Practice Makes Perfect/苗場山
九合目の坪場。苗場山の山頂は空中田園さながらの湿原が広がっている

三合目の小赤沢駐車場
小赤沢コース入り口。登山届を出して出発
一合毎に標柱が立っている
三合目から八合目までぬかるんでいて滑りやすい
大した岩場ではないが濡れているので非常に滑りやすい
濡れた石の上を歩くのは何とも足許が滑り易く危険だ
八合目の少し上まで濡れた登山道が続く 樹林帯を突破してようやく道も乾いてきた
木道がなだらかに続く 木道が一本しかないところはお互い上手く譲り合いたいものだが、何も考えずに突っ込んでくる輩も多い
九合目
再び歩き難い濡れた岩場に入る
山頂までもう少し
山頂に建つ苗場自然体験交流センター

空中田んぼに点在する池塘

苗場山山頂(標高2,145M)
かぐらスキー場へ続く祓川コース
登山口にある小赤沢温泉・楽養館に立ち寄った

苗場山(小赤沢コース)

2017年9月26日(火曜日)

 登山を始めた当初は、スキーのオフトレとして限界ギリギリの負荷の掛かるコース設定をしていたため、苗場山へ登るなら苗場スキー場からクルマで入った赤湯温泉ルート以外にない決めていた。歩いてしか行けない秘湯に長時間歩いた下山後に入るというのが、当時の私としてはステータスだった。
 2008年9月、関東は晴れていたが、三国峠を越えてスキー場に着くと雨だった。赤湯林道の終点まで行って様子を見たが、雨脚は強まる一方で、やむなく断念した。
 2016年6月、再び苗場山に向かった。
 残念なことに赤湯林道は2011年の台風で土砂崩落してしまい、5年経ったこの日現在でも復旧に至らず終点までクルマで入れない。日帰り行程がきつくなったことから、かぐらスキー場の和田小屋を起点とする祓川(はらいがわ)コースに変更したが、関越トンネルを抜けてスキー場に着くとまたもや雨だった。道の駅でしばらく様子を見たが、雨脚は強まる一方で虚しく断念した。

 今回は三度目の挑戦である。
 仕事の都合で、もはや長時間登山に耐えられない体になったため、新潟側からの長距離ルートを諦め、最短ルートである長野県栄村の秋山郷・小赤沢コースを設定した。もはやスキーのオフトレでも何でもない、ただの運動不足解消の妥協案である。ただ、この登山口に小赤沢温泉があることは魅力だった。軽く歩いて、のんびり秘湯に浸かって帰る、それが現状を鑑みた新たなるステータスに変わりつつあった。

 新潟側からのアプローチとなる関越道月夜野インターと湯沢インターを素通りし、塩沢石打インターから十日町を経由して津南町に入る。見通しの悪いきついカーブが連続する心細くなるような国道405号線を上って行くと、秘境・秋山郷である。長野県でありながら実質メイントラフィックは新潟側となり、そういうところにありがちな行政からの取りこぼしというか、道路整備の立ち遅れが目立つ(三桁国道は各都道府県管理)。国道でありながら普通車同士でもすれ違えない狭い道が続いたかと思えば、突如集落が現れ、それが断続的に続いた先に忽然(こつぜん)と秋山郷の中心集落が開けている。秘境というより隠れ里と言った方が相応しい山深さである。
 苗場山登山口の看板を見て左折して、国道よりさらに狭い道を上って行くと、もはやカーナビには道すら表示されない。ひとしきり走って三合目の駐車場に着く。
 駐車場は意外に広くトイレもある。家を5時に出発して8時に到着した。苗場スキー場からぐるりと回りこんだ苗場山の反対側の山懐である。

 車内で朝食を済ませ、8時30分に登山を開始した。
 登山道の勾配は大したことないが、とにかく泥濘と大きな濡れた石が三合目から八合目までびっしり続き、非常に滑りやすく歩き難い。大きな石がゴロゴロした登山道というのは、ドライなら何の問題もないが、濡れていると石の表面の僅かな傾斜でもグリップはまったく得られない。私はバランスと背筋強化のため、もう何年もストックを持ち歩かないが、不覚にも濡れた石に足を滑らせ、後ろ向きに高さ1メートルほどから滑落してしまった。
 スキーヤーなので転倒処理はお手の物である。落下する虚空で猫のように素早く上体をひねり、後頭部からの墜落は防いだが、尻までは反転しきれなかった。大きな石でしたたかに尻を打ってしまった。
 しばらく呻(うめ)いたが骨折は免れたようなので、尻をさすって登山を続けた。

 八合目を過ぎると、突如樹林帯を突破し、広い草原とそれを穿つ木道の続く山頂部に出た。
 苗場山は遠くからでもそれと分かる長く平らな山頂部を持っているが、八合五勺辺りから山頂まで、山名の由来ともなった空中田園さながらの広大な湿原が広がっている。九合目からまた湿った森林に入るが、すぐに脱して山頂に到着した。
 山頂標識のある場所は広い乾燥地である。山頂部を縦横に穿つ木道にも所々休憩スペースが設けられていて、この日山頂部にいた十人ほどのハイカーも、各々思い思いの場所で昼食を楽しんでいた。私もベンチの片隅に腰を下ろして弁当を食べた。
 目の前に広がる空中田んぼと、下界の山並みの片隅に苗場スキー場のある筍山のアンテナを確認できた。

 下山時にまたもや濡れた石に滑って尻餅をついてしまい、さすがに一日二度同じ個所への打撃はことのほか効いた。尻が真っ二つに割れたかと思うほどの激痛に耐え、よろよろと下山した。クルマで衣服を改め、小赤沢温泉楽養館でのんびりと尻を癒してから帰宅の途についた。

●登山データ
2017年9月26日(火曜日)
小赤沢三合目駐車場(標高1,306M)→苗場山(標高2,145M)、標高差839M

小赤沢三合目駐車場(8時30分出発)→四合目(8時53分)六合目(9時42分)→七合目(9時58分)→八合目(10時14分)→九合目(10時30分)→苗場山山頂(11時00分到着)、登り所要時間:2時間30分
山頂滞在時間:40分
苗場山山頂(11時40分)→八合目(12時08分)→七合目(12時18分)→六合目(12時30分)→五合目(12時52分)→四合目(13時11分)→小赤沢三合目駐車場(13時30分到着)、下り所要時間:1時間50分
全行程:5時間00分

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