Practice Makes Perfect/大ナゲシ〜赤岩尾根縦走
日窒鉱山から眺める紅葉期の赤岩

大ナゲシ山頂(標高1,532M) 赤岩尾根最大の難関、1,583M峰

上落合橋の駐車場
八丁峠への登山口。ここで登山届を出す
日窒鉱山の集落が登山道入り口
これから縦走する赤岩尾根を見上げる
大ナゲシ、赤岩尾根の登山注意書き
大ナゲシと赤岩岳の分岐点・赤岩峠
埼玉・群馬の県境稜線を大ナゲシに向かう
ザイルにつかまってよじ登る難所
岩は脆く剥がれやすい
大ナゲシ山頂(標高1,532M)
赤岩峠から見る赤岩岳西側岩壁
不明瞭なルート
大ナゲシを振り返る
赤岩岳山頂

最初の難関、1,583M峰の前衛岩峰
赤岩尾根最大の難関、1,583M峰
1,583M峰への登り。岩は脆く剥がれやすい
落雷でバーストした樹。稜線に逃げ場はない
P3か?よくわからない
P2下から越えてきたP4方面を振り返る
P2への登り
P2には表示があった
P2山頂
P2から臨むラストピーク・P1(1,589M峰)
この岩をよじ登ればP1山頂だ
P1山頂(標高1,589M)には八丁岳の文字が
P1山頂から、P2以下の縦走路を振り返る

大ナゲシ〜赤岩尾根縦走

2008年8月6日(水曜日)

 梅雨明け後の最大の懸念といえば雷雨である。これだけは何としても遭いたくない。
 今回の登山は両神山(りょうかみさん)を主軸にした埼玉・群馬県境岩稜の縦走である。すなわち大ナゲシから赤岩岳(あかいわだけ)を経由し、赤岩尾根を縦走した後、両神山にまで至る岩場重視のルートである。

 まず、両神山の登山口のひとつである上落合橋にクルマを置いたら、両神山には登らず林道を日窒(ニッチツ)鉱山まで下ることからはじまる。そこから大ナゲシに登りあげ、稜線伝いに赤岩岳に登り、そのまま赤岩尾根を縦走して両神山まで抜け、両神山剣ヶ峯から元の上落合橋に降りて来るという行程だ。
 このルートはクルマを置いた上落合橋を中心にぐるりと一周するコースで、天候の急変に応じて途中離脱も可能である。といっても赤岩尾根だけは逃げ場がないので、安全な午前中に抜けなければならない。
 以上のような計画を立てたのだが、結果から言うと破綻した。

 赤岩尾根の岩稜は埼玉県屈指の難関と言われるもので、登攀(とうはん)用具と登攀技術が必須とされている。妙義山縦走の経験から、この日はホームセンターで購入した20メートルのロープをリュックに忍ばせてある。これだけでも、あれば精神的にずいぶん違うだろう。
 前日、前々日と激しい局地的雷雨があり、この日の予報は曇りだったが、出発予定時刻の朝5時頃には雨が降っていた。ただでさえ危険な岩場が主体であり、それが濡れることは、更に危険度が増すことを意味している。

 テレビの天気予報を見ながら朝食をとっていると、今日は曇りだという。
 そのうち雨も小降りになってきたので、とりあえず乾くことを期待して出掛けてみたが、小鹿野町を越え、三田川集落を抜ける頃には、県境向こうの群馬側から閃光と雷鳴が伝わってきた。時に大きい落雷音も聞こえ、前途は必ずしも明るくなかった。
 上落合橋に着いたときも小雨がぱらついていたが、空は恢復(かいふく)に向かっているように見えた。
 7時30分に登山開始。既にこの時点で予定よりも1時間30分の遅れである。両神山まで周るのは難しくなってきた。
 服とリュックに撥水スプレーとダニ避けスプレーを吹きかけ、上落合橋の登山道入り口で登山届を出す。そこには登らず、踵(きびす)を返して林道を下る。まずは大ナゲシに登るため日窒鉱山に向かった。
 やがて雨は上がり、両神山に懸かっていた雲も切れ、青空が広がってきた。上落合橋から30分も歩くと廃墟と化した日窒鉱山の集落に着く。見上げると、宗四郎山と、これから縦走する赤岩尾根が頭の上から覆いかぶさって来る。気温もだいぶ上がってきており、これなら稜線に到達するころには岩場は乾きそうだった。

 大ナゲシは県境よりも群馬側にあるため、ここからその姿を見ることはできない。
 この集落の入り口には無断駐車禁止の看板とバリケードが敷かれていて、そういう者が後を絶たないことが窺える。
 バリケードの脇をすり抜けて中に入る。社宅の道を上り詰めて行くと、鉄の門扉が閉まっていて行き止まりになっているが、その脇の草むらの中に登山道の入り口が見える。そこには大ナゲシと赤岩尾根の2枚の警告看板が立っていて、平成12年にどちらも遭難事故が発生した旨が書かれていた。
 看板の先は草むらで、これをかき分けて行く。幅の狭い鉄板の橋を渡り登山道に取り付く。ここから赤岩峠までは普通の分かりやすい登山道だが、相変わらずというか、どうも秩父の山というのは面白くないというのが固定観念になりそうだった。最近は苦痛にさえ感じるようになってきた。登っている間ひとつも楽しいことがなく、ただ辛さだけがある。足は重くなり、スピードも上がらなかった。

 埼玉と群馬の県境の稜線が赤岩峠である。ここから右に行けば赤岩尾根だが、まずは大ナゲシを攻略すべく左の道を行く。
 尾根道に入ると岩場も出てくるが、意外に藪化しておらず綺麗な道だった。しばらく行くと『大ナゲシ→』の表示がある。
 尾根から群馬側に下ってゆくと、突然垂直に近い岩の壁に行く手を阻まれた。上はどうなっているのか見えない。
 岩の上からザイルが一本ぶら下がっていた。垂直に近い5メートルほどの濡れた岩壁をこのザイルに身を託して登らねばならないようだ。まず最初の試練である。

 ザイルというのは岩登り専用の命綱のことで、クライマーの墜落の衝撃を少しでも緩和するために、普通のロープよりも弾力を持たせてある。この感触に慣れていない一般登山者は、まずこの弾力に違和感をおぼえるだろう。ザイルをつかんで引くと伸びるのである。しかも意外に細い。自転車の荷台のゴム紐のようで、これに身を任せて大丈夫なのかと不安になる。もしこれが切れれば命を落とすことにもなりかねないのだが、ザイルに頼らずに登るのは極めて困難であり、これを取り付けてくれた人に云わせれば、嫌なら使うなということになるだろう。ここは専用の道具ということで信頼するしかない。
 ザイルで登って少し歩くと、大ナゲシ山頂(標高1,532M)の岩峰が突如目の前に現れた。

 ナゲシ(長押)とは和室に用いる装飾の板のことで、学校でもらった賞状を額に入れて飾るのに便利である。そのナゲシとこの山の名前が関係あるのかは不明だが、とにかくこの山頂部は岩の塊だった。
 ここには鎖が下がっている。ここの岩は非常に脆く、つかんだ岩、踏んだ岩が剥がれやすい。剥がれた岩は当然下に落ちて行くので、下に人がいる場合は大変危険であるし、何より自分が滑落死する危険がある。
 よく岩登りの基本は三点支持だという。手足四本のうち一度に動かして良いのはどれか一本のみで、残りの三本は岩へのホールドを解いてはいけないということだが、ここ大ナゲシの場合は、岩が脆く剥がれやすいため、力を一点に集中させずに、二点、三点に分散して、岩を剥がさないように努めねばならないという意味になるだろう。
 立ち木もあるが、これも根付きが弱く岩ごと浮くので、あまり信用してつかまないほうがいい。
 山頂到着が9時40分。駐車場出発から2時間10分掛かった。どうも今日の調子は芳しくない。

 山頂には着いたが、すっかり雲に蔽われ景色はほとんど見えなかった。時折雲の中から姿を覗かす岩稜を、両神山の一部である狩倉岳かと思っていたが、実は赤岩岳と赤岩尾根だということに気付かなかった。方向感覚の狂いはこの時から生じていたのだが、コンパスを出して思い込みを修正することを怠っていた。このことがのち災いする。
 シャッターチャンスをしばらく待ったが、雲は霽(は)れそうでいて霽れず、あまり時間もないので下山することにした。もと来た道を赤岩峠まで引き返した。

 赤岩峠から見る赤岩岳西側岩壁はまさに断崖絶壁であり、まさかここを登るんじゃあるまいなと思いながら歩いて行くと、道はその断崖を避けるように左側を捲いて行き、裏側の鞍部から登るようになっていた。この時点で、これから縦走する赤岩尾根に背を向けているものと思い込んだ。
 赤岩尾根に背を向けはするが、完全縦走のためには赤岩岳の頂上を素通りするわけには行くまいという考えが、そのまま先入観として植え付けられた。

 垂直断崖を捲いて裏側から鬱蒼とした森を登っている途中で、ルートを示すテープを見失った。もともとこのあたりはルートが不明瞭だったのだが、倒木が行く手を阻み、足許をズボッと踏み抜いたりすると、さすがにルートをロストしたことに気が付いた。このような場合、面倒でもわかる場所までもどるのが鉄則だが、どうせこのまま登れば頂上に出るだろうし、そうすればルートは見つかるはずと多寡をくくって、そのまま強引に直登した。これが災いに拍車をかける結果となった。

 やがて山頂(標高1,570M)に出た。立ち木に『赤岩岳』とテープで書いてある。ここはあの断崖絶壁の頂上のはずだが、狭い上に樹木に囲まれ、周囲に何の展望もなく、断崖の上にいるという実感はまったくなかった。
 とりあえず座って休憩する。
 座って周囲を見渡すと、深い森に向かって二本のルートが延びていた。私は途中で道を見失ったため、どちらのルートも通らずにここまで登って来たわけだが、ここで遂に、山での行動を支配する『山勘』に狂いが生じた。

 ここはつまり、あの垂直断崖の頂上である。あの垂直断崖は登れないため、裏側の鞍部から捲いて登って来た。その登って来た本来の道がまず一本ある。だがもう一方の道は一体どこに通じているのか。私は垂直断崖に通じていると直感した。あの断崖を登ったロッククライマーが、この道から頂上へ至るのだと断定した。裏側の鞍部から捲いて戻って来たため、赤岩尾根とは反対向きに歩いてきたと思っていた。しかし持参した6万分の1の地図を広げてみても、どうも合致しない。合致はしないが、直感と先入観で無理やり辻褄を合わせた。自分の方向感覚に何の疑いも持たなかった。捲き道の途中で見た鞍部の稜線分岐点、あれこそが赤岩尾根への分岐と断定した。

 鞍部の分岐から少し登ると、そこは行き止まりだった。とてもこれ以上は進めない断崖の谷だった。
 あの鞍部は偽物だった。雲の間隙から先ほど登って来た大ナゲシが見えているのだが、この時に至って尚、この山は両神山の一部の狩倉岳だと思い込んでいた。つまり、群馬側と埼玉側をまったく逆にとらえていたのである。
 致命的ミスを犯しているここに至っても尚、コンパスを出して修正をしなかった。
 あれが狩倉岳とすると一体赤岩尾根はどこなのか。雲間からそれらしい山影を探すが見当たらない。非常に不可解だった。
 眼前には赤岩岳の垂直断崖が見えている。これに続く尾根は、もはやこの背後にあるとしか考えられなかった。ということは、山頂で見た垂直断崖に続くと思い込んだあのルート以外にないことになる。今一度地図を見直す。
 どうもわからない。赤岩峠から歩いてきたルートが地図と一致しない。混乱に収拾が着かないが、今一度山頂に戻ってあのルートを行くしか、もはや道は残されていないようだった。
 再び赤岩岳に登り返した時は30分のタイムロスを出していた。

 この時点で両神山は断念した。しかも追い討ちを掛けるように小雨がぱらつきだし、雷鳴も遠くから聞こえてきた。
 雷雲の中、身を隠す場所のない露岩の尾根に出ることは自殺行為でしかない。地図上参考タイムでは八丁峠まで4時間の尾根歩きとなっている。ここで判断を誤ってはならない。リュックを下ろし、腰を下ろして昼食休憩にした。
 あの30分のロスがなければ既に尾根に出ていただろう。逃げ場のない岩尾根で落雷に打たれて墜落死したかもしれない。あれは何か見えざる力の警告だったのかもしれない。ゼリーとビスケットを食しつつしばらく様子を見ていたが、雷は遠くで鳴っているものの、それ以上近付く気配は感じられなかった。
 雨もやんできた。今日は一日こんな天気なのだ。これは大丈夫だ。赤岩尾根縦走を決断した。

 しばらく樹木に囲まれた尾根道を歩くと最初の岩場に到着する。いきなりの難関である。これを登るのかと見上げ、岩の正面、左右にルートの痕跡を探すと、左にザイルが二本架かっていた。ここを登るようだ。
 岩が濡れて滑るのでザイルだけが頼りである。まず下にある短いザイルをつかんで登り、次に上の長いザイルに持ち替えて登る。
 それにしても世の中には親切な人がいたものである。この二本のザイルのお蔭で難なく登れたが、これが無理ならこれ以上進んではならない。

 結論から言ってしまえば、ここから先は死域である。これを登ったが最後、行くのも、戻るのも、命懸けの領域になる。ここは引き返せる最後のポイントなのである。
 地図によると、最も西側の赤岩岳山頂から、1,583M峰、P4、P3、P2、P1の五つのピークが東の八丁峠に向かって伸びている。今越えた最初のピークは1,583M峰だろうか。雲が濃くなっているので稜線の全容を把握することができないのと、ピークに何の表示もないことから場所を特定することができない。
 最初のピークを越えて少し行くと、更なる難関が現れた。その姿はもはや悪魔的で、マジでこれを登るのかと少なからぬ後悔に襲われた。やはりここは普通の登山ルートではない。普通の登山がしたい人は決して入ってはいけない山である。
 実はこれが1,583M峰である。先程越えてきたピークは名もない岩峰に過ぎなかったわけだが、この1,583M峰を前にしてこれは無理だと思っても時既に遅い。これが無理なら先程登った岩峰に引き返しても怖くて降りられないだろう。ここまで来たらもはや肚(はら)をくくるしかない。

 崖を見上げルートの痕跡を探す。正面の滑り台のような大岩は途中に大きな亀裂があるため、ここを登るのは非常に困難である。左側を捲けるかと見ると、断崖絶壁でこれはとても無理だ。残る右側を見ると、かなり傾斜のついた断崖の木に青いテープが巻かれていた。
 こっ、これか?これはちょっとひどいのではないか?
 傾斜のきつい日陰の濡れた断崖である。足場はなく、岩が乾いていれば爪先でどうにかホールドできるが、この濡れた状態ではかなり厳しい。岩場によくある『カニの横ばい』を、補助の鎖なしでやらねばならない。
 横ばいを制したその先には登攀用のルートが窺える。

 進むには他に選択肢がない。意を決してそろりと崖に取り付く。
 濡れた岩の僅かな窪みに指先を引っ掛け、つま先を引っ掛け、少しずつ横に進む。横ばいは2メートルほどで終わるが、もし足を踏み外せば5メートルほど滑落し、這い上がるのは困難だろう。
 横這いをクリアすれば、その先の登攀ルートには親切な先達が残したロープが垂れ下がっているので、あとはこれにすがって登ればよい。ただここも大ナゲシ同様非常に岩が脆く剥がれやすい。
 この後、P4、P3、P2、P1と続くが、既に難所は越えたといっていいだろう。後はたいしたことない。ただこのころ俄かに周囲の雲が濃くなり、遠雷が再び聞こえ出した。どうやら雷雲が追って来ている気配がある。
 読みが外れた恰好だが、こうなったらさっさと逃げねばならない。稜線上で見かけた落雷でバーストした樹が早く逃げろと警告していた。

 逃げるとは言っても、足場は濡れた狭い岩場である。焦りは禁物だ。周囲はすっかり雲に囲まれ、だいぶ視界も悪くなってきた。尾根道も真っ直ぐではなく、妙に右に旋回していて、仕舞いにはUターンしているような感覚にもとらわれる。相変わらずピークには何の表示もなく、既に予定の五つは越えているはずなのだが、一向にこのアップダウンが終わる気配がない。ここで初めて左手のプロトレックのコンパスを作動させた。最初は北東に進んでいたが、途中で南東に変わった。今はほぼ東に向かっている。どうやら間違っていないようだった。

 途中、幅50センチほどの岩場の亀裂が道を横断しており、亀裂の手前から左に降りる踏み痕が着けられているが、降りると違う方向に誘導されルートを誤る惧れがある。ルートは亀裂を飛び越した先に続いているので、ここは注意したいところだ。
 もう五つどころではない、だいぶピークを越えたなと思った先に『P2』の表示が現れた。このことは少なからずショックである。この先にまだP1が控えていることになり、その間の無名のピークに至っては、いったいあといくつあるのか分からない。雲で視界を奪われるというのが、これほどまでの神経戦になろうとは思わなかった。

 最後のP1によじ登ると、山頂の岩には『八丁岳』と書かれていた。右手の岩には『↑両神山』の文字が見られ、朽ち掛けてはいるが『←八丁峠・両神山』の標識も立っている。遂に赤岩尾根をクリアした。
 おそらく眼前にあるはずの両神山は雲でまったく見ることができないが、どうやら雷雲も追って来るのをやめたようだった。
 これで大きな危険はすべて去った。後は八丁峠に降りるだけなので、リュックを下ろして休憩した。
 休んでいる間に雲が切れてシャッターチャンスが訪れるかもしれないと期待を掛けたが、結局虚しく終わった。

 八丁峠に着いたのが15時ちょうどだった。この先は両神山へと続く稜線であり、ここからクルマを置いた上落合橋に降りられる。振り返ると降りてきた道には『この先危険、立入り禁止』の看板が立っていた。
 当初の計画ではここから続けて両神山を縦走する予定だったが、時間が遅くなったこと、時間の割に暗くなったこと、どうせ雲で何も見えないだろうということを総合的に判断して断念した。おとなしく上落合橋に下った。
 この道は両神山の登山口にもなっているのだが、意外にも一部で藪化していた。藪を掻き分け、岩肌を這うような滝が見えれば、その先の樹間に白いガードレールが見えてくる。駐車場に着いたのが15時40分。全行程は8時間10分だった。

 今回は困難な岩場とはいえ、先達が着けておいてくれた登攀ルートとザイルのお陰で、深刻に難しい個所はなかった。持参したロープはリュックから出さずじまいだった。脆い岩場でのホールドについては、スキーでの経験が役立った。
 スキーでは斜度30度の氷の斜面を滑ることもある。このような斜面ではスキーのエッジをグリップさせるために敢えて谷に飛び込む様に上体を斜面から離さねばならず、かろうじて掛かっているエッジを外さないための力加減が必要になる。そういう体の使い方が染み付いたスキーヤーにとっては、脆く剥がれやすい岩場登りに対しても、ある程度通じるものが感じられた。
 一方でルートファインディングや状況判断に関しては、経験不足が露呈した。
 それにしても、いかに平日の登山とはいえ、これまでは最低一人以上の人間には会ったものだが、今日は夏山シーズンというのに天気のせいか、まったく誰にも会わなかった。赤岩尾根はともかく、ここから登る両神登山者もいなかったようで、八丁トンネルの反対側の大駐車場も含めて誰もいなかった。誰もいないので、びしょ濡れになったパンツも道端で履き替えた。
大ナゲシ〜赤岩尾根縦走ルートの全容

●登山データ
2008年8月6日(水曜日)
上落合橋駐車場(標高1,140M)→赤岩尾根P1(標高1,589M)、標高差449M

上落合橋駐車場(7時30分出発)→日窒登山道入り口(8時00分)→赤岩峠(9時00分)→大ナゲシ(9時40分到着)、所要時間:2時間10分
大ナゲシ(休憩:15分/9時55分出発)→赤岩峠(10時30分)、所要時間:35分
赤岩峠(休憩:5分/10時35分出発)→赤岩岳(11時05分到着)、所要時間:30分
※赤岩岳山頂で休憩:10分/11時15分赤岳山頂出発〜ルートミスし彷徨〜11時45分赤岳山頂到着/赤岩岳山頂で昼食休憩:15分
赤岩岳(12時00分出発)→P2(14時00分/休憩:10分)
P2(14時10分出発)→P1(14時30分/休憩:15分)
P1(14時45分出発)→八丁峠(15時00分)→上落合橋(15時40分到着)
全行程:8時間10分

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