Practice Makes Perfect/赤城山(鈴ヶ岳)
朝7時。新坂平駐車場は閉鎖されていたので登山口近くの駐車場からスタート。他に誰もいない
駐車場の向かいが登山口
コース上にあるナンバリング。登山口の1番に始まり、山頂は14番だ。
鍬柄山山頂は狭いながらも見晴らし好く、黒檜山や地蔵岳が一望できる。山頂表示はない
鍬柄山と鈴ヶ岳の鞍部・大ダオ
ちょっとした岩場が2箇所続くが、特に問題ない
1時間16分で鈴ヶ岳山頂(標高1,565M)到着。駐車場からの標高差はわずか155メートルだが、途中の鍬柄山のアップダウンがあるため意外に時間がかかった
山頂に建ち並ぶ三つの石碑と石舞台。樹木に囲まれ展望はない

鍬柄山からカルデラ湖の大沼(おの)と赤城外輪山最高峰の黒檜山(くろびやま)

下山して大沼湖畔に建つ青木旅館に立ち寄る
日帰り入浴とワカサギ定食セットで2,000円
青木旅館の奥はかつての赤城山第二スキー場。リフトはないがソリ遊びなら出来るとのこと

赤城山(鈴ヶ岳)

2024年9月18日(水曜日)

 今年2024年は、スキーシーズンも終わらぬ3月から夏日を観測する統計開始以来過去最高気温の更新ラッシュに始まり、スチームコンベクションオーブンに入れられたかのような身悶えるばかりの長過ぎる夏にすっかり疲弊してしまっている。天気予報はコロコロ変わり、前日計画した山登りが当日雨に変わって中止になるなぞ穏やかな日が続かず、叩きつけるような線状降水帯の長時間集中豪雨に山河も交通網も削り取られ、夏山トレーニングのモチベーションをも萎えさせている。
 しかし自分もすでにいい齢(とし)である。山登りできるタイムリミットはあと数年がいいところだろう。まだ高山に耐えうるのか、それとも今の身の丈にあった低山に退くべきなのか、その検証と軽い足慣らしに、不安定な空模様の間隙を衝いて、赤城外輪山の鈴ヶ岳に登ってみた。

 富士山に次いで長い裾野を曳く赤城山にあって、山頂部の一郭にラクダのコブのようにピョコンと飛び出た丸い出っ張りが鈴ヶ岳である。関越自動車道の赤城高原SAから間近く印象的だが、いざ現地入りしてみると、登山口から山頂まで一貫してその輪郭を捉える事は叶わず、ひたすら樹林帯を歩くだけの登山に終わってしまう。
 赤城道路を駆け上がり、白樺牧場右にある新坂平駐車場にクルマを入れる予定が、2箇所ある出入り口がカラーコーンとバーで塞がっていたため、あまり気乗りしなかったが、仕方なくUターンして登山口前の路肩駐車場まで戻ってクルマを入れた。
 朝7時で他に誰もいない。戻った頃には新坂平駐車場は開放されており、後に立ち寄った青木旅館の大旦那の話では、開場は9時とのことだった。

 駐車場から横断歩道を渡った向かいが登山口で、「鈴ヶ岳 1」の標識がついており、山頂の「14」まで続く。前出の大旦那がコースが藪化していないか、草刈りに行かなくちゃかなと心配していたが、特にそういったことはなかったものの、この日一番乗りとあってか、コースを横切る蜘蛛の巣を百箇所ばかり払い除けねばならなかった。
 駐車場から山頂までの標高差はわずか155メートルに過ぎないが、途中の鍬柄山(くわがらやま)のアップダウンを挟むため、すっかりなまった体には意外な登り応えが感じられる。
 展望があるのは鍬柄山山頂一点のみで、カルデラ湖の大沼(おの)を抱え込むような最高峰・黒檜山(くろびやま)、頭にアンテナの突き立った第2位の地蔵岳、さらには前橋の平野部に向けて広く開けているものの、目の前にあるはずの鈴ヶ岳だけは、鍬柄山からの下降中、樹林の中に薄っすらそれらしい影を透かす程度にとどまっている。
 鈴ヶ岳山頂も鬱蒼とした樹木に囲まれていて何も見えず、三つの石碑と拝殿代わりの石舞台があるだけである。出発からの所要時間は1時間16分と、意外なほど足が上がらず意外にバテたが、どうにか少しだけ地図上参考タイムを縮める事はできた。
 朝食がまだなので、石舞台にリュックを降ろし、おにぎり一個とゴディバの羊羹一つを口に入れ、休憩20分で踵(きびす)を返して元来た道を戻った。

 山頂部は巨石が多いため、ときに踏み跡が不明瞭で、下山時に道迷いしやすいポイントが一箇所だけある。木にピンクリボンが小まめに付けられており、石には冬季登山によるアイゼンの爪痕が残っているので、これらサインを見失ったら道をロストしたと見て間違いない。原則どおり分かるとこまで戻ってよく道を確かめよう。これが低難度ながら唯一仕掛けられたブービートラップなので、努努(ゆめゆめ)山を舐めること勿(な)かれ、だ。
 下山時間も地図上参考タイムをわずかに縮められたものの、やはり鍬柄山のアップダウンがネックとなって1時間14分と登りとさして変わらない。
 白樺牧場前の道路を片側交互通行にして舗装工事を行っており、登山口駐車場にはロードローラーを積載してきた低床セミトレーラーをはじめ、工事関係者っぽいクルマが6台ほど止まっていた。駐車場のすぐ脇をクルマが駆け抜けて行くが、トレーラーが格好の目隠しになってくれていたので、汗だくになったパンツまで車外で脱いで、衣服をすべて改めることができた。

 10時20分、大沼湖畔まで下って青木旅館に立ち寄る。日帰り入浴とワカサギ定食のセットを堪能するのが本日第2の目的である。
 ここのお風呂は温泉ではなく、山の伏流水を沸かしたものだが、他に誰もおらず、大きめの浴槽に体を伸ばして、のんびりさっぱりできた。そして湯上り後、運ばれてきたのは赤城名物のワカサギである。
 もはや何のトレーニングなのかも見失っているが、とりあえずこれで当初の目的通り、忘れていた山登りの苦痛の記憶を筋細胞に呼び醒ますことはできたと思う。次はもう少し頑張れることを期待したい。

 青木旅館の庭の奥に山を切り開いた斜面があり、鹿のモニュメント三体が遊んでいる。かつてバブル期に存在した赤城山第二スキー場跡である。
 23年前、グラススキーに興じたのが第三跡で、地蔵岳の裾野にベルトコンベア一本ながら、自称『日本一小さなスキー場』として今でも週末のみ頑張って営業しているのが第一になる。
 コロナが明け、過去最高益となった訪日外国人によるインバウンド需要と円安の物価高の影響により、このところスキー場のリフト料金爆上げの話題がSNSでも喧(かまびす)しい。自宅からスキー場が近いわけでもなく、仕事の都合やら家庭の事情やらで回数を行けるわけでもないとあってシーズン券に手を出さない身としては、この冬赤城山第一スキー場も選択肢の一つとなりうるやもしれない。
 入浴と食事が終わって赤城道路を降り始めた頃、パラパラと弱雨が降ってきた。家に着いた途端地響きする雷雨となり、土砂災害警戒情報が解除されたのはその日夕方になってからだった。
 
●登山データ
2024年9月18日(水曜日)
登山口駐車場(標高1,410M)→鈴ヶ岳(標高1,565M)、標高差155M
登山口駐車場(7時19分出発)→鍬柄山(7時53分)→大ダオ(8時11分)→鈴ヶ岳山頂(8時35分)、登り所要時間:1時間16分
山頂滞在時間:20分
鈴ヶ岳山頂(8時55分下山開始)→大ダオ(9時13分)→鍬柄山(9時38分)→登山口駐車場(10時09分到着)、下り所要時間:1時間14分
全行程:2時間50分

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