●リフト攻略

スキー場で初心者をびびらせる恐怖のマシーン、リフト。これに乗れなければもはやセンターハウスのゲーム機を友にするしかありません。これまで筆者が出会ったリフトについて攻略法を紹介します。

クワッドリフト(難度3)

 運搬力の高い4人乗り高速リフトとして、大勢のスキーヤーが集まるセンターハウス前のコースなどに設置されています。
 リフト乗り場には行列が出来るので、行儀良くその後ろに並びます。ストックを支えにしてスキーを交互に前に出して歩いて進むか、ストックで漕いで行列について行きます。このとき前の人のスキーを踏んだりストックを隣の人のスキーの上に突いたりしないよう気をつけましょう。
 乗り場には係員がいるので指示に従います。リフトに乗るのが初めてなら係員にその旨を告げれば親切にフォローしてくれます。
 クワッドリフトは通常はワイヤーに固定され高速で運転されていますが、乗り降り場ではリフトは高速ワイヤーからはずされ低速ベルトに引き渡されます。このためスキーヤーの乗り降りは安全にゆっくり行われ、その後再びワイヤーに引き渡されると高速で運転します。
 このタイプのリフトなら初心者でも余裕を持って乗り降りできますので、落ち着いてシートにお尻を深く沈め、頭上の安全バーを下ろします。ストックを落とさないよう注意してください。
 リフトが降り場の近くまで来たらリフト放送の指示に従いセーフティバーを上げ、スキーの先端部を上げます。これはスキー板が着地点につき刺さるのを防ぐためです。 ストックを胸の前に構えランディングに備えます。降者線を目安にスキーをまっすぐに置き、ストックを突いて立ち上がりそのまままっすぐ滑り出します。失敗しても大丈夫です。降り場にも係員がいるため、降りるとき転んでもすぐリフトを止めてくれるので後ろからドつかれる心配はたぶんありません。
 フードの着いたタイプもあり吹雪いている時には重宝します。フードは降り場で自動開閉するので自分ではね上げる必要はありません。

ペアリフト(難度5)

 一番お目にかかるのがこのタイプです。これはワイヤーに固定されたままなので、乗り降り場でも空中でも同じスピードで運転していて、空中では遅く、乗り場では速く感じます。初心者コースにかかるものは比較的ゆっくり運転しており、上級者コースにかかるものは比較的速く運転しています。
 信号や係員の指示に従い乗者線まで進み、顔を後ろに向け迫るベンチと自分のおしりとの間合いをはかります。ベンチの手すりがおしりに食い込まないよう注意し、ストックを持つ手は高く上げます。ストックを地面についているとベンチに座った瞬間にベンチと地面に挟まれストックが折れるか、自分がベンチから転げ落ちる危険があります。慣れている人は両ストックを片手で持って、もう片方の手でベンチの衝撃を抑えたりしますが、初心者は係の人にベンチを抑えてもらいストックを地面との間に挟まないよう注意してください。
 座った瞬間スキー板も出来れば浮かせます。板をまっすぐ滑らせないとストックと同じ理由でやはりベンチから落ちる原因になります。

ロープウェイ(難度1)

 長距離大量輸送用として比較的大型のスキー場にかかっています。概ね15分に1本の割合で出ていて、そのため駅には行列もでき待合所も用意されています。座席は少しありますが基本的に立ち乗りです。

ゴンドラリフト(難度2)

 ゴンドラリフトは小型のロープウェイで6〜8人乗りが標準です。スキー板は脱いでゴンドラ外部のホルダーに突き立てます。乗る要領は遊園地の観覧車と同じで、プラットホームを微速で進むゴンドラに歩きながらスキーを突き立て乗り込みます。ほとんどの場合ドアは自動で開閉します。体が露出しているベンチリフトよりも安全性を高めたゴンドラリフトは、かなりの高所や急勾配がある場所に設置され、乗り物としての趣があります。

ムービングベルト(難度50)

 おもにキッズゲレンデで見かけるムービングベルトですが、一般コースの連絡用に設置してある場合もあります。ここで起こる勘違いは、スキー板をはずして手に持ち、エスカレータに乗るように行儀良く前の人の後ろに並んで乗ることです。ムービングベルトが平地に設置されている場合はそれで良いでしょうが、緩いとはいえ斜面に設置されている場合、この姿勢をキープし続けるには並々ならぬ努力が必要です。足首の曲がらないスキーブーツで緩斜面を登るベルト上にとどまるのは難しく、プラスチック製のブーツのグリップがやがて失われるといきなりずり落ちる人が出ます。私のすぐ前の人がずりっと来たので、私はとっさに準備体操のアキレス腱を伸ばすポーズを取り、前の人のブーツの踵に自分のブーツを叩き込み、片手でその人の腰を抑え、もう片方の手で自分の板を持ち、そのままの体勢でしばらく我慢していました。その人は、すみません、すみませんと何とか体を立て直そうとしましたが、やがて力尽き、もうだめです、ありがとうございましたと言って落ちて行きました。
 他にも何人かの人が同じように脱落して行きました。
 生き残った人をベルトの降り口で向かえたリフト係は、これは板を履いたまま乗るんですよ。そうすれば落ちることはないのですよ。と、仏のような微笑を浮かべていました。

シングルリフト(難度20)

 今ではあまり見かけなくなった一人乗りのシンプルなリフト。背もたれがないため乗るのが難しく、体の露出が多いので空中での恐怖感が味わえます。ベンチと頭上のワイヤーを結ぶ一本の鉄パイプに、コアラのようにしがみつくのが基本ですが、無論上級者はそんな醜態は晒しません。手放しでベンチに深く腰掛け、リフトが支柱を乗り越える際に上下左右に揺れようが、眉ひとつ動かすことはありません。

ボーラーリフト(難度20)

 一見ただのワイヤーが回っているだけに見えますが立派なリフトです。動いているワイヤーを手でつかみ引っぱってもらいます。1スパンのため中央付近では重いワイヤーがたるみ、持っているのがつらいので出来れば大勢で乗りたいものです。

Jバーリフト(難度30)

 グラススキー場でよく見かけます。ワイヤーにJ型のプラスチックが取り付けられていて、このJを腰に引っ掛けて登ります。スキーは地面につけたままJバーに体をもたれかけて行くのがコツで、人によってはJバーをつかんで引っ張ってもらっていますが、場所によってワイヤーが地面から高く離れると握力がなくなってぶら下がりきれずに途中で脱落します。Jバーを腰に当てておけば、このような場合Jバーをお尻の下にずらし、深く荷重し、ワイヤーが高く上がらないように押さえつけることができます。

2人乗りTバーリフト(難度80)

 滅多に出会うことはありませんが、スキーヤーを恐怖のどん底に叩き込むリフトが2人乗りTバーです。ベンチのかわりに逆T型のただの棒がついていて、二人のスキーヤーはうまく棒の両端をそれぞれのおしりに当て、スキー板は雪面につけたまま登って行きます。二人の呼吸がシンクロしているのがポイントで、はじめて出会うこのリフトに戸惑うスキーヤーは少なからず斜面の途中で脱落します。脱落者が発生するとワイヤーにショックが走り連鎖脱落が起こります。脱落してもボヤボヤしていてはいけません。すぐに横へ避けないと後ろの組に踏まれてしまいます。ライン上の障害物を避けるのはもはや不可能に近く、玉突き事故に発展することもあります。

着脱式Tバーリフト(難度100)

 知る人ぞ知る伝説のリフト。結構急な斜面にただのワイヤーがグルグル回っていて、リフト乗り場脇には妙なロープが掛けてあります。30センチほどの棒のまんなかにロープがついたもので、その先端には奇妙なフックがついています。スキーヤーはこれを手にとり棒を股にはさみ、ロープ先端のフックを目の前のグルグル走るワイヤーに引っかけねばなりません。乗り場には図解がありますが、この仕組を理解するにはしばし時を要します。初体験のスキーヤーは悩み、なかなかスタートすることが出来ません。試行錯誤の末、股間にロープをはさんだまま、よちよちとワイヤーの前まで来て唸るワイヤーにおそるおそるフックを掛けます。
 次の瞬間スキーヤーはロケットスタートします。多くはこのGに耐えきれず脱落します。Tバーは常にテンションをかけておくのがポイントで、わずかでも気を緩める者を許しません。周りで誰か落ちた反動で連鎖脱落する場合もあります。Tバーに体を預け、落ち着いてスキーをまっすぐに滑らせます。リフト降り場では素早くフックをはずし傍らの回収棚に返します。
 強者のみが登ることを許される恐怖のリフト。この熾烈さを見切るのが1日券を買うポイントになります。

自動改札(難度1)

 リフトに乗るにはリフト券が必要で、スキー場によって改札で係員にリフト券を見せるところと、改札口のセンサーに電子チップを当てて遮断機が開く自動改札方式のところがあります。
 自動改札方式のスキー場でごくまれに、自動遮断機と手動遮断機を混ぜて使っているところがあり注意が必要です。手動遮断機は手や体でバーを押しまわさなければなりませんが、自動だと思って呆然と立ち尽くしている人もまれに見かけます。

 小銭を払ってゲーム感覚でレース気分を味わえるナスターレースなどをする場合、腕につけたリフト券を吹き飛ばさないよう注意が必要です。もし失くしてもリフトのおじさんに訳を話せば、1回はリフトに乗せてくれるので探しには戻れます。ただし小さな電子チップの場合探すのは大変で、失くした場合\1,000の保証料金も取られるのでこれは痛い。

 上級コースに懸かる速度の速いものには注意が必要です。腰掛け方が浅いと座った衝撃でベンチがノーズダイブしてしまい、スキーヤーはお尻が前かがみになったまま空中の人になります。座り直せなかったり耐えられないと思ったときはリフトが高所に行かないうちに自ら落ちたほうが賢明です。係員がいればリフトを止めてくれますが、中には持ち場を離れている人もいるのでくれぐれもちゃんと深く腰掛けましょう。
 リフトは通常は地上1〜3メートルくらいの高度を確保していますが、降雪後など積雪が多いと、場所によってスキー板が接雪する場合があり、これは大変危険です。少しでもエッジが引っかかればスキー板はたちまち後方に持っていかれ、こうなるとエッジをはずして足を元に戻すのは大変困難なうえ、かなりの痛みを伴います。落ちるに落ちられず、ストックでバインディングを開放しようにもうまく行かず、ストックを板に引っ掛け何とか雪面からはずすしかありません。
 普通は係員がリフト下の雪を掘るか、リフトを運休にするべきですが、まれにこうした状況があるので注意が必要です。

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