Practice Makes Perfect/越後駒ヶ岳(枝折峠ルート日帰り)
ニッコウキスゲ咲く越後駒ヶ岳山頂稜線

枝折峠(しおりとうげ)駐車場
奥只見湖から発生する朝靄(もや)
明神峠から駒ヶ岳へと続く稜線ルート。標高差は小さいが距離はかなり長い
道行山山頂(標高1,298M)。登山路から若干外れているが一応登ってみた
なかなか近付かない
前駒付近から駒ヶ岳
駒の小屋では冷たい水にありつける 山頂稜線の雪渓を下る団体さん
やっと辿りついた感のある駒ヶ岳山頂 駒ヶ岳山頂(標高2,003M)

山頂稜線から登って来た枝折峠尾根ルートを振り返る

トキが羽ばたく様に可憐なトキソウ(準絶滅危惧)
越後三山の一郭・八海山

越後駒ヶ岳(枝折峠ルート日帰り)

2011年7月18日(月曜日/海の日)

 越後駒ヶ岳、八海山、中ノ岳を指して越後三山という。
 標高は最高峰の中ノ岳でも2,085メートルに過ぎないが、名うての豪雪地帯とあって、猛暑の7月中旬でも尚、豊富な雪渓を残している。
 この年(2011年)の3月11日には、ここから程近い浦佐スキー場のリフトの上で東北沖太平洋地震(東日本大震災)を体験したが、それ以来の訪れとなった。
 家を夜中の2時半に出発し、関越道小出インターから奥只見シルバーラインを抜け、銀山平から枝折峠(しおりとうげ)に着いたのが5時20分だった。
 峠には三十台分の駐車場があるはずだが、そこに着く手前から既に多くのクルマが路駐していた。
 これまでなら平日登山をするところなのだが、仕事の都合上やむなく祝日の登山となった。午後の天候の崩れや気温の上昇の他、この駐車スペースの確保もあって5時20分到着となったわけだが、いささか甘かったか。
 しかしやがて、路上に屯(たむろ)する多くのカメラマンを見て、この車列が登山者のものではないことが分かった。どうやら日の出と共に発生する奥只見湖の朝靄(もや)を撮影するものらしい。駐車場に行ってみると、路上の混みとは裏腹に、駐車スペースは半分ほど空いていた。カメラマンという連中が、ちょっと離れた駐車場からすら、歩くことを厭う人種なのが幸いした。

 5時半に登山開始。
 左手に奥只見湖を俯瞰しつつ尾根を登る。前方遥か遠くには目的地である駒ヶ岳が聳立している。駒ヶ岳の標高2,003メートルに対して、枝折峠は1,065メートルなので、登る標高差は938メートルに過ぎず、数字だけ見ると大した山ではなさそうだが、このルートの問題点は尾根の長さにこそある。小さいアップダウンが繰り返され、ボディブローのダメージが蓄積していく嫌らしさがあり、この小さな攻撃の繰り返しが、下山時に至っては、登山者の精神を崩壊させるだけの力すら持っているのである。このタイプの山は、雲取山三峯ルート、谷川連峰縦走等で経験しており、その恐ろしさは身に沁みていた。

 アップダウンの途中に道行山(みちゆきやま)と小倉山という小ピークがあるが、ルートはこれらの山頂を通っていない。道行山には分岐の登山路があるが、小倉山のピークはよくわからない。続いてのチェックポイントである百草ノ池というのも確認できず、前駒というのもよくわからなかった。駒ノ小屋まで途中これといったポイントもなく、ひたすら辛い登山が続く。
 この日現在、四国に甚大な被害をもたらした猛烈な勢力の超大型台風6号が関東に低速接近しており、一昨日からの三連休はその影響で気温が急激に上昇していて、非常に苦しい。頭に巻いたタオルを絞ると汗が滝のように流れ落ちる。いったい既に何リットルの汗をかいたのか、全身衣服の乾いているところがない。衣服の濡れがリュックに伝わり、ウェストベルトに収納しているデジカメまでが濡れている。3リットル持参した水が、どんどんなくなっていく。

 駒ノ小屋で冷たい水を1リットル補給し、どうにか山頂に到着した。10時到着予定を15分短縮と、後半大きくバテた割には、まずまず予定通りだった。山頂直下で20メートルほど急な雪渓を登らねばならないが、携行してきたアイゼンやピッケルは不要だった。
 山頂から中ノ岳へ掛けての稜線はお花畑だった。豊富に残る雪渓を歩けたこともあり、この日の苦労もここで報われた気がする。それにここだけは涼しかった。

 下山に取り掛かると忽(たちま)ち気温が上昇する。山頂の天国とは相反して、下山路は地獄の労役だった。
 繰り返しのアップダウンが容赦なく心身を蝕む。降りても降りても現れる《登り》に精神の支柱が崩れかける。故障を抱える左膝にはサポーターを施してあるが、そうでない右膝の靭帯の方がフワフワと故障の警告を鳴らしている。
 過去の暑く苦しかった登山が、走馬灯のように頭をよぎった。その度にもうこれで登山はやめようと思ったが、それでもストックは使わなかった。携行はしているが、そういえばもう久しく使っていないし、いっそもう携行もやめようか。傍らの木にしがみついて膝の崩れ落ちるのを辛うじて堪え、苦悩の気力を振り絞り、怒濤の下山道を登った。

 駐車場に着いてみると、ペットボトルの水は0.7リットルほど残っていた。
 3リットル持参+1リットル山上補給−0.7リットル=3.3リットルの消費である。日帰りとしてはダントツ過去最高であり、これまでの一泊二日行程に匹敵する消費量だった。もし山上補給できなかったら脱水症状の危地に落ちたかもしれない。
山頂稜線の雪渓と駒の小屋
越後三山最高峰・中ノ岳へと続く稜線

ヒメシャガ ウラジロヨウラク タニウツギ
タテヤマリンドウ ミヤマコウゾリナ ハクサンフウロ

●登山データ
2011年7月18日(月曜日/海の日)
枝折峠駐車場(標高1,065M)→越後駒ヶ岳(標高2,003M)、標高差938M

枝折峠駐車場(5時30分出発)→明神峠(6時00分)→道行山(6時40分)→小倉山(7時20分)→百草ノ池(8時00分)→前駒(8時45分/休憩10分)→駒ノ小屋(9時15分/休憩10分)→越後駒ヶ岳山頂(9時45分到着)、登り所要時間:4時間15分
山頂滞在時間:45分
越後駒ヶ岳山頂(10時30分下山開始)→駒ノ小屋(10時45分)→百草ノ池(11時15分)→小倉山(11時50分)→道行山(12時25分)→明神峠(13時20分)→枝折峠駐車場(13時40分到着)、下り所要時間:3時間10分
全行程:8時間10分

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