テラリウム

最近流行のテラリウムだが、その魅力は成虫の生態観察を楽しめると同時に、水槽内を美しくレイアウトし部屋の一部に自然を演出することで、自分自身も癒されるところにあると思う。 飼育と言うと繁殖に偏りがちだが、大切に育ててやっと羽化した成虫はできることなら自然に近い環境でのびのびと活動してもらい、その姿をゆっくり鑑賞したいものである。
そこで、鑑賞性を最優先すると共に、衛生、管理面にも焦点をおいてテラリウムを作成してみたのでここに紹介する。
実物は写真で見る以上に迫力があるので是非お勧めしたい。

  • テラリウムの作成
  • ポイント
  • 生態観察
  • 観察写真
◆ テラリウムの作成

今回のテラリウム作成に使用した器具、内装品は以下の通り。
できるだけ自然に近い状態にしたいところだが、衛生面、管理性、鑑賞性を優先するために自分なりに工夫してみた。 TOTAL費用は¥14,700と多少高価になってしまったが、それだけの価値は十分にあると思う。
また、クワガタテラリウムは比較的最近の発想だが、熱帯魚のアクアリウム、アクアテラリウムは以前から広く普及しているので、これらを参考にしながら色々工夫してみるのも良い。


使用材料説明
水槽 NISSOのオールガラス水槽 NS-6Mを使用。
(W600×D295×H360mm / 57L)
鑑賞用としては、透明度が高く、傷つきにくいガラス製が最適。
(¥2,760で購入)
フタ 専用のガラス蓋が市販されているが、あえて応用の利く透明アクリル板を購入し自作した。
通気用の穴開け加工をし、取り外し用に取手を付けた。
(アクリル板 3mm厚:¥1,950で購入、取手:1個 ¥105で購入)
ミズゴケ マットの代替品として園芸用のミズゴケを使用。
保水性に優れ、マットのように散らばらず、汚れる事も少ないので、水槽内を常に美しく保つのに最適。
乾燥圧縮タイプの物が多いが、一旦水を含ませて復元させ、セット前に水を良く切って使用する。 クワガタが潜り込めるよう、あまり固く詰めない方が良い。
(¥760で購入)
デコレーションバーク
(Mサイズ)
米松の樹皮を特殊加工した園芸用装飾バークをミズゴケの上に敷き詰める。 ミズゴケの乾燥防止、クワガタの転倒防止に効果があり、隠れ場所を多く設置するという意味でも適している。
色彩的にも美しく、雑虫の温床となることもないので衛生的。更に松の香りが爽やかで、水槽内の嫌な臭いを消してくれる。
(¥800で購入)
流木、止まり木 洞が複雑な流木は、水槽内を独創的にレイアウトするのに効果的。右側に配置しているのは、木の根を高圧洗浄した市販品。
山や川原で自分で拾って来るのも良いが、雑虫が付着している可能性もあるので、熱処理する事が望ましい。
(右側の流木:¥2,080で購入、中央のクヌギ破片:山で採取)
洞付き止まり木 オオクワガタ、ヒラタクワガタ等の潜洞性の習性を持つクワガタの棲家として適している。洞は貫通型の方が、クワガタを取り出しやすい。
市販されているが大型の物はかなり高価なので、手間はかかるが自作するという方法もある。
(¥2,250で購入)
コルクボード 立体感のある樹皮が魅力的で、厚さもあるので、そのまま配置しても良い。 大きさの割りには安価なので、より自然なイメージを作るための装飾品として最適。
(¥735で購入)
皿木 エサ場を固定するために使用。
朽木だとに齧られて崩れてしまうので、生木の物が良い。
(16g用1孔:¥160で購入、16g用2孔:¥200で購入)
人工植物 緑を入れることで、水槽内のイメージは一変するので、色彩的に美しくレイアウトする上で欠かせない。
人工植物であれば、枯れることもなく管理も楽なのでお勧め。
(¥1,365で購入)
コケ 止まり木や流木にコケを張り付けることで、よりリアルに自然を演出できる。
コケを流木等に自然定着させるには数ヶ月以上かかるので、市販の乾燥コケを接着材で固定するのが一番手軽で良い。
コケは乾燥していても死滅せず、粉砕しても再生するので、環境を整えれば接着後に自然定着する。
ハイゴケ、スナゴケ、ヒノキゴケ等が市販されている。
(ハイゴケ:¥525で購入)
バックパネル 水槽の背面に熱帯魚用のバックパネルを貼り付けた。背面が透けて見えるのを防止すると共に、森林がイメージされた絵であれば、奥行き感を増す効果がある。
600/900mm水槽用の物が市販されている。
(¥714で購入)
(照明) 今回は省略したが、照明を取り付けると雰囲気が増す。
但し、明るすぎるとクワガタがあまり活動しないので、小さなマグライトで一部分だけを照らす、または熱帯魚用の蛍光灯をフィルターで光量を下げる等の工夫が必要。 いずれにしても、水槽の周りを暗くしないとあまり効果はない。

◆ ポイント

なるべく自然に近い迫力を演出し、かつ管理性を良くするという、個人的な観点でのテラリウムのポイントを以下に記す。

  • エサ場を複数設置する
    基本的に多頭飼育となるため、争いが頻繁に起きないよう、エサ場は離れた場所に複数設置する。高低差をつけるとなお良い。
    また、逃げ場所を確保するため、隠れ場所はより多く設置するようにする。

  • 正面部分に開けた空間を設ける
    高い止まり木や大きな構造物は、なるべく背面に設置する。正面に大きい物を配置すると、水槽の大きさを有効に生かせず、迫力に欠けてしまう。

  • 高さを有効に活用する
    大型水槽の利点である高さを利用し、横に寝かせることの多い止まり木を縦に配置することで、立体感が増す。 クワガタが木を縦に登る姿は、より自然に近い状態と言える。

  • 朽木、産卵木は入れない
    常に水槽内を美しく保つために、朽木、産卵木は入れない方が良い。 大型種のに齧られた場合、木屑が散乱して汚れてしまうと同時に、カビやコバエ等の発生の原因にもなる。

  • 小型種を有効に活用する
    コクワガタ等の小型種を入れることで、水槽内の世界が大きく感じられる。また、オオクワガタ等の大型種をより大きく見せる効果があり、その存在感が際立つ。

  • 昼行性のクワガタを入れる
    基本的にクワガタは夜行性の種類が多く、明るい状態ではあまり姿を現してくれない。 比較的明るくても活動してくれる種類のクワガタも一緒に入れた方が、観察する楽しみが増える。

  • カブトムシは入れない
    毎晩のように飛翔しようとして激しく暴れまくり、闘争、交尾等、全ての行動が荒いので、水槽内を荒らされる可能性が大きい。 更に、はケース底を潜りながら移動し、止まり木等も全て倒していくので、レイアウトは全て無駄になる。
    ただ、クワガタと比較して警戒心が少ないので、その堂々とした迫力ある行動を観察したいのであれば、それはそれで魅力的ではある。
◆ 生態観察

レイアウトが完成すれば、後はゆっくり鑑賞を楽しむだけだが、以下にポイントをいくつか挙げる。

  • 明るさ
    基本的にクワガタは夜行性であるため、せっかくテラリウムを作成しても、周囲が明るい状態ではなかなか活発に活動してくれない。
    よって、水槽を暗い場所に設置するか、部屋を暗くする必要がある。 と言っても、完全に真っ暗にする必要はなく、弱い光や、距離が離れた遠くからの光源のみであれば、問題なく活動してくれる。 自然の山林での、月明かりに照らされた木々をイメージすると分かりやすい。
    または黒布等をかぶせて暗くしておき、たまに覗き見るのも良いかもしれない。

  • 闘争
    生態観察の一番の見どころは、やはり闘争シーンではないだろうか。夜間、周囲を暗くしておくと活発に活動し、エサ場付近では、かなり激しく闘争する。
    小さい飼育ケース内だと、逃げ場がなく傷ついてしまうことが良くあるが、広い空間内に逃げ場所を多く確保しておけば、比較的安全である。
    但し、オオクワガタ、ヒラタクワガタ等、縄張り意識の強い種類については、棲家となる洞や大きな隙間を飼育数より多く確保する必要がある。 いくら大きい水槽でも、基本的に1個体の行動範囲内に入ってしまうが、棲家となる洞、エサ場、見晴らしのいい場所が近くにまとまってあれば、その場所に落ち着くことも多い。 それでも限度はあるので、各個体の行動範囲を良く観察しておき、過密にならないよう注意する必要がある。
    複数の種類を同時に飼育する場合、コクワガタ等の小型種を大型種と一緒にすると危険な気がするが、実際は威嚇されただけで逃げてしまうので、逆に体格差が明確な方が安全。 それと比較し、ノコギリクワガタやミヤマクワガタはとりあえず相手に攻撃を仕掛けるので、オオクワガタ、ヒラタクワガタ等の大型個体が相手だと一撃で粉砕されてしまう(死亡する)可能性があるので、要注意。

  • 飛翔
    アカアシクワガタのような飛翔性の高い小型種は、運が良ければ飛翔シーンを観察することもできる。
    カブトムシであれば頻繁に見られるが、飼育下でのクワガタの飛翔は、小さい飼育ケースではあまりお目にかかれない。

  • 交尾
    エサ場付近では交尾する姿も良く見られる。小型種の方が交尾を観察できる機会が多いが、オオクワガタ等の大型種も周囲が静かであれば、観察できることがある。
    ノコギリクワガタやミヤマクワガタは、エサ場付近に終始♂♀ペアでいることが多い。

  • 産卵
    産卵させるために、水槽内が多少汚れても構わないのであれば、大き目の産卵木を立てて配置することをお勧めする。 コクワガタ等であれば、産卵木の上部の露出した部分に産卵管を差して産卵し、木屑を埋め戻す様子等、貴重な光景を観察できることもある。 また、この場合はミズゴケだと木屑と混ざってしまうので、マットを敷いた方が良い。
◆ 観察写真

テラリウム写真-1
オオクワガタ
潜洞性の強いオオクワガタは、自分の体格にフィットした隙間や洞を棲家とし、そこを中心に活動する。
写真は洞から外の様子をうかがう姿。わずかな物音や人影でも、危険を察知してすぐに隠れてしまう。
テラリウム写真-2
コクワガタとオオクワガタ
周囲が暗く、静かであれば、警戒心の強いオオクワガタでも夢中になって食事をする。
写真はコクワガタと仲良くエサを食べているが、時にはアゴを広げて突進し、他のクワガタを追い払う。

テラリウム写真-3
ヒラタクワガタ
明るい状態ではほとんど姿を見せないが、暗くしてしばらくすると、ゆっくりと姿を現す。周りのコクワガタを追い払い、エサ場を独占する圧倒的な体格は迫力がある。
テラリウム写真-4
ノコギリクワガタの闘争
自然界ではありえないトカラノコとオキナワノコの闘争。写真はトカラノコが相手を投げ飛ばす瞬間。
基本的に本土種のみで統一しているが、色彩の変化が欲しかったので離島亜種も少し入れてみた。

テラリウム写真-5
アカアシクワガタの飛翔
アカアシクワガタは若干明るくても活動し、飛翔性も高い。写真は飛び立つ瞬間。
テラリウム写真-6
コクワガタのペア
エサ場で求愛行動をとるコクワガタ。警戒心は強い方だが、若干明るくても歩き回ることが良くある。

テラリウム写真-7
ミヤマクワガタ21
ミヤマクワガタはエサ場にペアでいることが多い。
明るくても活発に活動し、闘争や交尾等の行動を観察することができる。
テラリウム写真-8
交尾するアカアシクワガタ/アマミノコギリクワガタ
アカアシクワガタは交尾意欲が強く、交尾シーンは頻繁に見られる。
縦に配置した細めの枝にとまるクワガタは、より自然に近い姿に見える。


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