(木曜日)

 モータリゼーションの到来とともに山岳観光道路が急速に開発され、上毛三山の赤城、榛名、妙義にも山頂直下まで有料道路が乗り入れ、観光施設が続々と建設された。景気が良くなり、マイカーを手にした庶民が猫も杓子もこうした山頂観光を楽しんだが、バブル経済崩壊後はこうした華やかさは急速に衰退していった。
 私もクルマの免許を取り立ての頃、中古車を駆って榛名湖を訪れ、馬車に乗ったり、ロープウェイで榛名富士にも登ったが、以降30年訪れていない。しかし久しぶりに見たその景色は、想像していたのとは違い、昔とそう変わっていなかったのは意外だった。
 登山を開始した早朝こそ誰もいなかったものの、下山後の意外な賑わいに瞠目した。紅葉がちょうど好い晴天ということもあってか、平日にも拘(かかわ)らず、大勢のファミリーやバイクが榛名湖畔での観光を楽しんでおり、衰退の陰りは微塵も感じられなかった。
 榛名湖へのメイントラフィックである元有料道路の中腹には観光の中核を担う伊香保温泉があり、この道が漫画『頭文字D(イニシャル・ディー)』の秋名山コースのモデルにもなっている所為かどうか、依然人気は衰えないようだった。昨今衰退した地方観光経済を支えているのは、やたら大声で喚きまくる中国人団体客というケースが定番だが、ここ榛名湖に関してはそうした印象は感じられなかった。

 榛名山のシンボルである榛名富士と、カルデラ湖である榛名湖を囲繞する外輪山のうち、最高峰の掃部ヶ岳(かもんがたけ)と、湖を俯瞰できる烏帽子ヶ岳を選出し、これら三山を結びながら榛名湖周遊コースを歩くことにした。クルマを榛名富士の麓のビジターセンターの広い駐車場に止め、登山を開始する。
 ロープウェイの営業は9時からなので、2時間前の駐車場には誰もいない。駐車場から榛名富士山頂までの比高は僅か260メートルに過ぎないので、36分で山頂駅に到着した。
 駅の周辺は広場になっており、遠く真っ白になった浅間山が望め、何より外輪山の相馬山が鋭い盛り上がりを間近に見せている。
 駅広場から階段を少し登ると富士山神社があり、参拝を済ませて、すぐに反対側を下ると、湖畔の榛名湖温泉に出て榛名富士は終了する。コンクリートの立派な建物の横を通り過ぎ、小さな橋を渡ると、右手に小さな赤い鳥居が立ち並ぶ烏帽子ヶ岳の登山口だ。
 湖畔から比高僅か273メートルの山頂に42分で到着した。足許を熊笹に蔽われた山頂からは何の展望もないが、少し下ると、正面に榛名富士、眼下に榛名湖、右手に掃部ヶ岳が雄大に望めるポイントにでる。但し切り立った狭い断崖の上なので、転落しないよう注意が必要だ。
 再び榛名湖畔まで下山し、次の目的地である掃部ヶ岳の登山口まで周遊道路を歩く。

 ここまで誰にも会わなかったが、さすが『榛名山の山頂』には登る人も多いらしく、この掃部ヶ岳の往復だけで30人ほどのハイカーとすれ違った。ほぼ全員老人である。
 途中に覗岩という榛名湖越しに榛名富士が雄大に臨めるポイントがある。足許は切れ落ちた断崖なので、墜落しないよう注意が必要だ。覗岩はビジターセンターからも良く見える櫛形の岩山で、登山口から僅か18分で登ることができる。
 榛名山は山頂湖までクルマで上れるため、外輪山の登山はもはや登山と呼べるほどのものでもないが、覗岩から掃部ヶ岳山頂まではちょっとした悪戯のような難関が仕掛けてある。滑りやすい登山道に親切を以って付けたであろう丸太の階段が延々と続いているのだが、踏面(ふみづら)の土が雨で流れ出てしまい、段鼻(だんばな)の丸太だけが取り残された、骨組みだけになった階段というか、骸骨のような階段が延々と続いているのである。踏面に土があってこそ階段と呼べるわけで、陸上競技のハードルのように丸太を跨ぐか昇るかしなければならない仕掛けに、この日すれ違った、あるいは追い越した中高年ハイカーは甚だ難儀している風だった。私は丸太の上から丸太の上へ渡ったが、足裏の接点が小さいため、バランスを保つには足首に過度の緊張を強いられる。スキーでは外力(重力、遠心力、雪面抵抗の合成ベクトル)に対して鉛直に立つことが求められるので、このようなシチュエーションでも体幹トレーニングの一環と思えば有意義に楽しむことができた。スキーや登山を続けていると、靴底が片減りしなくなるのもそうした恩恵によるものだろう。

 山頂は大して広くもないが、大勢の年寄りが入れ替わり立ち代わり写真を撮っていて鬱陶しかった。隅で昼食を摂っていても、蹴飛ばされそうな勢いではしゃぎまわっているので、私に躓いて転んで怪我でもされたら面倒なので、そそくさと退散した。
 湖畔の桟橋に並んだスワンボートと優美に構える榛名富士を眺めながら歩いていると、若かりし日に訪れた記憶が懐かしく思い出された。

●登山データ
2017年10月26日(木曜日)
県立榛名ビジターセンター駐車場(標高1,090M)→榛名富士(標高1,350M)、標高差260M
榛名湖畔(標高1,090M)→烏帽子ヶ岳(標高1,363M)、標高差273M
榛名湖畔(標高1,090M)→掃部ヶ岳(標高1,449M)、標高差359M
三山累積標高差892M

県立榛名ビジターセンター駐車場(7時12分)→山頂駅(7時48分/休憩12分)→榛名富士(8時00分)、登り所要時間:48分
榛名富士(8時00分)→榛名湖温泉ゆうすげ(8時26分)、下り所要時間:26分
榛名湖温泉ゆうすげ(8時26分)→烏帽子ヶ岳(9時08分)、登り所要時間:42分
山頂休憩:9分
烏帽子ヶ岳(9時17分)→榛名湖畔(9時46分)、下り所要時間:29分
榛名湖畔(9時46分)→掃部ヶ岳登山口(10時04分)、所要時間:18分
掃部ヶ岳登山口(10時04分)→覗岩(10時22分/休憩5分)→掃部ヶ岳(11時02分)、登り所要時間:58分
山頂休憩:9分
掃部ヶ岳(11時11分)→掃部ヶ岳登山口(11時47分)、下り所要時間:36分
掃部ヶ岳登山口(11時47分)→県立榛名ビジターセンター駐車場(12時21分)、所要時間:34分
全行程:5時間09分

登山目次
Home
Copyright © 1996- Chishima Osamu. All Rights Reserved.