Practice Makes Perfect/棒ノ折山
さわらびの湯第3駐車場がハイカーに無償開放されているので、下山後の入浴までが本日の予定調和
さわらびの湯から車道を登って有間ダムの堤体を渡る
川が先細った緑色の橋を渡ったところが白谷沢登山口
白谷沢登山口。登山届のポストあり
コース脇に連続して現れる滝が目にも涼しい白谷沢
左右から岩壁が迫るゴルジュ帯
沢の渡渉を幾度も繰り返す
この日は気温が低いためか、水辺の割にアブやヒルはいない
滑りやすいのでロープを手繰る
すぐ横を落ちるいい感じの滝
あれっ?アスファルト道路にでた。興醒め
整備されたトラバースは歩きながら呼吸を整える休憩区間
岩茸石の分岐
権次入(ゴンジリ)峠
広く整備された棒ノ折山山頂(標高969M)
山頂のシンボルの桜の木
岩茸石分岐から滝ノ平尾根コースを降りる
林道を三度横切る単調なショートカット道

赤い橋を渡って対岸のスロープを登れば駐車場だ
偵察機が翼を広げたようなさわらびの湯でゆったり

棒ノ折山(ぼうのおれやま)

2025年5月27日(火曜日)

 2025シーズンはどこのスキー場も豪雪の恩恵を受けたが、円安による原油価格高騰と輸入原材料高騰に加え、インバウンド需要の大量集客を見込んでのリフト料金の爆上げが実施され、とりわけメジャーどころは一日券を二千円も引き上げたり、シニア料金をなくすなど強気の経営姿勢に転じたため、平民スキーヤーにとっては今までのお気楽さでは行けなくなった。
 もっとも、これまでの客の奪い合いの低価格競争は、サービスの低下や経営の悪化を招く側面もあるので、一概に値上げの否定もできないのだが、つまるところ需給バランスの崩れはゲレンデから貧乏人を淘汰し、リフト待ち30分、1日の滑走本数5本などという週末の混沌は改められ、外国人と富裕層による、リフト待ちもゲレンデ混雑も存在しない、エレガントで健全な白銀パラダイスへと浄化してゆくのかもしれない。
 私はというと、優待券を使って9日間滑ったものの、5月のかぐらや志賀高原のコブに高い金を払って行く気にもなれず、大方のスキー場が終了する4月中旬にはやめてしまった。平日専門なので、リフト待ちなし、1日の滑走本数50本程度をキープしてはいるものの、仕事や家庭の都合とはいえ、この日数では到底趣味とも言い難い。

 スキーがそんなだから、夏の登山がオフトレなのかダイエットなのか最早分からず、慢性睡眠不足の中、夜中に起き出して遠くの山に行く気にもなれず、とりあえず運動不足解消という名目で、秩父の自宅からほど近い名栗の棒ノ折山に登ることにした。
 棒ノ折山、別名を棒ノ嶺(ぼうのれい)ともいい、雲取山から連なる都県境の山並みの一郭であり、標高は969メートル、スタート地点からの標高差は729メートルと、夏山シーズン最初の足慣らしとしてはまず適当なところだろう。
 今回の白谷沢(しらやさわ)コースを登る場合、名栗湖畔の登山口近くの路肩に数台の駐車スペースはあるのだが、今回は滝ノ平尾根を下る周回コースとしているため、有間ダム堤体下にある日帰り温泉施設『さわらびの湯』の第3駐車場を利用させてもらうことにした。ここは24時間無償でハイカーに開放されているので、下山後の入浴までを予定調和とすれば本日のオーダーとして申し分ない。
 白谷沢コースは中小規模の滝が連続する沢沿いのコースで、小さな渡渉を何度か繰り返す趣がある。中でも見所は左右から岸壁が迫る『ゴルジュ帯』で、フランス語で喉という意味だそうだが、このハイライト区間が数十メートルに亘って続く。水辺ということでアブやヒルに襲われる心配と対策をしてきたが、まだ気温が低かったことによるものか、それとも元々いないのか、そういった被害にはまったく遭わなかった。

 沢登りの区間が終わると突如ガードレールのついた舗装道路に飛び出した。5年前のコロナ禍での外出自粛期間中には、敢えて山頂まで車道の通じた近場の山ばかり歩いていたが、今日のまったく予期しなかった突然の出逢いにひどく興醒めした。
 車道を横切ると後半戦である。ちょっと登ると道は山頂から遠ざかるように左に曲がりはじめ、僅かに下り傾斜を伴ったトラバース道になる。下りで使う予定の滝ノ平尾根に合流するのかしら、などと歩きながら息を整えて行くと、やがて岩茸石の分岐で尾根道に合流した。上り勾配に沿って丸太の階段がしつらえてあるものの、雨で踏面の土が流出して骸骨みたいになってしまい、階段は利用しないよう掲示が出ている。その周辺の踏み跡を辿って階段区間を登りきると、ベンチの置かれたゴンジリ峠だ。ゴンジリ峠から山頂までは14分の道程で、こちらも正規の道は荒れた植生の回復のため立ち入り禁止になっていて、その脇の杉林の中を登るのだが、一面すっかり血管が浮き出たように露わになった木の根が痛々しい。
 朝食がまだだったので、誰もいない山頂広場の端っこのベンチに腰掛け、20分の食事休憩を容れた。山頂をそよぐ風は冷たく、汗ばんだ体が急速に冷やされてゆく。食事が済んだらさっさと滝ノ平尾根からの下山だ。舗装道路を3回も横切る興もないショートカット道で、下りきったところは民家の庭先だった。有間ダムの下に懸かった赤い橋を渡って、舗装されたスロープをラストスパートで登り返せば、さわらびの湯の駐車場だ。
 
●登山データ
2025年5月27日(火曜日)
さわらびの湯第3駐車場(標高240M)→棒ノ折山(標高969M)、標高差729M
さわらびの湯第3駐車場(6時38分出発)→白谷橋登山口(7時06分)→白谷沢コース→岩茸石(8時07分)→ゴンジリ峠(8時30分)→棒ノ折山山頂(8時44分)、登り所要時間:2時間06分
山頂滞在時間:20分
棒ノ折山山頂(9時04分下山開始)→ゴンジリ峠(9時13分)→岩茸石(9時26分)→滝ノ平尾根コース→さわらびの湯第3駐車場(10時34分到着)、下り所要時間:1時間30分
全行程:3時間56分

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