Practice Makes Perfect/燧ケ岳(大清水ルート日帰り)
燧ヶ岳(ひうちがたけ)最高峰の柴安煤iしばやすぐら/標高2,356M)を俎煤iまないたぐら)から臨む

大清水登山口の有料駐車場(普通車500円)
大清水登山口(標高1,180M)
ゲートを越えると一ノ瀬まで長い林道
復路は非常に長く感じ、辛い
一ノ瀬から登山道に入る。入り口には下界の種子を持ち込まないよう、靴底の泥落しマットが設置されている
三平峠(標高1,762M)。ここから尾瀬沼まで降り
尾瀬沼山荘。木道は右側通行となっている
尾瀬沼と、これから登る燧ヶ岳 木道は右側通行が尾瀬の基本ルール
尾瀬最古の山小屋・長蔵小屋 湿原と別れ、燧ヶ岳登山道に取り付く
勾配の緩い道が延々と続く
やがて勾配が増してくると、粘土質の滑りやすい道に変わる 雪渓越しに俎狽ェ見えて来る
ミノブチ岳から尾瀬沼と日光連山を臨む
ミノブチ岳から俎狽ヨ向かう
ナデッ窪分岐。残雪期は通行止め 急傾斜の雪面をカモシカが行く
ミノブチ岳と尾瀬沼
俎狽目指す。柴安狽ヘ未だ見えない

俎博R頂までもう少し
俎博R頂(標高2,346M)
次は最高峰の柴安狽ノ向かう
柴安博R頂直下の登山道に立ちはだかる残雪
燧ヶ岳(柴安煤j山頂

燧ヶ岳(ひうちがたけ/大清水ルート日帰り)

2012年6月27日(水曜日)

 夜中の3時に家を出て関越自動車道を北上した。
 沼田インターで降りて国道120号線を左折し尾瀬方面へ向かう。スキーシーズンには通い慣れたいつもの道である。
 冬季にはネックとなる椎坂峠はトンネル工事が進行中だった。これが開通すれば尾瀬のスキー場に行きやすくなる半面、どこでもそうなように峠のドライブインが衰退するだろうことも容易に想像できた。
 岩鞍スキー場よりも奥に位置する戸倉スキー場に行ったのは1995年1月の一度きりで、以来ここまで入ってきたのは17年ぶりとなる。

 戸倉は尾瀬の登山口である鳩待峠の入り口にあたる。ここからは車両規制が布かれているため一般車は入れず、戸倉にクルマを置いてバスに乗り換えねばならない。戸倉スキー場は登山シーズンにはその駐車場にも供されている。
 尾瀬と言えば一般的には尾瀬ヶ原のことを指し、関東首都圏の多くのハイカーは戸倉からバスに乗り換えて鳩待峠へと向かう。登山が目的の場合は尾瀬のふたつの主峰である至仏山(しぶつさん)か燧ヶ岳がターゲットになるわけだが、至仏山への登山口はやはり鳩待峠になる。今回は燧ヶ岳(標高2,356M)に登るため、戸倉を素通りし、更に奥の大清水を目指してクルマを走らせた。

 2007年に指定された尾瀬国立公園は、群馬・福島・新潟・栃木の四県に跨っているが、その核心部分は群馬・福島県境に集中しており、登山道も実質この二県にしか存在しない。
 燧ヶ岳は丸ごと福島県に属しており、登山行程の効率から言えば福島側から入るのが賢明なのだが、埼玉在住の私としては、日帰り行程が組めさえすればいいので、群馬側の大清水を選択した。

 車両規制のかかった鳩待峠と違い、大清水にはクルマで入ることが出来る。戸倉を通り過ぎて道路の行き止まりまで行くと、そこが大清水である。駐車場は有料で、普通車で500円だが、戸倉に比べれば半額である。朝は駐車場係はいないので、料金は帰りに支払う。
 朝5時ちょっと過ぎに到着し、軽く車内で朝食を済ませ、5時半に登山を開始した。
 時期的にミズバショウは終わっており、ニッコウキスゲには若干早い。おまけに関東では梅雨が明けておらず、いわゆる閑散期にあたる。平日とあってかクルマもまばらで登山者もほとんどいない。
 登山届を提出しようとしたがポストが見当たらなかった。ポストらしきものには東電のリーフレットが入っていたので、ひとつもらって林道のゲートに入った。
 尾瀬の群馬側は、国立公園ながら概ね東京電力の所有地であり、木道の敷設等の維持管理も東電職員によって行われている。昔、水力発電所の建設計画があってのことだが、中止となった現在でも依然東電の私有地であり、東電の厚意によって一般開放されているわけで、昨年(2011年東日本大震災)の原発事故云々は措いても、そういったことを踏まえた上で、ルールとマナーを守って立ち入りたい。

 しばらくはだるい林道歩きが続く。砂利の舗装に何となく靴がずれ、何となくロスを感じる。関係者のクルマが置かれている一ノ瀬休憩所を過ぎて橋を渡ると、砂利の林道から別れ、ようやく登山道らしくなってくる。この登山道入り口には靴底の泥落しマットが敷かれているので、下界の種子を持ち込まないよう念入りに泥を落とさねばならない。
 この辺りから尾瀬名物の木道が出てくる。
 木道は右側通行が基本だと東電のホームページや尾瀬保護財団のサイトには明記されているが、登山道入り口に用意されている東電のリーフレットには何故か触れられていない。
 往路は人がほとんどいなかったので問題なかったが、帰路にはこのルールを無視した団体客が大勢いて辟易した。そのウザさも尾瀬らしいと言えばそれまでだが、敢えてリーフレットに書かない理由とは何だろうか。

 三平峠までが登りで、越えれば下りである。峠を越えるとすぐに尾瀬沼山荘に到着する。ここには入山者の赤外線カウンターが設置されており、木道を右側通行してカウントするよう案内されていた。
 尾瀬の山小屋には公衆トイレが設置されており、100円のチップ制になっているので、お金を払って用を供した。

 前回の白砂山ではガスコンロを持ち込み、予想外に疲労を大きくさせたが、今回は行程の長さからコンロを割愛してのタイム計測となった。ここまでの登りは予定を上回るペースで来ているが、それが妥当かオーバーペースかはこの段階では分からない。
 尾瀬沼の畔(ほとり)に出るとミズバショウは少しは咲いているものの、やはり時季を終えた観がある。ここに来てようやくその姿を露にした目指す燧ヶ岳に気分も昂揚する。今日は天気が穏やかに安定している絶好の登山日和だが、ここから見る山頂までの道程はまだまだ時間が掛かりそうだった。

 尾瀬最古の山小屋である長蔵小屋を過ぎ、木道を外れて長英新道へ入る。
 ここからは湿原ではなく山体と定義されているのか木道が無いが、随所に泥濘があり靴がめり込む。因みに長英新道とは、この道の開拓者である長蔵小屋の二代目当主の名を冠したものである。
 長蔵小屋に関しては、歴代当主が尾瀬開拓と保護に尽力した反面、21世紀になって大量のゴミを不法投棄していた事実が発覚し話題にもなった。

 長英新道は勾配が緩く、長い。つまり延々とダラダラ歩かねばならない。
 一時間ほどダラダラ歩き、それが終わると今度は滑りやすい粘土質の急登区間に変わる。これはなかなか辛い。非常に滑るので下りは特に注意が要るだろう。
 かれこれ出発から無休憩で四時間歩いている。いい加減疲れたし、ちょうど良い木陰を見つけたので、思わず座り込んで休憩を容れた。

 燧ヶ岳は福島県南端に位置するが、東北で最も標高の高い山である。北海道にもこれ以上高い山は無い。
 火山に分類され、山頂部が五つの小さなピークから形成されていて、最も高いのが柴安煤iしばやすぐら)、次いで俎煤iまないたぐら)となっている。五つすべてに登山道があるわけではなく、実質この二峰以外はよくわからない。

 樹林の中の粘土質の急登に階段が入り交じり、その階段を登りきると、唐突にひらけた場所に飛び出す。突如森林限界を突破した恰好で、眼下には尾瀬沼を一望でき、後ろを見上げれば山頂かと見紛う俎狽ェ静かに佇んでいる。
 特に何の標示もないが、地図を確認すると、どうやらこの場所がミノブチ岳のようだ。地図には載っていないが、俎狽ヨと続く登山道の左側の山が御池岳という溶岩ドームらしい。ミノブチ岳から少し登ると尾瀬沼に直降できるナデッ窪の分岐がある。帰路はここを降りる予定でいたのだが、通行止めのロープが張られていたのは予想外だった。

『ナデ』とは雪崩のことであり、つまり雪崩が集中する谷津の急斜面である。残雪季は危険なので通行止めとなっていたのだが、迂闊にもこの情報はつかんでいなかった。アイゼンもピッケルも持っていない。
 しかし例え装備があったにせよ、立ち入り禁止のロープをくぐることは躊躇われた。ここから山頂へ到る登山道にも僅かだが残雪の急斜面があり、それを登ってみた感じから、急斜面の降下はやはり危険と判断し諦めた。

 10時50分、柴安狽ノ登頂。出発から5時間20分を要したが、地図上参考タイムの6時間40分を1時間20分短縮できたので、結果としてはまずまずだった。
 40分の昼食休憩をとり、登って来た長英新道を延々と下った。一ノ瀬からの林道は永遠かと思えるほど長く、気が遠くなるほど辛かった。関係者と思われるクルマが埃を巻き上げながら背後から追い抜いていった。
燧ヶ岳山頂(柴安煤jから尾瀬ヶ原と至仏山を臨む

ミツガシワ ハクサンチドリ リュウキンカ
オオバタチツボスミレ ラショウモンカズラ ミズバショウ
ワタスゲ タテヤマリンドウ サンカヨウ
コミヤマカタバミ ツバメオモト キヌガサソウ

●登山データ
2012年6月27日(水曜日)
大清水駐車場(標高1,192M)→燧ケ岳(柴安煤^標高2,356M)、標高差1,164M

大清水駐車場(5時30分出発)→一ノ瀬(6時15分)→三平峠(7時00分)→尾瀬沼山荘(7時15分)→長蔵小屋(7時35分)→長英新道(途中休憩10分)→ミノブチ岳(10時00分)→俎煤i10時30分/休憩5分)→柴安煤i10時50分)、登り所要時間:5時間20分
山頂滞在時間:40分
柴安煤i11時30分)→俎煤i11時40分)→ミノブチ岳(11時55分)→長蔵小屋(13時25分)→尾瀬沼山荘(13時35分)→三平峠(13時50分)→一ノ瀬(14時30分)→大清水駐車場(15時15分)、下り所要時間:3時間45分
全行程:9時間45分

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