Practice Makes Perfect/天狗岳(白駒池〜根石岳)
天狗岳(標高2,646M)の双耳峰・西天狗(左)と東天狗(右)。根石岳より臨む

白駒池駐車場(有料500円)。売店に登山届あり
白駒の池入り口
白駒の池
湖畔近くに建つ青苔荘(せいたいそう)
もの凄い青苔の森
白駒湿原
原生林の中の登山道 にゅう(標高2,352M)
にゅう山頂から天狗岳を臨む 趣のある登山道
標高2,400M付近から残雪が出てくる
中山峠(標高2,410M)。天狗岳は直進、右に行くと黒百合ヒュッテ
天狗岳(左:東天狗、右:西天狗)
まずは東天狗へ登る
東天狗山頂
東天狗山頂から西天狗を臨む
東天狗を降り西天狗へ向かう
西天狗山頂
西天狗山頂に到着
カップラーメンとコーヒーの昼食

天狗岳鞍部から見た根石岳(標高2,603M)と、硫黄岳・赤岳・阿弥陀岳など南八ヶ岳の峰々。

東天狗を越え根石岳へ向かう
白砂新道分岐から根石岳
根石岳山頂(標高2,603M)
根石山荘。稜線の強風の程が窺える佇まい
天狗の奥庭の熔岩帯コース
スリバチ池

黒百合ヒュッテ
中山山頂(標高2,496M)
高見石小屋への下りは残雪と蒼氷、更には濡れた石が延々と続く非常に滑りやすい難コース
高見石小屋

天狗岳(白駒池〜根石岳)

2011年6月16日(木曜日)

 南北30キロにも及ぶ八ヶ岳連峰は、その中央部である夏沢峠を境として、北八ヶ岳と南八ヶ岳に区分けされている。
 南八ヶ岳は最高峰の赤岳を筆頭に、横岳、硫黄岳、阿弥陀岳、権現岳、編笠山と『八山』のうち六山までを擁し、開放感あるアルプス的稜線と、豊富な高山植物人気によって大勢のハイカーで賑わっている。
 一方北八ヶ岳はというと、最北端の蓼科山がグループである八ヶ岳と同格の『日本百名山』メンバー入りしてグループを脱退してしまったため、残された天狗岳と北横岳の二座が辛うじて『八山』に数えられるものの、南に比べて地味な印象は否めない。
 しかしそれ故、南八ヶ岳の喧騒とは対照的な、静かな雰囲気が保たれているとも言える。

 天狗岳へのアプローチはいくつかあるが、今回は国道299号線の麦草峠近くの白駒池を選んだ。
 麦草峠は一般国道では渋峠に次ぐ第二位の高所にあり、峠から少し下った白駒池駐車場でも標高は2,100メートルほどある。2,646メートルの天狗岳との標高差は僅か546メートルしかない。

 家を朝4時に出発して、駐車場に着いたのが6時少し過ぎだった。八ヶ岳登山といえば、過去には夜中の2時半から3時には家を出ているので、それから見ればずいぶん楽な行程である。
 白駒池駐車場は有料で、普通車で五百円かかる。早朝に係員はいないが、クルマは停められるので料金は下山時に支払う。駐車場には有料トイレと売店があり、売店の入り口には登山届の受付箱が置かれている。
 6時25分に登山開始。まずは『白駒の池』を目指す。

 地図では『白駒池』となっているが、現地では『白駒の池』と標記されている。標高二千メートル以上の池としては最大規模だそうで、湖畔の青苔の原生林はとにかく物凄い。通常なら登山者しか見られないこうした光景がお手軽に見られるとあって、それなりに訪れる観光客もいるのだろう。
 湖畔の周遊歩道から別れ「にゅう」への登山道に入る。「にゅう」は途中の岩の出っ張りについている名で、暗く鬱蒼とした原生林の中をしばらく登れば「にゅう」へ出る。そこから振り返れば、白駒の池が森の中に置かれた鏡のように空を映している。
 にゅうから一旦中山峠に下り、東天狗への登りになる。ちょっとしたガレ場を登れば山頂へ到着する。
 天狗岳は東天狗と西天狗のふたつの山頂を持ついわゆる双耳峰で、西天狗の方が若干高い。東天狗の山頂を通り抜け、西天狗の山頂に着いたのが10時05分、登山開始から3時間40分後だった。標高差が少ない割りに意外と時間の掛かるコースだった。途中、数人のハイカーに出会ったが、山頂は無人だった。少し早いがここで昼食休憩にする。

 今回はガスコンロ持参で、カップラーメンとホットコーヒーの昼食と、これまでにない豪華さである。暖かいものはやはり食べた気になる。
 他に荷物といえば、ピッケルとアイゼンも携行している。6月中旬の標高二千五百メートル以上は残雪が多いかもしれないとの読みだったが、結局これは杞憂に終わった。
 以前、硫黄岳に登ったときにこの天狗岳がよく見えたが、こちらからも硫黄岳をはじめ南八ヶ岳の峰々がよく見える。しかし何といっても目を引くのが、間近に見える根石岳だった。あそこは天狗岳の絶好のビューポイントに違いない。
 時間も早いし、ルートも緩そうだし、天候も何とか持ちそうなので、行ってみることにした。一度越えてきた東天狗に登りなおし、次なる根石岳への稜線に踏み出す。ここから南八ヶ岳へ続く稜線は、アルプス的な開放感があり、やっと八ヶ岳らしい雰囲気になる。

 根石岳から振り返ると天狗岳の全貌がよくわかる。
 15分休憩し、気が済んだので下山に移る。この日三度目の東天狗に登ると、もう西天狗が見えないほど雲が出始めていた。今度はにゅうへは降りず、黒百合平分岐を左に下り、『天狗の奥庭』を見てから中山経由で降りるルートを辿る。
 天狗の奥庭は熔岩地帯で、ゴロゴロと続く大きな岩の上をペンキマークに導かれながらピョンピョン降りるコースである。通常の登山道に比べて歩きにくいが変化があっていい。
 水の少ないスリバチ池を周り込み、熔岩帯の急斜面を降下すると黒百合ヒュッテである。小屋前を通り抜ければすぐに中山峠に出られる。

 縞枯れ現象の続く中山に登り、天気が悪く何も見えない展望台を後にし、14時ながらすっかり薄暗くなった中、高見石小屋まで残雪の登山道を下った。
 この下山道は残雪が多く、一部で蒼氷化し、危なく感じた。登りに使った『にゅう』経由のコースよりだいぶ悪い状態だった。
 残雪がなくなってからも濡れた石の上を下るいやらしい状態が延々と続き、転びこそしなかったが慎重にならざるを得ず、その分時間も要した。非常に神経をすり減らす区間だった。
 ある種のこだわりからストックを持っていながら使わなかったのだが、ここは余分な怪我を避けるためにも使うのが懸命だろう。
 天候があまり好くないので白駒の池の展望台である高見石には行かず、小屋の横を素通りして、すっかり暗くなってしまった森の中を真っ直ぐ池まで降りた。駐車場への到着時刻は15時10分だった。今にも降り出しそうな天候は何とか持った。

 駐車料金を支払って、八ヶ岳の登山基地として有名な稲子湯へ向かった。硫化水素臭漂う天然ソーダ温泉が、この日の無事な登山の締めくくりとなった。

●登山データ
2011年6月16日(木曜日)
白駒池駐車場(標高2,094M)→天狗岳(標高2,646M)、標高差552M

白駒池駐車場(6時25分出発)→白駒の池(6時35分)→にゅう(7時45分/休憩20分)→中山峠(8時55分)→東天狗(9時50分)→西天狗山頂(10時05分到着)、登り所要時間:3時間40分
山頂滞在時間:55分
西天狗山頂(11時00分)→東天狗(11時15分)→根石岳(11時35分)、所要時間:0時間35分
山頂滞在時間:15分
根石岳(11時50分下山開始)→東天狗(12時10分/休憩10分)→天狗の奥庭(13時00分)→黒百合ヒュッテ(13時15分)→中山峠(13時20分)→中山(13時45分/休憩5分)→高見石小屋(14時40分)→白駒池駐車場(15時10分到着)、根石岳からの下り所要時間:3時間20分
全行程:8時間45分

登山目次
Home
Copyright © 1996- Chishima Osamu. All Rights Reserved.