Practice Makes Perfect/白毛門
土合橋駐車場。5年前に敗退した朝日岳を目指す予定だったが、水上インターを降りると意外な雨だった。とりあえず白毛門まで行って様子をみることにする
そのうち晴れるだろうと雨を衝いてのスタート
紅葉は雨で濡れていい感じである一方、
一面に敷き詰められた濡れた落ち葉に足を取られ、
濡れた木の根に足を掬われ、
濡れた岩はさながら氷のスロープのようだ
視界が悪く目標物の設定がままならない
横殴りの雨の中ようやく白毛門に到着

白毛門山頂(標高1,720M)。雨も熄まず、足許が滑ってタイムが出ないので、今回も朝日岳は諦める
駐車場に戻った頃ようやく晴れてきた

白毛門

2023年10月30日(月曜日)

 今年2023年は例年にも増して全国的に熊の目撃情報が多く、山のドングリの不作からか、餌を求めて人の生活圏にまで入ってくるケースが相次いでいる。人身被害者数も4月から10月までの半年間に18道府県で180人と、環境省が統計を取り始めて以来過去最悪であり、とりわけ10月は71人と全体の4割を占めている。

 今季は人気のある山にばかり登っていたので、今回は従来の方針どおり人出の少ない静かな山を選んだ。5年前に敗退した朝日岳への再挑戦で、前回はスタート時刻の出遅れに加え、いきなり道を間違えたこともあって、途中の笠ヶ岳避難小屋で時間切れとなり、やむなくそこで諦め引き返している。
 今回は朝のうち曇り、昼には晴れる予報ながら、水上インターを降りると辺りは虚しい小雨に煙っていた。土合橋の駐車場に乗り入れた6時の時点で先着のクルマは2台いたが、一人はクルマを出たり入ったりしながら、この雨に思案しているふうで、私は車内で朝食のおにぎりをひとつ食べ終えてから、歩いていればそのうち熄むだろうと、雨を衝いて出発した。熊とのエンカウントに備え、久しぶりに南部鉄器の熊ベルをリュックにくくり付け、ズボンのポケットには安全装置を外したポリスマグナムを突っ込んでいる。

 スタートから最初のチェックポイントである白毛門まで這うような急登である。前回は梅雨の晴れ間の蒸し暑さに苦しんだが、今回はだいぶ涼しく、ハンガーノック対策も万全とあって足取りは軽かった。ところが、道一面を埋め尽くす濡れた落ち葉が雪のように滑り、剥き出しの木の根は氷のように滑り、岩場に至ってはまったくフリクションが効かないのには閉口した。ガスと雨に視界を奪われ、目標物の設定もままならず、いくつもの小ピークを乗り越えながらも、一体どこが目指す白毛門なのか皆目見当も付かなかった。

 足はよく上がるし疲労はなかったものの、白毛門までの所要時間は3時間05分と、意外にも前回のタイムを18分もオーバーした。森林区間を脱してからは雨風をモロ全身に喰らう恰好となり、フリクションの効かない状態にタイムを作れなかったわけだが、下り交じりとなるこの先も挽回の見込みが無いことと、途中でズボンのポケットのマグナムを落としたことに気付いたため、ここでやむなく引き揚げ、回収ミッションに移行せざるを得なくなった。
 いつ爆発するか分からない米軍の不発弾を山に遺棄するようなマネは人道上許されない。省みて途中で何度も確認しながら、それでも紛失した事は少なからぬショックだった。おそらく落とした場所は腿を腹に当てこするようによじ登った木の根の露出区間のどこかと思うが、是が非でも見つけ出さねばならない。
 マイナーかつハードな山故に、ここまで誰にも会っていない。わざわざ雨の中入っている数寄者は他にいないだろうと思った矢先、下から男性二人組が登って来た。尋ねてみると幸い彼らが回収してくれていたので、謝して受け取り事なきを得た。
 下りは何度か滑っては転び、木の枝にでも引っ掛けたのか、リュックに縛り付けた南部鉄器の熊ベルが紐ごと切れてなくなっていた。割と高価なものだったが仕方がない。来年また来て探そうと回収は諦めた。せっかく揃えた対熊グッズを二つとも失くすなぞ、やはり今さららしくなかったという事か、いずれにせよ今回は反省する点しきりだった。
 
●登山データ
2023年10月30日(月曜日)
土合橋駐車場(標高690M)→白毛門(標高1,720M)、標高差1,030M
土合橋駐車場(6時12分出発)→白毛門(9時17分)、登り所要時間:3時間05分
山頂滞在時間:5分
白毛門(9時22分下山開始)→土合橋駐車場(11時27分到着)、下り所要時間:2時間05分
全行程:5時間15分

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