Practice Makes Perfect/御堂山(じじ岩ばば岩)
登山者用の駐車場はないため、少し離れたバス停の近くの観光案内看板の前に停める
100Mほど歩いて国道わきの西牧関所跡横を入る
国道から70Mほどで林道入り口だが、ユンボで塞がれている
御堂山入口の標識。ユンボの横をすり抜けて入る
20分歩くと林道終点。ここから山道となる
昨日の大雨で滝の水量が多い。滝の右側をフィックスロープで登るがかなり滑る
じじ岩ばば岩分岐。まずはじじ岩ばば岩へ向かう 突如視界に入るじじ岩ばば岩に驚嘆する

左がばば岩、右がじじ岩。実際目の当たりにすると、想像以上に巨大で、しばし呆然となる

硬質化した巨人の様なばば岩 チンコが勃起したまま硬質化したじじ岩
狭いリッジを渡ってばば岩の袂まで行けるが、到底登れない じじ岩の袂にも行けるがとても登れない

妖怪百目の様なたんす岩。昨日の雨で非常に滑るので登れない
一応訪れた御堂山山頂(標高878M)

御堂山(じじ岩ばば岩)

2016年8月4日(木曜日)

 上信道を下仁田インターで降り、国道254号線を佐久方面に向かうと、和美峠への分岐の少し手前に西牧関所跡がある。ここを登ると本日の目的地・御堂山(みどうやま/標高878M)である。登山者用の駐車場はないので、和美峠入口のバス停の観光案内看板の前にクルマを停める。
 この駐車スペースのすぐ下を覗くと鏑(かぶら)川が流れているが、前日の豪雨のため轟轟と渦巻く泥流と化しており、クルマの足許の川岸が今にも抉られそうな勢いだった。これから向かう登山道もそうだろうし、この日の目的でもある奇岩・じじ岩ばば岩も、さぞ足許が滑るだろうなということは容易に想像できた。
 この年の関東の梅雨明けは平年より遅い7月28日だったが、その後も『梅雨明け十日』とはいかず、依然不安定な状態が続いている。

 駐車スペースから100メートルほど歩いて関所の脇の道を入り、70メートルほどで御堂山登山口の標識のある林道の入り口に着く。以前は林道の終点までマイカーが入れたらしいが、最近のネット情報では入り口に猪避けの電気柵が設けられているため、クルマはバス停付近に置くのが賢明らしい。この日は電気柵は外されていたが、代わりにユンボが道幅いっぱいにデンと置かれていた。これでは流石にクルマは入れない。人が通るのがやっとである。
 林道を20分ほど歩くと終点となり登山道になる。石がゴロゴロしている歩き難い道で、草木が左右から頭上に覆い被さり、屈んでも尚、リュックが木に引っ掛かるので這うように歩かねばならない。
 林道終点から20分ほどで滝に着いた。落差は5メートルほどで、前日の雨のため水量が多く見栄えがある。滝の右横の岩にロープがぶら下がっているので、それを掴んで登るのだが、岩は非常に滑る。
 滝から15分で御堂山山頂とじじ岩ばば岩分岐の稜線に到着した。

 取りあえず、この日の目的は山頂よりもじじ岩ばば岩である。山頂に背を向け分岐から尾根筋を歩くが、樹木が鬱蒼としていて一向にその奇岩の気配すら見えてこない。
 突如木々の間に空を蔽うような巨大な影が立ちはだかり、これがそうかと一気に昂揚するが、どうやらまだ違うようだ。一旦巨岩の根元の右側を巻くように降りると、岩の上に申し訳程度に張り付いた土は脆く崩落しやすいうえ非常に滑る。
 左を見上げれば大きな岩の壁で、迂回した道から再び岩の袂まで登ると、突然ふたつの岩塔が視界に飛び込んで来た。鋭く天空を突く2本の槍を思わせるその異形は、写真で見るより圧倒的な大きさで、しばし呆然とする。

 何だこれ?
 しばらくは未知との遭遇といった気分にさせられる。行き止まりの展望台まで回り込むと、左のばば岩は人型にも見え、漫画『進撃の巨人』に登場する硬質化した巨人を彷彿させる。右のじじ岩は人型とまでいかないが、頭があり、胴体の下の方には小さな突起物がある。その反り具合から勃起した男根の様でもあり、勃起したまま硬質化したかと思うと何とも滑稽で物悲しい。
 ふたつの岩の展望台となっているのが迂回してきたタンス岩である。岩肌にいくつも開いた穴をタンスの引き出しに見立てているのだろうが、タンスというより妖怪百目と言った方がイメージが近い。
 ばば岩じじ岩どちらもすぐ袂まで行けるが、特にばば岩は幅30センチ、長さ3メートルのナイフリッジ(刃の上を歩く様な狭い通路)を渡らねばならず、下を覗き込むと高さは50メートルほどもあり、濡れていてひどく滑るので、墜落死のリスクを鑑み、屈辱ではあるが、拷問具の三角木馬に跨るように股漕ぎで近づいた。
 袂まで行っても到底これ以上登れないので、見上げるだけ見上げて、敗北の股漕ぎで引き返し、じじ岩の袂にも行ってみる。これも登れない。せめてタンス岩ならとも思ったが、非常に滑るのでこれも諦めた。
 分岐まで引き返し、御堂山山頂へ向かう。山頂は暗く鬱蒼として最早どうでもいいのだが、15分休憩して元来た道を引き返した。

 クルマに戻って靴下を履き替えようとしたら両足が血まみれになっていた。ギョッとして靴下を脱いでみると、アキレス腱のところに黒いアメーバ状のものがへばりついていた。血だった。血が固まり切らずゼリー状になっていた。両足とも同様だった。
 痛みはまったくなく、まったく気付かなかったが、これは山蛭の仕業である。その姿は既になく、ゼリーを剥がすと左足にひとつ、右足には二つ穴が開いていた。前回の蜂刺されに続いての遭難である。
 拭いても拭いても血が止まらない。山蛭は吸血の際、血液凝固を阻害するヒルジンと、血管を拡張するヒスタミンを注入するという。ポイズンリムーバーでこれらを吸引除去すれば早く止血できるそうだが、生憎この時この知識を持ち合わせていなかった。
 山蛭は人の歩く振動や体温を感知して足許から取憑くとされ、木の上から落ちてくるというのは都市伝説らしい。雨上がりのビシャビシャした登山道は恰好の山蛭コースだった訳である。藪歩きということで、ダニ避けのトマトスプレーは掛けたのだが、蛭にはまったく効果がなかった。バンドエイドで止血し、止まったのは夜になってからだった。しばらくは痛みも痒みもなかったが、一週間経つと突如痒くなり、遅ればせながらステロイド剤を塗った。

●登山データ
2016年8月4日(木曜日)
西牧関所跡付近の駐車スペース(標高343M)→御堂山(標高878M)、標高差535M

西牧関所跡付近の駐車スペース(8時05分出発)→林道終点(8時28分)→滝(8時51分)→じじ岩ばば岩分岐(9時06分)→たんす岩(9時18分/休憩15分)→じじ岩ばば岩分岐(9時51分/休憩10分)→御堂山(10時15分)、登り所要時間:2時間10分
山頂滞在時間:15分
御堂山(10時30分)→じじ岩ばば岩分岐(10時42分)→滝(10時50分)→林道終点(11時07分)→西牧関所跡付近の駐車スペース(11時25分)、下り所要時間:55分
全行程:3時間20分

登山目次
Home
Copyright © 1996- Chishima Osamu. All Rights Reserved.