Practice Makes Perfect/大源太山・七ッ小屋山(謙信ゆかりの道周回ルート)
登山口の駐車場。10台ほど置ける
届を出して登山開始
最初の渡渉地点
大源太山とシシゴヤノ頭への分岐を大源太山方面へ。豪雪地帯とあって斜面の樹木はすべて根曲がりしている
小さな沢を跨いで赤い鉄梯子を昇る
二つ目の渡渉地点
二つ目の渡渉地点から急登になる
大源太山山頂が見えてきた
標高は高くないが、厳しい風雪のため、森林限界を超えたように樹木がなくなり視界が開けてくる
空気が冷たく、尾根道には霜柱が立っている
鎖やロープの岩場も出てくる
陽が差すに連れ湧き立つ羽虫の大群との戦いとなる。口や鼻、耳や目にまで羽虫が飛び込んでくる

大源太山山頂(標高1,598M)。正面に谷川岳、左がこれから向かう七ッ小屋山
大源太山山頂から湯沢方面を臨む。岩原スキー場とNASPAスキーガーデンのゲレンデや、遠く冠雪した妙高山と火打山まで見通せる

山頂からの下りもロープと鎖にすがっての急降下だ
見上げる大源太山は二つの出っ張りがある

上越のマッターホルンの異名をとる大源太山

清水峠への分岐
七ッ小屋山山頂
七ッ小屋山山頂(標高1,675M)は大源太山より高い
山頂はあまり広くない

幽玄な谷川岳と馬蹄形登山縦走ルート
重厚感のある朝日岳。4年前に途中断念した心残りのある山だ

蓬峠とシシゴヤノ頭の分岐を右へ下る
シシゴヤノ頭目指して下る

大源太山(左)と七ッ小屋山(右)
シシゴヤノ頭(標高1,473M)から謙信ゆかりの道を下る
12時47分、駐車場に到着。駐車スペースに10台、他に路駐が数台いた

大源太山・七ッ小屋山(謙信ゆかりの道周回ルート)

2022年10月27日(木曜日)

 大源太山(だいげんたやま)は苗場スキー場の向かいの新潟・群馬県境の群馬側と、湯沢パークスキー場奥の新潟・群馬県境の新潟側の二つがある。今回登るのは後者で、その尖った山容は上越のマッターホルンとも称されている。
 夜中の3時半に家を出て高速のサービスエリアで温かいうどんを食べ、林道終点の駐車場に6時に到着した。10台置ける駐車場にすでに3台の先客がいた。両サイドに停めている人がドアを開けたまま支度中なので、一台分を開けて停め、身支度を整え準備万端すぐに登山を開始した。
 冬の豪雪のため、山の斜面に沿って悉く根曲がりした植生の中をゆったりした道が続くが、割と川幅のある二箇所の渡渉を対岸まで張られたロープを頼りに越えると、それまでの様相とは異なり、垂れ下がったロープや鎖にすがって一気に標高差を削る急登区間に入る。
 尾根に上がると厳しい風雪によるものか、この程度の標高でも森林限界に達し樹木の育成がなくなり、次第に視界が開けてくる。冷たく澄みきった空気の中、キラキラと斜光を撥ね返す霜を踏んでの登山となるが、陽射しが増すに連れ無数の羽虫が叢(くさむら)から湧き立ってきて、やがて一面避けようもない渦が形成される。口に入り鼻に入り、耳や目にも入ってなかなか爽快なハイキングというわけにはいなかい。

 2時間18分で山頂(標高1,598M)に到着した。標高差868メートルの地図上参考タイムを僅かだが上回った。山頂からは全周囲遮るものの一切ない展望が開けていて、湯沢の街が一望でき、岩原スキー場とNASPAスキーガーデンの雪のないゲレンデが近く、遠く冠雪した妙高山と火打山まで見通せる。
 ここまでの行程でマッターホルンの所以たるシルエットにはお目にかかれていないが、山頂から次なる七ッ小屋山に向かうルートから振り返ることで、その鋭く天を衝く異形を確認できる。
 山頂からは滑りやすい岩場をロープと鎖にすがっての急降下となり、それとは対照的に、鞍部からの登り返しは、大源太山よりも七ッ小屋山の方が標高が上回っているにも拘わらず、勾配が緩く穏やかで、あまり苦にならない。
 清水峠への分岐を経て七ッ小屋山山頂(標高1,675M)に9時43分に到着。大源太山山頂からのタイムはほぼ地図上参考タイム通りだった。
 七ッ小屋山の山頂は広くはないが、ここでリュックを下ろして食事休憩を容れる。
 駐車場を出発して以来ここまで誰にも会わないマイナー登山ぶりだったが、休んでいると私が登ってきたのとは反対方向からポツポツと人が登ってきた。全員が単独者である。この日は天気が好く、谷川岳と朝日岳がそれぞれ幽玄重厚に構えているが、彼らはここで頂上標の写真のみ撮って誰一人休憩しない。聞けば皆ここから清水峠を目指しており、谷川岳と朝日岳を連続で登るいわゆる馬蹄形登山の体現者のようだった。

 谷川岳馬蹄形縦走登山。即ち、土合をスタートして白毛門→笠ヶ岳→朝日岳→清水峠→七ッ小屋山→蓬峠→武能岳→茂倉岳→一ノ倉岳→谷川岳→天神平→土合(またはその逆)を縦走する最強の日帰りコースである。現状私にこれは無理だが、規模を縮小した変則馬蹄形ルートは可能性として興味がある。白毛門→笠ヶ岳→朝日岳と登ったら清水峠から白樺避難小屋に降りてしまい、JR見張小屋を経て土合に戻る旧国道コースである。先月鹿島槍ヶ岳の失敗の原因をハンガーノックと特定し、その克服の証としてこの縮小型馬蹄形登山に挑みたかったのだが、陽も押し詰まっているからと尤もらしい理由を付け、安パイの安達太良山と今回の大源太山に言わば逃げを打った訳である。そんな敗者の目の前を果敢な猛者どもが行く姿は羨ましくも輝いて見えた。
 顔を上げて四年前に途中敗退した朝日岳の長く伸びた稜線を眺める。眼を下に向けると高原のような笹原の絨毯の中にポツンと光る送電鉄塔と、くねくねとした湯檜曽川がキラキラと明るい。こうして現物を間近に俯瞰で見ていると、なんだか出来そうな気持ちになってくる。来年のチャレンジを胸に期し、七ッ小屋山山頂を後にした。
 
 七ッ小屋山からシシゴヤノ頭まで地図上参考タイムの64パーセントで下った。シシゴヤノ頭から駐車場までは59パーセントと、ぬかるんで滑りやすい、決してスピードの出せる状態ではなかった割に、タイムを縮められたことは朗報だった。地獄の悪夢のように苦しめられた爺ヶ岳からの下りを克服できたことは、来年清水峠からの下りに活かせるだろう。
 朝は4台だった駐車場は満車の10台が入っており、他に路駐数台がいた。皆まだ山上にいるのか人は自分の他誰もいない。全裸になって衣服を全てあらため、近くの共同浴場で汗を流し、湯沢駅ビルに立ち寄って寿司と糀アイスを食べてから帰途に着いた。

●登山データ
2022年10月27日(木曜日)
登山口駐車場(標高730M)→大源太山(標高1,598M)、標高差868M
登山口駐車場(標高730M)→七ッ小屋山(標高1,675M)、標高差945M
登山口駐車場(6時12分出発)→シシゴヤノ頭分岐(6時25分)→大源太山山頂(8時30分到着)、登り所要時間:2時間18分
山頂滞在時間:07分
大源太山山頂(8時37分)→清水峠分岐(9時39分)→七ッ小屋山(9時43分到着)、駐車場からの登り所要時間:3時間31分
山頂滞在時間:24分
七ッ小屋山(10時07分下山開始)→蓬峠分岐(10時37分)→シシゴヤノ頭(11時17分/休憩08分)→シシゴヤノ頭分岐(12時35分)→登山口駐車場(12時47分到着)、下り所要時間:2時間40分
全行程:6時間35分

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