Practice Makes Perfect/白砂山・八間山
野反湖ダムサイドの駐車場
白砂山登山口
地蔵峠は一見峠らしくない分岐点
シラビソ尾根から堂岩山方面を臨む
標高1,800M付近から登山道は雪に埋もれている 結構な残雪量の雪渓は一部コースが不明瞭だ
堂岩山山頂(標高2,051M)も雪に埋もれていた 堂岩山山頂から白砂山への登山道は不明瞭で、道迷いに陥る惧れがあるので要注意
白砂山山頂にはガスが懸かっている
どうにか堂岩山分岐に出る
八十三山 佐武流山
上信越国境に跨る白砂山(標高2,140M)
山頂までもう少し
白砂山山頂
白砂山山頂から堂岩山と八十三山を振り返る
カップ麺とコーヒーでしばし休憩
八間山へ向かう尾根道から白砂山を振り返る。山頂のガスは霽れない

八間山(標高1,935M)へと続く縦走路
八間山山頂
池の峠から野反湖を見渡す

白砂山・八間山

2012年5月30日(水曜日)

 5月も下旬となりスキーシーズンが終了すると、毎年何らかのオフトレをしなければならない。12年間続けたインラインスケートをやめ、夏山登山を始めて6年目となるが、オフトレとしての効果は足腰と心肺機能の鍛錬くらいにはなるだろうという程度である。
 これまでは日帰り登山とはいえ、自宅を夜中の2時、3時に出発し、朝6時から登山を開始し、10時間近く歩いて次ぐ日は仕事というハードスケジュールに身をやつしてきたが、昨年仕事の環境が大きく変わって以来、これも辛いものになってきた。いや、もう若くないということかもしれない。
 睡眠時間確保の都合上、せいぜい自宅を出発するのは朝5時くらいにしておきたい。幸いこの日の天気予報は一日安定した晴れとのことなので、少々時間が遅くとも大丈夫だろうと多寡をくくった。もし天候が崩れるようなら途中から引き返せばいいだけのことである。

 関越道・渋川インターを降り、国道145号線を草津方面に向かう。八ッ場(やんば)ダムの工事を眺めつつ、途中から旧六合(くに)村(現中之条町)の国道406号線を白砂川に沿って遡上すると、国道の行き止まりである野反湖(のぞりこ)に辿りつく。
 野反湖は水力発電用のダム湖である。
 通常、ダムというのは川の上流に造るものなので、川の麓から遡って行く過程でその提体を見ることが出来る。そうした先入観を持っていると、当然あるはずの野反ダムを見ることなく、野反湖に着いてしまう奇怪さに、しばし呆然とするだろう。通常なら川の下流側を向いて建てられるはずのダムが、ここではなんと上流側に建っているのである。
 うむ、言い方が意味不明である。そんな理屈はありえないが、感覚的にはそう見えるのである。
 野反湖はそっくり丸ごと群馬県にあるのだが、堤体は山の反対の長野県側に向かって建てられており、ダムから放流された水は県境を跨(また)いで長野側に放流されるのである。つまり野反湖は群馬側が上流で、長野側が下流となり、群馬の他の河川がすべて利根川に集約されて太平洋に行き着くのとは逆に、野反湖から発した水は、長野から新潟を経て信濃川に合流し、日本海へと達するのである。そのことが、群馬側から川沿いに遡上した時に変に感じるのである。

 ともかく、シーズン一発目の足慣らしとしては、比較的楽な登山が求められたわけで、その対象となったのが今回の白砂山である。
 野反湖畔の標高が既に1,530メートルなので、2,140メートルの白砂山との標高差は、たった610メートルに過ぎない。コースもなだらかで、現状の自分の実力を量るには適当な山だろう。
 平日のためか、朝8時でもダムサイドの駐車場には誰もいない。野反湖周辺は高山植物の宝庫とかで、初夏には訪れる人も多いらしいが、この時点ではまだ早いため人影はない。
 駐車場から地蔵峠に向けて少し登ると、いきなり川の渡渉点が現れる。ここに架かっている木の橋が真っ二つに折れていた。川に落ちないよう注意しながら渡ると、今度は登山道の法面(のりめん)が崩れている。登山道は無残に押し流されていた。
 う〜む。
 これは案外注意して掛からねばならないようだ。おそらく山開き前なのだろうか、この先も荒れた状態を想定せねばならなくなった。
 しばらく登ると、標高1,800メートルあたりから登山道に残雪が現れた。このコースは沢コースなので、ある程度の残雪は無論予想していた。
 これまで毎年この時期には、大事をとってアイゼンとピッケルを携行するのだが、二千メートル級の山では過去使った例(ためし)が無かったため、今回は多寡をくくって持ってこなかった。持っているのはストックのみである。
 結果から言うとアイゼンなしでも登れたのだが、今回は明らかに使った方がいいくらいの残雪量があった。
 2012年の冬は、湯沢や妙高では猛烈な大雪に見舞われたが、水上や草津あたりは、それほどでもないというのが私の認識だった。そのこともあってアイゼンの持参を怠ったのだが、白砂山の沢コースには予想を超える積雪量があったのである。しかも距離が意外と長かった。アイゼンなしでは靴が僅かにずれるため、その分ロスになってしまう。今回は山を嘗めていた代償として今後に活かしたい。

 堂岩山の山頂は雪に埋もれていた。
 ここまでは、雪で登山道が分からなくとも、とにかく登ればよかった。しかし、ここから白砂山へ向かうには一度降りなければならず、その道が雪で分からなかった。
 かすかに踏み跡は残っているものの、それを辿ってゆくと、どうもおかしい。明らかに行き止まりの急斜面である。また登り返して別のルートを探す。白砂山は見えているので、しばらく辺りを徘徊し、何とか縦走路を見つけた。この間10分ほどロスしてしまった。

 白砂山へ着いたのが11時25分と想定通りだった。あまり迅(はや)くは歩けないだろうと、無理のない程度に設定した数値だった。この点、自身の能力の把握はずれていないのだが、ただ、その能力自体が堕ちていることが、今後の登山計画に影響するのが問題だった。

 リュックからガスコンロを取り出し、カップラーメンとホットコーヒーという豪奢な昼食に浸る。このセットは行程に余裕のある場合のみ持参している。行程がキツイ場合、荷は出来るだけ軽くしたいが、やはり暖かい食事は心身を甦生させる効果があり、一度使うと捨てがたいものがある。

 下山路は、登って来た道を引き返すのが最も早いのだが、アイゼンなしで長い雪渓を下るのをよしとしなかったのと、この日は天候が安定しているということもあって、一時間ほど余計に掛かるが八間山経由の尾根ルートを選択した。
 こちらは陽当たり良好の展望コースなので、雪は無いものの、小さいながらもアップダウンが繰り返し現れる。下るという先入観に囚われていたので、繰り返し現れる登りは結構辛かった。
 野反湖に向かって降り、池の峠という整備された遊歩道の丘をひとつ越えるとダムサイドの駐車場である。
 全行程は7時間45分と、地図上参考タイムを5分オーバーした。
シラネアオイ アズマシャクナゲ ムラサキヤシオツツジ

●登山データ
2012年5月30日(水曜日)
野反湖駐車場(標高1,530M)→白砂山(標高2,140M)、標高差610M

野反湖駐車場(8時00分出発)→堂岩山(10時05分/休憩10分)→白砂山山頂(11時25分)、登り所要時間:3時間25分
山頂滞在時間:45分
白砂山山頂(12時10分)→堂岩山分岐(13時00分)→八間山(14時25分/休憩10分)→池の峠(15時35分)→野反湖駐車場(15時45分)、下り所要時間:3時間35分
全行程:7時間45分

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