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夜明け前の八海山。一番右が最高峰の入道岳。
中央のギザギザが八ッ峰
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2合目駐車場。看板の左が登り専用の屏風道入り口。
正面右奥へ続く林道が、本日の下山路となる新開道
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屏風道は何箇所か沢を渡る
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4合目の清滝。ここまでは緩やかな登山道だが…
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4合目から8合目まで連続する鎖場の急登
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時には木の根を掴んでの直登
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鎖のない岩場の直登も多い
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岩峰に朝日が差してきた
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道は険しいが景色は好い
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稜線の左端に千本檜小屋が見える
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これから縦走する八ツ峰の稜線
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稜線の千本檜小屋に到着
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八ッ峰最初のピーク地蔵岳へ
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地蔵岳山頂と護摩段岩
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護摩段岩
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地蔵岳山頂(標高1,707M)
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第2のピーク不動岳へ
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不動岳より登って来た屏風道を振り返る
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不動岳から地蔵岳と千本檜小屋、薬師岳を振り返る
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不動岳山頂
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不動岳から先は危険、転落したら助からないとの看板が設置されている
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次なる七曜岳(五大岳)へ
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五大岳山頂
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次は釈迦岳
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釈迦岳山頂だろうか? 標石は判然としない
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八ッ峰の縦走路。白川岳、摩利支岳と続く
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白川岳山頂
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摩利支岳
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砂利をセメントで固めたような『さざれ石』が八海山の特徴だ
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梯子と鎖を登り詰めると
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摩利支岳山頂
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摩利支岳の次は剣ヶ峰のはずだが
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剣ヶ峰山頂は判然としない
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う〜む、よくわからない
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大日岳山頂にはユーモラスなオジサン像が
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大日岳から見た入道岳。しばし休息を容れる
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大日岳から屏風道の眺め
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越後駒ヶ岳
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八海山から稜線が伸びる越後三山最高峰の中ノ岳
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入道岳への稜線から見た八ッ峰。最も高いのが大日岳(標高1,720M) |
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大日岳の鎖場を降下して入道岳へ向かう
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大日岳を振り返る
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八海山最高峰の入道岳(標高1,778M)
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入道岳付近の紅葉
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入道岳山頂。現地の指標は丸ヶ岳になっている
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紅葉の新開道を下山する
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八ッ峰を振り返る
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八海山(屏風道〜八ッ峰縦走)
2009年10月14日(水曜日)
八海山(はっかいさん)。
その名を聞いただけで慄(ふる)え上がるスキーヤーは少なくない。
全長2.2キロのロープウェイがカバーする八海山スキー場は、ほとんど一定の急斜面に重い深雪が張り付き、並大抵な技術と体力では到底太刀打ちできない高難度のコースレイアウトを誇っている。そのため、ここをホームゲレンデにしているスキーヤーは、ほとんど化け物じみたレベルであり、ここからほど近い『スキー道場』浦佐と共に、虎の穴の双璧をなしている観がある。
誤魔化しの効かない雪質はそのままエキスパート(超上級者)のバロメーターであり、ストイックに打ち込む一般上級者からの支持が高い。
この八海山ロープウェイは、スキーシーズンのみならず通年運行しており、ゲレンデトップの山頂駅は八海山登山道の四合目にあたっている。これを利用すれば標高差771メートルを10分弱で登れてしまうので、下から歩いて登るよりもはるかに楽である。
が、八海山はもともと修験道の山と聞く。スキーもハードなら登山もハードに行くのがここの正道だろうと一人決めに、いくつかある登山道から、最高難度と言われる屏風道を選択した。ひたすら鎖にすがって岩壁を直登する下山禁止の急斜面である。
家を夜中の3時に出発し、二合目の駐車場に着いたのが5時半だった。そこで届を出して5時50分に登山を開始した。
八海山は標高1,778メートルに過ぎない山だが、二合目からの標高差は実に1,318メートルもあり、登り応えは充分ある。前日に雨が降ったらしく、地面は一様に濡れていた。ただでさえ危険な岩登りに嫌らしさが加味されたわけだが、これが後に、登山三年目にして過去最大の災いをもたらそうとは無論このとき知る由もなかった。
駐車場を出発すると、いきなりの渡渉である。なかなか水量のありそうな川の音は駐車場からも不安気に聞こえていたが、降りてみると丸太橋が架かっていたので苦もなく通過できた。
四合目まではどうということもない、むしろ緩やかなコースである。このコースの恐ろしさは、四合目から八合目に掛けて連続する、鎖と岩場の急斜面にある。
地図から割り出したこの区間の標高差はおよそ700メートル、平均斜度は概ね30度で、これを直登するのだという。この数値は、これまで体験した一般登山道の常識から言っても異常である。無論、最大斜度は30度を超え、区間中すべての岩に鎖が着いているわけでもなく、時には膝が胸に着くようなストロークで、四つん這いになって這い上がらねばならないなど、多少なりとも岩登りに覚えがないと、このコースは登れない。
ここには数十箇所の鎖場があり、当然握力に頼るところが大きいのだが、私の場合、心身ともに限界まで追い込まれた二年前の妙義山に比べると、意外にもそれほど苦にならない岩場だった。鎖の数は多いものの、ひとつひとつのスパンが短く、ひとつクリアすれば息をつけるインターバルがあるのと、樹木の中で視界が悪いため、視覚的恐怖感がそれほどないというのがその要因だろう。
稜線の千本檜小屋(九合目)に到着したのが8時45分だった。少し前にロープウェイの初便が遠くに見えたところなので、それを利用してのハイカーからは優に2時間のアドバンテージを持っている。山小屋にも人影は見えず、あとは豁然(かつぜん)たる無人の険峻があるばかりだった。
八海山の山頂稜線には大小十もの峰が連なり、六日町から見て、左から薬師岳、八ッ峰、入道岳(丸ヶ岳)と三つに大別され、中央の八ッ峰は、地蔵岳、不動岳、七曜岳(五大岳)、白河岳(白川岳)、釈迦岳、摩利支岳、剣ヶ峰、大日岳と細分されている。
これらの小ピークはどれも同じような標高なのだが、入道岳(丸ヶ岳)が若干、頭ひとつ抜け出た最高峰となっている。ちなみにカッコ内の表記は現地の指標がそうなっており、何故か地図表記とは違っている。八ッ峰は最初読み方が分からず、『はっぽう』とか、『やんみね』かとも思ったが、単純に『やつみね』でいいのだろう。
地蔵岳から大日岳に掛けての八ッ峰は特に危険な岩稜であり、鎖にすがっての縦走路と、それをまったくパスしてしまう迂回路とに分かれている。今回のルートである屏風道は、薬師岳と地蔵岳の鞍部である千本檜小屋に出るため、薬師岳は割愛し、八ッ峰を縦走して入道岳へ到るルートを採っている。
9時ちょうどに最初のピーク地蔵岳に到着した。
この地蔵岳は、NHK大河ドラマ『天地人』のオープニングタイトルのラストショットで、直江兼次が山頂の墓前にひとり佇んでいる意味深な空撮シーンのロケ地である。
非業の死を遂げた親友の墓前に佇むような、何か謎めいた思わせぶりなシーンだが、何のことはない。あの石碑には『地蔵岳』と書かれているだけである。
八海山は修験道の山だけあって、神仏に由来した名称が多い。神仏像もやたらと設置されている。この海から遠い地で、八海山とはどのような由来によるものだろうか。諸説あるようだが、仏教的なイメージから言えば、八界山とか八開山の方がそれっぽいし、冬の豪雪を見れば、八寒山ともいえそうな極寒地獄も想像できる。
それはともかく。この稜線縦走は思った以上に危険で、特に稜線の北側をトラバースする区間は要注意である。もちろん鎖は設置されているが、屏風道とは違って視界が開けているため視覚的恐怖感が高く、高所恐怖症の人は入らないほうがいいだろう。足場は肩下がりで濡れてもいる。滑り落ちれば身分証を携帯していても最後の身元確認は歯型かDNA鑑定に頼る以外にない。
八ッ峰のそれぞれのピークには、比較的最近作ったと思われる石の指標が立っているが、確認できたのは、地蔵岳、不動岳、五大岳、白川岳、摩利支岳、大日岳の六つだった。順に数えて行って、予定の八つよりも早く、最後の大日岳に着いてしまった。
この大日岳(標高1,720M)は八ッ峰の最高峰で、登山道の十合目にあたっている。つまり修験道的に言うと、ここが八海山の頂上であり、実際の頂上である入道岳(1,778M)は無視された恰好になっている。
入道岳は現地の指標では丸ヶ岳といい、荒々しい岩峰の八ッ峰とは違い、土で出来た穏やかな丸い山である。明らかに修行っぽくないし、神仏像も置かれていない。
あるいは修行の果てに到る本願の浄土という設定なのか、そのあたりの事情は不明だが、現在では紛れもない八海山の頂上である。
大日岳に着いたのが9時55分。出発からここまで4時間と5分、ノンストップである。せっかく最後の岩峰なので、ここで荷物を降ろして食事休憩を容れた。
いくつかのピークにはその名にちなんだ神仏像が置かれているが、この大日岳にいる剣を佩(は)いた髭面のオジサンは一体誰だろうか。大日如来とも思えない何ともユーモラスな後姿である。
鍾馗(しょうき)と思われるが、どうだろうか。
鍾馗さんの後ろで15分の食事休憩をし、岩稜縦走を終える最後の鎖を降下し、本願の浄土を目指した。
やがて入道岳山頂に到着したのが10時40分。駐車場からの所要時間は4時間50分だった。
八海山山頂という指標はどこにもなく、三角点もない。ただ『丸ヶ岳』とあるのみである。こういうさっぱりした山頂もいい。
但し、坐り心地は大日岳の方が格段によかった。小一時間も休憩しようと思っていたのだが、坐り心地の悪さに20分で撤収した。
ここまで、紅葉もよく映える青空だったが、俄かに雲が出てきた。午後には雷雨もあると言っている予報である。
11時に下山に移る。登ってきた屏風道は下山禁止なので、新開道を降りることにする。
この新開道も屏風道ほどでないにしろ、急峻な山肌に着けられていることに変わりがなく、決して楽な道ではない。特に山腹をトラバースする序盤は、道が肩下がりでぬかるんでいるため、滑落すれば谷底まで転げ落ちることも屏風道と同様、鎖を恃(たの)んでの下山となる。
そんなことで朝から終始気の抜けない登山となったわけだが、やがて滑落の心配もない尾根筋に出ると、俄かに気が緩んだのか、ぬかるみと木の根に足を滑らせ、不覚にもひどい尻餅をついてしまった。しばらくは激痛に呼吸もできない。
スキーとインラインスケートで滑り物には強いという奢りが、ぬかるんだ下山路でもストックを使わせなかった。やがて呼吸を取り戻すと、右手の違和感に気が付いた。軍手を外してみると、小指の先が奇妙な形に曲がっていた。
通常、指先の第一関節は、それ単独では曲がらず、第二関節と連動して曲がるものだが、それがそこだけ、ぐにゃりと90度に折れ曲がっていた。折れたか、と思った。
しばらく観察してみる。
曲がっている以外、出血も腫れもない。痛みもない。伸ばそうとしても自分の意思では微動だにせず、左手でつまめば伸びるが、離せばバネ仕掛けのようにびょんと曲がる。まるでおもちゃのようだ。
どうやら骨折しているふうはない。筋が伸びたか断裂したのかもしれないが、こんなになっているのに腫れも出血もなく、何の痛みも感じないというのは返って不気味である。念のため指先をつねってみると、その痛みは普通に感じた。まあ、全治三ヶ月というところか。とりあえず下山に何の不都合もなさそうなので、小枝とバンドエイドでテーピングし、ストックを出して下山を続行した。そんなことで10分ほど手間取った。
山での奢りが命取りとは、この時ようやく身に沁みた。ぬかるんだ下山には最初からストックを使っていれば、負わずに済んだ負債である。このところ中高年登山者の遭難事故が多いというが、これはもう他人事ではなく、私も7月にアブに刺されたのに続いての受難であり、事態はより悪くなっている。
13時40分に駐車場に着いた頃には、既に山頂稜線は雲の中だった。単にロープウェイ組に先行したというだけの結果だが、この日はついに、今年初めて他の登山者の一人にも会わなかった。
麓のさくり温泉健康館に立ち寄ってから高速に乗ると、湯沢あたりで雨になった。
●登山データ
2009年10月14日(水曜日)
2合目駐車場(標高460M)→八海山山頂(標高1,778M)、標高差1,318M
2合目駐車場→(5時50分出発)→屏風道→千本檜小屋(8時45分)→地蔵岳(9時00分)→不動岳(9時05分)→五大岳(9時20分)→白川岳(釈迦岳?9時35分)→摩利支岳(9時45分)→大日岳(9時55分/休憩15分)→丸ヶ岳(入道岳/10時40分到着)、登り所要時間:4時間50分
山頂滞在時間:20分
丸ヶ岳(11時00分下山開始)→新開道分岐(11時15分)→新開道(途中、怪我治療のため10分休憩)→2合目駐車場(13時40分到着)、所要時間:2時間40分
全行程:7時間50分 |
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