Practice Makes Perfect/雁坂嶺(黒岩尾根ルート)
雁坂峠(標高2,082M)と雁坂嶺(標高2,289M)

出会いの丘駐車場
豆焼橋から分岐する林道が登山口
林道終点。ここから登山道になるが落葉でよくわからない
落葉で分かりにくいが、分岐点を右へ登る
かつての国道もすっかり落葉に埋もれ、見る影もない
あせみ峠にはベンチもある
黒岩から臨む雁坂嶺
崖に取り付けられた桟道
やっと尾根が近付いてきた
雁坂小屋のトイレの中を登山道が貫通している
峠直下にある雁坂小屋
雁坂小屋より上は雪が残っていた

雁坂峠から山梨側に広がる山並み

峠から山頂まで思ったより遠い
雁坂嶺山頂
雁坂嶺山頂。展望は好くない

雁坂嶺(黒岩尾根ルート)

2009年11月5日(木曜日)

 埼玉・山梨県境にまたがる奥秩父連山。それを横断する雁盛峠(かりさかとうげ/標高2,082M)は、太古にはヤマトタケルが、戦国期には武田信玄が越えたとも言われ、江戸時代には養蚕ブローカーが往き来するなど、さながらシルクロードの趣もあったらしい日本三大峠のひとつである。
 クルマの通れない登山道ながら昭和期には国道認定までされ、峠の雁坂小屋では、便所小屋の中を国道が貫通していることから“便所国道”とも揶揄(やゆ)されるなど、当時話題にもなったらしい。
 平成10年には一般国道最長と言われる雁坂トンネル(全長6,625M)が開通し、長いこと言われ続けてきた“開かずの国道”の解消を遂げている。この有料トンネルは自動車専用で人は歩けないが、だからといって無論現在では、物好きな登山者以外にこの峠を越える人もいないだろう。

 雁坂トンネルのほぼ中間真上に位置する雁坂峠だが、手っ取り早く登るには山梨側のルートを選択する方が賢明のようだ。しかし秩父在住の私としては、秩父の範疇に入る山は可能な限り秩父から登りたいとのこだわりがあり、埼玉側の出会いの丘にクルマを置いて、6時30分に登山を開始した。
 豆焼橋を渡るとすぐに雁坂トンネルのひとつ手前のトンネルがあり、その入り口脇から林道が派生している。入り口にはチェーンが張られていて一般車は入れず、登山届の受付箱は設置されているものの用紙はない。付近の紅葉は三日前に降った雪であらかた散ってしまっていた。

 林道を25分ほど歩くと終点に着き、そこから本格的な登山道に入る。指導標はあるが、あたり一面大量の落葉に埋もれ、これがかつての国道なのかと疑われるほど道が判別しにくい。名称は黒岩尾根登山道となっているが、実際に尾根を歩くのは峠も間近の終盤になってからで、それまでは延々、尾根の南斜面につけられた足許のずり落ちそうな道が続く。途中、あせみ峠と指導標のある場所にはベンチこそ置いてあるものの、まったく峠っぽくないうえ、手持ちの地図には記載すらない頼りなさだ。

 指導標は500メートル間隔にあり、火打石尾根とか、直下水晶谷などの地名案内も見え、すたれた登山道の中にも心遣いは窺える。後半には黒岩展望台への分岐があり、稜線に出られそうなので登ってみると、これが胸を突くような急傾斜である。10メートルほど登ると、雁坂峠や雁坂嶺も間近く見える尾根の岩場に出る。展望台と呼ぶにはやや険しく狭い岩場で、休憩しやすいポイントでもない。ただ、なるほどこれでは尾根を歩くのは困難だろうと納得できるだけである。

 登山道に戻ると、途中に“足もと注意”という立て看板がある。何のことか。足許は一面の落葉である。もしかして落とし穴でもあるのかと疑心暗鬼にしばらく立ち尽くしたが、これはどうやら、この先にやがて現れる桟道(さんどう)のことを言っているらしい。
 登山道のつけられない断崖が何箇所かあり、そこに丸太を組んだ桟道が取り付けられている。結構しっかり作ってあるので危なげないが、ここを渡り終わった先にも同じ看板が逆向きに立っていたので、やはりこのことだったと理解できた。

 やがて尾根に出ると道幅も広くなり、まもなく例のトイレが現れる。登山道は真っ直ぐトイレ小屋の中を貫通していて迂回は出来ない。なるほどこういうのは私も初めて見る。トイレを出た先が雁坂小屋で、人の気配はなく、既に今季の営業を終えているようだった。
 小屋を過ぎると登山道には薄っすらと雪が積もっていた。ストックを突いてしばらく登ると、鬱蒼とした原生林を突き破って突如雁坂峠に出た。稜線の山梨側にはほとんど樹木がなく明るい視界が広がり、暗鬱とした埼玉側とはひどく対照的だった。一望に開けた風景に荷物を降ろして30分の休憩を容れた。

 峠には既に何人かの先客がいた。紅葉も終わった平日にも拘らず、意外なこの山域の人気ぶりに少なからず驚いたが、埼玉側の駐車場に他のクルマはなかったので、この人たちのすべてが山梨側からの入山だろう。
 この埼玉と山梨の県境、つまり奥秩父山系の稜線には、埼玉県もずいぶん頑張って立派な看板や指導標を立てているが、如何せん登山客の流れから見て、明らかに主導権は山梨側にあるように見える。これは埼玉と東京の境にも言えることで、それはこの山域を訪れる登山客の多くが、東京の奥多摩、或いは奥多摩から山梨を経由して来るものと想像され、埼玉とりわけ秩父の人が思っている以上に、東京あるいは山梨の山というイメージが、世間一般には定着しているのかもしれない。
 雁坂嶺(標高2,289M)は峠からはすぐ間近に見えるのだが、実際に登ってみると思いの外奥深く、なかなかたどり着けない。山頂はあまり広くもなく、樹木に囲まれているため展望も悪い。ここで20分休憩して、もと来た道を引き返した。

●登山データ
2009年11月5日(木曜日)
出会いの丘駐車場(標高1,048M)→雁坂嶺山頂(標高2,289M)、標高差1,241M

出会いの丘駐車場(6時30分出発)→豆焼橋→林道終点(6時55分)→あせみ峠(7時40分)→黒岩(9時00分/黒岩展望台往復と休憩12分)→雁坂小屋(9時35分)→雁坂峠(9時50分/休憩30分)→雁坂嶺山頂(10時50分到着)、登り所要時間:4時間20分
山頂滞在時間:20分
雁坂嶺山頂(11時10分下山開始)→雁坂峠(11時30分)→雁坂小屋(11時35分)→黒岩(11時55分)→あせみ峠(12時55分)→林道終点(13時25分)→出会いの丘(13時50分到着)、下り所要時間:2時間40分
全行程:7時間20分

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