●ドライビング

 スノードライブは普段にもまして油断禁物です。4駆、4輪スタッドレス、ABSといえどもくれぐれも過信はしないよう心掛けましょう。

 スキー場は当然のことながらその多くが雪国、しかも山にあります。スキー場や地元で除雪しているとは言え、ゲレンデには2〜4メートルもの雪が積もっているのですから、その付近一帯の天気が雪だったとしてもなんら驚くことではありません。わざわざそういう所へ行くのですから、それなりの準備が必要なのは至極当然の事と言えます。スタッドレスタイヤかチェーンは必ず用意しておき、チェーンの場合は事前に着脱のシミュレーションをしておきましょう。

 私のクルマは4WD、ABS、4輪スタッドレスですが、状況に応じて更にグリップを高めるため、イエティスノーネットを携行しています。これは走行振動も少なく制動力も格段に高くなります。下りの鏡面アイスバーンに出会ってしまった時、スパイクピンが威力を発揮します。ここまで使う状況になることは2年に1回ほどですが、その日の安全確保のため、装備は強力であるに越したことはありません。

 高速道路では融雪剤を撒いているため、前方や横を走るクルマがあげるこれらの飛沫を浴びるとフロントガラスが白濁し、西陽の逆光でも浴びようものなら、フロントガラスは磨りガラスの様になってしまい、もはや何も見えなくなってしまいます。出かける前にウインドウォッシャー液の残量を確認し、噴射ノズルのワックス詰まりを取り除いておきます。冬は凍結防止のため原液のまま使用します。

 雪国の高速道路は少しくらいの雪では通行止めにはなりません。雪のためセンターラインは消え、やがて路肩の雪が本線を圧迫し、2車線が1.5車線になります。スタッドレスタイヤでチェーン規制を通過しても、状況にびびって本線の路肩にクルマを止めてチェーンを捲き出すヤツもいて、それを避けようとしてスピンするヤツもいます。地熱のない橋の上は突然凍っているので、カーブから橋というシチュエーションは、トンネルの出口がカーブという状況と同様かなり危険です。

 高速を降りてからは更に過酷さが増し、路面には氷のワダチが3本でき、中央のワダチは対向車と共用の強制自動運転モードとなります。除雪車によって橋の欄干に寄せられた雪が氷の壁となり、路面の雪を溶かすはずのスプリンクラーが橋をまるごとスプラッシュマウンテンに変えます。激しく降る雪はワイパーでフロントガラスの端に寄せられ、フロントガラスヒーターによって溶けて氷となり、徐々に端に厚みを増して蓄積します。やがてワイパーエリアまで侵食し、ワイパーがガラス面から徐々に浮き上がり、もうほとんど役にたたなくなってしまいます。
 このような状況でも、学校の通学路となっているので、子供の通学時間帯など特に泥はねをしないよう心がけましょう。

 雪の降りしきる中を走る時は、他の人から自分を認識してもらうために、ヘッドライトの点灯は必須です。
 降りがひどくなると、路面と路肩の雪の壁との境界が判らなくなり、前のクルマの動きのみが頼りになります。更に風が吹けば、路肩に積もった雪が地吹雪となり、視界はホワイトアウトします。こうなるともはやお手上げ、地吹雪がおさまるまでハザードライトを焚いて止まるしかありません。

4WDの検証

 雪道での4輪駆動はかなり頼りになります。4輪にトラクションがかかれば姿勢制御力が高まり、動的性能は格段に上がります。トラクションだけならノーマルタイヤのままでも雪の坂を登ってしまいます。注意しなければならないのが対向車とすれ違う際、路肩にたまった雪に左の前輪と後輪の両方をスタックさせてしまうと、ノンスリップデフでない限り4駆と言えども出られないということです。こうなるとチェーンを着けるか雪を掘るしかありません。
 ブレーキ力はトラクションと関係なく、タイヤの性能で決まります。強力なトラクションをタイヤのグリップ力と勘違いして飛ばしすぎると、慣性力が大きく働く重い4駆は、止まらないので気を付けましょう。

ABSの検証

 ABSは思っているより止まりません。基本的にタイヤのグリップを確保してハンドリングの維持をねらっているので、それによって障害物を避けねばならず、避けるスペースが無ければ突っ込むしかありません。もし機会があったら雪上で思いっきりブレーキを踏みつけて、止まる感覚、どの程度ハンドリングが有効なのかを体験しておいたほうが良いでしょう。いずれにしても、クルマの性能と自分の技術を過信せず押さえて走ることが大切です。大丈夫と思っても予期せぬ事態にはもはや対応できません。後ろから煽られたら迷わず道を譲りましょう。

 ABS非装着の場合、タイヤが滑ったらとにかくブレーキから足を離せばグリップが戻ります。ぶつかりそうな緊急の状況でブレーキから足を離すには慣れと勇気が必要ですが、グリップが無ければ何もできないので、足を離してグリップが戻ったらまたブレーキを踏み、また滑ったら離す。これを繰り返します。普段からロックする寸前の一番制動のかかる「限界ブレーキング」の練習をしておくと良いでしょう。

登坂車線

 峠の上りには登坂車線がある場所が多いですが、雪が降りしきる中で装備の悪い、又は雪道に不慣れな遅いクルマが、雪がたくさん積もった登坂車線を走ることはまずありません。装備が悪い、又は雪道に不慣れな故、積雪の少ない走行車線を遅く走るのですが、追い越すのは危険です。追い越すためにスピードを上げると雪道では簡単に制御不能の領域に入ってしまいます。4駆の強力なトラクションにモノを言わせ、山道の短い直線で追い越しても、車重の重い、つまり慣性モーメントを強く受ける4駆車の速度を、次のコーナーまでに制御可能な領域に戻すのは非常に困難です。

下りのアイスバーン

 アイスバーンの下り坂はもっとも危険なシチュエーションです。くだった先が交差点で赤信号だった場合、玉突き事故に発展する場合もあります。
 このような状況ではスタッドレスタイヤもあてにならないと認識しましょう。とにかくオートマチック車でもギヤは一速に入れてエンジンブレーキを最大限に使い、車間距離を充分にとり、発進と停止を繰り返さなくても良いようにゆっくり走ることが基本です。スパイクピンの着いたイエティネットなら非常に効果を発揮しますが、ハンドリングやブレーキングが雑だと(前輪装着の場合)テールが流されるので、過信は禁物です。
 バンクの効いたコーナーの場合、遠心力のかからないスピードでタイヤが滑ると、低く傾いた内側のガードレールに蟻地獄のように引き寄せられます。一度接触してしまうと脱出するのに更なるダメージをクルマに与えてしまうので、最初からあまり内側を走らないようにしましょう。滑り出したら落ち着いて、ブレーキから足を離せばグリップが戻ります。

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