湯田中渋温泉郷 志賀高原の玄関口にあたる湯田中渋温泉郷は、湯田中、新湯田中、穂波、星川、安代、渋、角間、上林、地獄谷の九つの隣接する温泉街からなる。大きい温泉地だけに外湯もたくさんあるが、扉はすべて施錠されていて、あくまでも地元用、宿泊者用というスタンスを採っている。勝手に誰でも入れるというものではない。 しかし、中には日帰り観光客に門戸を開いている外湯もあるので、そういったものを紹介して行く。
志賀高原は大小21のスキー場の集合体(2006年現在)で、約400ヘクタールのゲレンデを1枚のリフト券で滑走できる。 とはいえ、各ゲレンデの接続は必ずしもスムーズではなく、時には登りを強いられ、道路横断を強いられ、完全に分断されたエリアにはシャトルバスかクルマで行かなければならないなど、1日ですべてのコースを滑るのは不可能に近い。 その中で単独最大規模を誇るのが、コクド系の焼額山である。山頂からは裾広がりにいくつもの林間ロングコースが複雑に展開し、プリンスホテル西館、南館、東館と、別々のベースに滑り込むレイアウトになっている。 林間コース故に俯瞰的全貌がつかみにくく、慣れないうちはコースマップを携行していないと、目的のベースに滑り込めないほどだ。 奥志賀高原は焼額山に隣接する、志賀高原最北端のゲレンデである。皇族も訪れる静かな雰囲気に包まれている。 ※【2010シーズンから前山と笠岳が営業休止】 ※【2019シーズンは木戸池のリフトがなくなり全18エリアとなっている】 |
湯田中駅前温泉・楓(かえで)の湯 |
共益会4号ボーリング源泉/ナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)
楓の湯
源泉温度93.2℃、湧出量毎分100リットル
長野電鉄の終着駅である湯田中駅に付帯している綺麗な日帰り入浴施設。料金が300円と安く、シャンプー類まで備え付けてあるのがうれしい。表には無料の足湯もある。
男女それぞれに内風呂と露天風呂があり、だいたい1ヶ月毎に男女が入れ替わるらしい。
センター系だけあってお湯は適温だが、露天の方が放熱もあって少しぬるめ。ほとんど無色無臭で、なめると少ししょっぱく、僅かにとろみが感じられる。
露天は塀で囲われていて空間が狭く、景観も特にない。
駅前の駐車スペースは5台程度しか置けないが、建物の反対側にも駐車場がある。
営業時間:10時〜21時/入浴料:300円/第1火曜日定休
(2006年5月)
湯田中温泉の外湯は、湯田中大湯、綿の湯、わしの湯、滝の湯、白樺の湯、千代の湯、脚気の湯、平和の湯、みろくの湯と9湯あるが、日帰り客には開放していないようだ。日帰り用としては、この楓の湯の他は、ホテルや旅館の温泉巡りというのをやっている。
湯巡り手形は、ここ楓の湯か、道の駅やまのうちで購入でき、料金は1,200円。宿泊者は各宿で600円で購入できる。加盟する20軒ほどの宿泊施設の中から、好きな3軒を選んで入浴でき、手形の有効期間は半年に設定されている。
新湯田中温泉/ホテルゆだなか・湯田中ヘルスケアーセンター |
やまはね温泉/含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)
ホテルゆだなか
源泉温度58.2℃、湧出量毎分115リットル、pH=7.61、蒸発残留物=1,58mg/kg
湯田中駅からも近いホテルゆだなかの日帰り温泉施設。
加水なし加温なし循環なし消毒なしの100%源泉掛け流しで、高いところから滝のようにドバドバ投入されているお湯は若干焦げ臭く、浴槽に体を沈めるとブワッと綿ゴミ状の湯の花が舞い上がる。
駅前の楓の湯は常に駐車場が満車だが、こちらは空いているのでのんびり寛ぐのにちょうど良い。料金も安く満足度の高い温泉と言える。コインロッカーは有料。
営業時間:12月〜3月の終日、及び4月〜11月の金土祭祝前日は24時間営業、4月〜11月の平日は10時〜24時/入浴料:500円
(2019年4月)
渋温泉には九つの外湯があり、他の温泉街同様、地元の人達と宿泊者しか入れないことになっている。扉には鍵(オートロック)が掛かっていて、この鍵がなければ入浴できない仕組みになっており、この鍵は宿泊者に対してのみ各宿で貸し出すことになっているからだ。 観光パンフレットにはあくまでも宿泊者のみと案内されているが、日帰り客が利用できる手段が用意されている。 有料の渋温泉大駐車場にクルマを停め、且つ記念の手ぬぐいを購入することで、この鍵を貸してもらえる。駐車料金は1時間までなら300円、超過するなら500円を事前に支払う。手ぬぐいは300円だ。 この手ぬぐいに各湯のスタンプを押し、最後に高薬師に詣でれば、苦労を流し、厄除け、安産育児、不老長寿など満願成就するという仕組みになっている。もちろんスタンプラリーはしなくても構わない。 入浴時間は6時から22時までとなっているが、駐車場の受付には昼休みがあり、12時から13時まで無人になってしまう。この間に行っても温泉キーの入手はできないので注意が必要だ。緊急時の電話番号が書いてあるが、電話しても13時まで待つよう言われるので、温泉街に出かけて昼食をとるなりして時間をつぶすしかない。また温泉キーと引き換えにクルマのキーを預けなければならない。 お湯は非常に熱いので火傷しないよう注意を受けるが、これは誇張ではないので留意したい。湯中り防止にスポーツドリンクを携行したほうが良いだろう。 渋温泉の外湯は草津や野沢のそれに比べ、コンパクトにまとまっているので巡るのは楽だが、それでも2時間半を要した。 |
一番湯/初湯 |
湯巡りもまずどこから入るかを思案するに、順番通り一番湯からという人は少なくなかろう。しかし、いきなり出鼻をくじかれるというか、その洗礼を受けるというか、これは生半可な物ではない。
初湯 かなり熱いお湯
土色に濁ったお湯、板張りの浴室など如何にも情緒があるが、お湯はかなり熱く、おそらく40℃台ではない。湯口からは容赦なく熱湯がズバズバ投入されているので、桶でお湯をガバガバくみ出し、ドバドバと加水してなんとか入った。
私の後に来た人は、裸にはなったが遂に入れず、諦めて次に行ってしまった。ちなみに順番通りに周ると次は二番湯だが、これも比肩した熱湯である。
今回はゴールデンウィーク過ぎに来たため、志賀高原も渋峠、横手山、熊の湯以外はシーズンを終了してしまい、平日でもあることから温泉街は閑散としていた。もう少し人のいる時期なら、あるいは丁度良い湯加減になっているのかもしれない。
(2006年5月)
二番湯/笹の湯 |
源泉は荒井河原比良の湯
笹の湯 とてつもない熱さ
ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉(低調性・弱酸性・高温泉)
源泉温度75.7℃、pH=4.3
どう見ても鉄泉で、臭いも味も鉄錆のそれがする。この日入った中では最も赤く濁っていた。
お湯の投入は止められており、掛け流しではないのかと不満に思ったが、理由はすぐにわかった。浴槽に張られたお湯はとてつもなく熱く、そのままではとても入れない。お湯を投入すれば温度は更に上がるだろう。
桶で湯をガバガバ汲みだし、ドバドバと加水してやっと入った。浴感はつるつるの対極的で、肌はまったく滑らなくなる。
すべて周ってこその厄除け外湯巡りであるが、一番湯から順に周って来た人は、あまりの熱さの連続に、ここで脱落するかもしれない。あるいは厄除けというものは、このくらいでないと有り難味が湧かないものかもしれないという気もする。これだけ熱いのに耐えられれば、憑いているモノも落ちたと得心できるだろう。
(2006年5月)
三番湯/綿の湯 |
有料駐車場に最も近いことから、一番最初に立ち寄ってみた。
綿の湯 適温だった
分析表は二番湯と同じものが張ってあったが、見た目は違う。浴槽の底には赤錆がびっしりこびりついていたが、お湯は至って透明で、触って確かめてみるまでお湯が無いかのような錯覚に陥る。
お湯の投入は止められていたが、温度は適温だったのでじっくりと入れた。源泉掛け流しではないのかと不満に思ったが、その理由は次に行った二番湯で思い知らされることになる。お湯を出しっ放しにしておくと、入浴不可能な温度に達してしまうのだ。
(2006年5月)
四番湯/竹の湯 |
湯田中渋温泉郷にあっては、お隣にあたる地獄谷温泉から引湯している。猿が入ることで有名な温泉にここで入れてしまう。
竹の湯 木造の浴槽
お湯は透明で無味無臭、浴感はさらりとしていて、何とか入れるものの温度は熱めだった。
(2006年5月)
六番湯/目洗の湯 |
浴槽が広く、お湯が掛け流しになっている割には温度も他に比べ厳しくなく、もはや適温の範疇に入る。
目洗の湯 広い浴槽
無味無臭の透明なお湯に糸屑状の湯花を多く見られ、渋温泉にあって独自色を醸し出している。
あまり癖が無く、リラックスした入浴を楽しめる。最も観光客受けする施設のひとつだろう。
(2006年5月)
七番湯/七操(ななくり)の湯 |
透明な熱めのお湯が張られているが、なんと加水用の蛇口のハンドルが外されている。他の蛇口から桶で何杯か水を入れて何とか入った。中で動かずにいれば何とかいられるが、動くとしびれるほどに熱い。
七操の湯 しびれるほど熱い
七つの病気に効くとか、七回入浴すれば全快するとか、そういう由来があるらしい。
(2006年5月)
八番湯/新明滝の湯 |
掛け流しのお湯と、加水用のバルブ双方が開いており、見事に適温になっていた。他の多くの浴場では、加水バルブは出るときには閉めるよう但し書きがされていたが、ここにはその表示が無い。熱くて長湯ができない施設が多い中、じっくりとリラックスした入浴を堪能でき、少しはお湯の効能にも預かれたかもしれない。
新明滝の湯 適温だった
駐車場でもらったパンフレットによると、ここ八番湯の効能は、婦人病に効き、子宝に恵まれるということである。
(2006年5月)
九番湯/渋大湯 |
渋大湯源泉
渋大湯 広い浴槽 道祖神 スキーと温泉だよ
源泉温度62.6℃
道路から階段を降りた一段下にあり、男女浴室の入り口はそれぞれ建物の反対側にある。道路からの階段もそれぞれに対してついている。
男湯の前には夢ぐり願い処とか銭洗い温泉とかがあり、屋上には足湯が乗っかっている他、道祖神が祀られていたりと、なかなか賑やかな佇まいだ。向かいの長く急な石段を登れば、この厄除け湯巡りの締めくくりとなる高薬師がある。
そんな中で私が特に気に入ったのが、道にある石造りの欄干の欄間の造作である。
これはスキーと温泉をモチーフにしたもので、こういった秀逸な物にはなかなかお目に掛かれない。スキーと温泉のファンならば、必見のチェックポイントである。
結びの湯として、前述のような観光要所の感が強いが、肝心のお湯の入り心地はどうであろうか。
まず浴槽が広く大勢で入れる。浴室全体も含めて雰囲気の良い木造である。浴槽の真ん中に仕切り板が入れられていて、熱湯とぬる湯を分けているという心尽くしが窺える。
が、しかし。実際には仕切り板はすっぽり湯中に没してしまっていて、加水されて無い状態では両方とも同じ温度になってしまっている。利用者が多ければこういう事はないのだろうが、この日の設定温度は、かなり熱い。湯口からは火傷するような熱湯がガボガボ投入されているので、水をドバドバ入れながら、その加護の元に何とか浸かるしかなかった。熱いのが苦手な人は辟易としてしまうに違いない。
脱衣所を挟んだ隣には、温泉熱を使った蒸し風呂(サウナ)もある。
(2006年5月)
番外湯/信玄竈(かま)風呂 |
源泉は比良の湯、薬師の湯(寺東) ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉(低調性弱酸性高温泉)
信玄竈(かま)風呂 蒸し風呂
源泉温度68℃、pH=4.2
九つの外湯の番外湯であり、こちらは別途350円の入浴料が掛かる。温泉キーは必要なく、他の九湯巡りとは切り離して単独で利用できる。宿泊者専用の九湯巡りとは違い、日帰り利用に開放されている。
竈(かま)風呂とはつまり和風サウナである。信玄を冠しているところを見ると、由緒あるサウナなのであろう。
入り口を入った正面の階段を地下に下り、頭をぶつけそうな低い鴨居をくぐって脱衣所に入る。木製のロッカーがあるが施錠はできない。
脱衣所から最初の扉を開けると小さな内風呂がある。これは例の鉄っぽい熱湯で、そのままでは長時間の入浴には耐えられないが、浴槽が小さいので加水して冷ますのは容易であろう。ひとつだけだがシャワーも備えられている。その奥の扉を開けるとかま風呂である。
ドーム状の窯の内部にござが敷かれていて、扉を開けるとそのござの匂いが熱気とともに鼻を突いてくる。枕が4つほど並べられているのでそこに仰臥すると、ござの下から熱気がムンムンと立ち上っている。窯に放り込まれたピザになった気分にさせられる。
こういうサウナは司馬遼太郎の時代劇小説などにもしばしば登場するが、労咳を患っていたという信玄も湯治湯として使っていたのだろうか。寝転がって大きく深呼吸をすると、なるほど気持ちが良い。
館内には、武田信玄に関する展示物があり、ちょっとした資料館となっている。
営業時間:10時〜18時/毎週木曜定休/入浴料350円
(2006年5月)
角間温泉/大湯 |
薬師の湯、みろくの湯の混合泉/ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
大湯 適温のお湯
源泉温度73.2℃、
角間温泉は長野県にふたつあり、ひとつは上田市、もうひとつはここ山ノ内町である。
志賀高原からの帰りだと、国道292号線のループ橋をぐるりと下り、上林のチェーン脱着場(トイレあり)を左手に見て通り過ぎると、角間温泉の標識のあるランプがあるのでここで降りる。わくわくの湯の先のT字路を左折し、最初の信号沓野を左折する。国道の上を交差する跨線橋を渡りT字路を左折すれば角間温泉に着く。道の真ん中に大湯が立ち塞がっているのですぐわかる。
角間温泉には数軒の温泉宿の他に大湯、滝の湯、新田の湯という3つの共同浴場があるが、共同湯の扉は施錠されていて、地元の人と宿泊客用である旨が表示されている。しかし大湯の前にある黒鳥商店に頼めば立ち寄れるという。
黒鳥商店に入浴料300円を支払いクルマのキーを預けることで共同湯の鍵を貸してもらえる。鍵は共通で、3つすべてに入れるが、清掃時間に当たれば入れない。清掃は地元住民が行っており時間は不定である。駐車場は黒鳥商店の道向かいに6台置けるが、手前に3台置くと奥の3台は出られないギチギチの狭さで、しかも商店のクルマが既に3台置かれているため、大きめのクルマだと1台でいっぱいになってしまう。
木製の鍵を鍵穴に差し込むとジーっとブザー音がしてロックが外れる。ドアはオートロックである。中は浴槽と脱衣所が一緒になっている。誰もいないので渋温泉同様激熱を予想していたが、意外にも適温だった。無色無臭のさっぱりしたお湯である。
入浴料300円、入浴可能時間8時30分〜16時
(2019年4月)
角間温泉/新田の湯 |
角間温泉は奥から大湯、滝の湯、新田の湯が50メートルほどの間隔で並んでおり、泉質は一緒である。4月になり、志賀高原スキー場の一部はすでに今期の営業を終了しているが、この日は4月にしては激しすぎる地吹雪となり、道路も見えないほどの大雪で、奥志賀高原まで行ったが風雪のためリフトの運行は見合わせとのことだった。仕方なく一旦山から降り、朝8時半からの朝風呂となったわけで、誰もいないのでさぞ激熱だろうと想像していたところ適温だったは意外だった。無色透明無臭の湯の中に黒い粒状の湯花が見られた。
新田の湯 適温のお湯
この後再び奥志賀まで行ったがやはり運行見合わせで、焼額山も視界不良っぽいので、一ノ瀬まで降りてのスキーとなった。
(2019年4月)
立ち寄り温泉目次 Home |
Copyright © 1996- Chishima Osamu. All Rights Reserved. |